61話:何かいつの間にか僕にも愛称が出来てた話
僕はその若い冒険者の方に顔を向けていくと、その冒険者は緊張気味になりながらこんな事を尋ねてきた。
「あ、あの! も、もしかして、ユウチャンネルさんですか?」
「は、はい、そうですけど……?」
「あぁ、やっぱりそうなんですね! 実は俺、ユウチャンネルさんを見させて貰ってます! チャンネル登録もさせて貰っています!」
「え、ほ、本当ですか!?」
どうやら目の前の若い冒険者は僕のチャンネルを見てくれてる視聴者さんのようだった。
「はい、もちろん本当です! だから本物のユウチャンネルさんを見れて感動です! あ、カケルさん達の切り抜き動画とかも見ましたよ! ユウチャンネルさんは本当に凄く強いですよね!」
「あ、カケルさん達の切り抜き動画も見て下さったんですね! それは凄く嬉しいです!」
「はい! それに武器の手入れとか魔法の練習方法とかいつも色々と役立つ動画を投稿してくれて本当にありがとうございます! これからも頑張ってユウチャンネルさんのような冒険者になれるように頑張ります! あ、そうだ! 良かったら握手とかして貰っても良いですか?」
「え、あ、はいっ! そんなのもちろん良いですよ!」
「ありがとうございます! それじゃあ……!」
―― ぎゅっ!
そう言って僕は視聴者さんと握手を交わしていった。握手を交わしていくと視聴者さんはとても嬉しそうな顔をしていってくれた。
その視聴者さんの表情からして本当に僕のファンなんだなというのがしっかりと伝わってきて、僕も何だか嬉しい気持ちになっていった。
「いやー、今日はユウチャンネルさんに会えて良かったです! これからもユウチャンネルさんの動画投稿を凄く応援してるんで、これからも頑張ってください! それじゃあ失礼します!」
「はい、ありがとうございました! これからも頑張ります! それじゃあ失礼します!」
そう言って僕は視聴者の冒険者さんと別れていった。そしてそんなやりとりを見てた浅香はふふっと微笑みながらこう言ってきた。
「ふふ、お兄ちゃんもいつの間にか有名人になってきたんだねー。どんどんと凄い人になっていくなー」
「えっ? いやいや、全然凄い人になんてなってないよ。でもこうやって僕の動画を参考にしてくれる冒険者さんが増えていってるのがわかると何だか嬉しくなるよね」
「うんうん、そうだよね。ふふ、それじゃあこれからも頑張っていかなきゃだね、ユウ君せんせー!」
「え? ユウ君せんせー? な、何それ?」
「何か最近はお兄ちゃんの事を“ユウ君せんせー”って呼ぶのが流行ってるっぽいよ。ほら、SNSでも【#ユウ君せんせー】でファンアートが投稿されてたりするしね」
「え? ほ、本当に? あ、本当だ……!」
そう言って浅香が僕に手渡してきたスマホのSNS画面には、僕のファンアートが【#ユウ君せんせー】とタグ付けされて何件か表示されていた。
「うわぁ……僕のファンアートを投稿してくれてる人がいるなんてすっごく嬉しいな! でも何で先生って呼ばれてるの? 僕まだ16歳の高校生なんだけど?」
「何かお兄ちゃんの動画スタイルが学びを教えてくれるタイプの動画だからって事で、尊敬の念を込めて“ユウ君せんせー”って呼んでいるらしいよ。ふふ、確かにお兄ちゃんって先生っぽいからすっごく似合ってる愛称だよねー」
「な、なるほど。なんだかちょっとこそばゆい感じもするけど……うん、でも皆が好意的な意味でそう呼んでくれてるのなら僕も嬉しいよ」
「うんうん、本当に似合ってる愛称だと思うからこれからもどんどんと流行っていくと良いね。あ、それじゃあ私もお兄ちゃんの事をこれからは“ユウ君せんせー”って呼ぼうか?」
「い、いや、流石に浅香にもそう呼ばれるのは恥ずかしいから遠慮しておくよ……」
流石に妹の浅香にも先生って呼ばれるのは普通に恥ずかしいので、それだけは全力で遠慮させて貰う事にした。
それにしても何だか急に視聴者さん達から先生と呼ばれている事を知ってちょっとビックリとしちゃったんだけど、でも僕の知識とかが色々な人に役立っているのなら本当に良かったなぁ。
という事で僕は視聴者さんと出会えた事や新しい愛称が貰えてた事を知って喜びを感じながら、その後は浅香と一緒に楽しく池袋のダンジョンの中を見て回って行った。
◇◇◇◇
それから数時間が経過した。
池袋ダンジョンの探索を終えた僕達は、今度はルリさんの弟さんが待つ病院へと足を運んでいった。
「えぇっと……あぁ、この病院だよ! それでこの病院の入口前でルリさんと待ち合わせをしてるんだけど……」
「あぁ、そうなんだね。それじゃあ近くにルリさんがいるのかな……? えぇっと……」
僕達は待ち合わせ場所の病院の入口付近に到着したので、それからすぐに辺りをキョロキョロと見渡してルリさんがいないか探していった。すると……。
「……あっ! ユウ君! こっちこっちー!」
「え? あ、ルリさん! お久しぶりです!」
「え……って、わっ! ほ、本物の如月ルリちゃんだ! わわっ! すっごい小顔だ!! それに腰もすっごく細い!!」
するとキョロキョロと辺りを見渡している僕達の事を見つけてくれたルリさんが声をかけてきてくれた。なので僕はすぐにルリさんに挨拶をしていった。
だけど浅香はルリさんと初めて会ったという事もあって、浅香は挨拶するのを忘れて目を凄くキラキラと輝かせながらルリさんの事をじっと見つめていっていた。
(あはは、まぁ僕もルリさんと初めてルリさんと会った時はかなり興奮としたからその気持ちはわかるけどね)
という事で僕と浅香は無事にルリさんと病院前で合流する事が出来たのであった。
いつも読みに来て頂き誠にありがとうございます。
今まで二ヵ月間毎日投稿をしていましたが、これからは諸事情により二日に一回の更新に変更させて頂きます。
更新頻度が遅くなってしまい大変申し訳ありませんが、これからも楽しく読んで頂けると幸いです。




