60話:浅香と一緒に東京のダンジョンに行ってみる
数日後の土曜日。
今日は一ヶ月ぶりにルリさんのコーチングをするために東京に行く日だ。という事で僕と浅香はいつもの新幹線に乗って東京駅へとやって来た。
「やった、久々の東京だー!」
「うん、そうだね。久々の東京だよね!」
「いやいや、お兄ちゃんは結構何度も東京に来てるでしょ! お兄ちゃんばっかり東京に行ってて本当に羨ましい限りだよー!」
「あはは、それはゴメンって。でもこれからは浅香にも東京に付いてきて貰うから、これからお手伝いよろしくね」
「うん、もちろんだよ!」
僕達はそう言ってお互いに笑い合っていった。これから東京で動画撮影とか配信をする時は浅香にも手伝って貰える事になったので、これからは浅香と一緒に動画作りとか頑張っていくぞ!
「あ、そうだ。それで? ルリさんとは何時くらいに会う予定なの?」
「あぁ、えっとね、ルリさんとはお昼二時過ぎに指定された病院前で会う予定だよ。弟さんの面会時間に合わせてそれくらいでお願いしたいって言われたんだ」
前に約束した通り今日はルリさんの弟さんのお見舞いに行かせて貰う事になっている。もちろん浅香にもその事は伝えているので、今日は浅香も一緒に病院に付いて来てくれる事となっている。
ちなみに今日の弟さんへのお土産はいつも通り浅香に選んで貰ったものだ。浅香のチョイスなら間違いないと思うけど、ルリさんの弟さんに喜んで貰えたら嬉しいな。
「そっかそっか。うん、了解! でもそれだとルリさんと会うまで時間はたっぷりと残ってるよね? まだ今は早朝だし待ち合わせ時間までだいぶ余裕あるよね?」
「うん、そうだね。だからもし浅香が何処か東京で行きたい所とかあるようなら一緒に付いて行くよ」
「えっ、本当に? それじゃあさ、良かったら今から“新宿”か“池袋”のダンジョンをチョロっと探索してみない?」
「え? 新宿か池袋のダンジョン? それって東京の二大人気のダンジョンでしょ? というか浅香がダンジョンに行きたいなんて言うなんて珍しいね?」
「うん。やっぱり東京ダンジョンと言えば新宿か池袋のダンジョンがメジャーでしょ? だから聖地巡礼って訳じゃないけど、冒険者としてはちょっと探索に行ってみても面白いんじゃないかなってさ」
「なるほど。確かに聖地巡礼をしてみるのは面白いかもしれないね。冒険者としてはどっちのダンジョンも凄く有名で気になるしね」
以前に言ったように東京にはダンジョンが合計で30箇所程が観測されている。そしてその30箇所の東京ダンジョンの中でもとてつもない人気を誇るのが新宿にある“ニューオリンズ”と池袋にある“サンライズスポット”だ。
新宿駅も池袋駅も交通の便が良いので非常に訪れやすいダンジョンであり、ダンジョンの難易度もちょうど真ん中くらいでドロップアイテムとかもそこそこ美味しいため、初心者~上級者まで幅広い層に人気なダンジョンだ。
ちなみに東京在住のダンジョンライバーのほとんどはどちらかのダンジョンで配信をしている事が多い。ルリさんも時々ニューオリンズでダンジョン配信をしていた気がする。
「でしょ? それにお兄ちゃんがこれから東京で冒険者の動画とか配信をするんだとしたら、新宿か池袋が一番利用する事になる可能性のあるダンジョンになるでしょ? だから今のうちにどんなダンジョンなのか様子を見に行ってみるのも経験として良いんじゃないかなって思ってね」
「なるほど、確かにそう言われてみればそうだね。よし、それじゃあせっかくだし……今日はこのまま池袋にあるサンライズスポットに行ってみようか!」
「うん、わかった!」
という事で僕は浅香のダンジョンに行ってみるという提案を採用し、それから僕達はすぐに池袋にあるサンライズスポットに行ってみる事にした。
◇◇◇◇
それから程なくして。僕達は目的地のサンライズスポットの入口に到着した。
―― ワイワイ……ガヤガヤ……
「おー、ここがサンライズスポットかー!」
「わわっ、まだ入口なのに凄い賑やかだね! 僕達の地元のダンジョンと比べるとだいぶ人気が凄いね!」
早朝にもかかわらずダンジョンの入口付近では既に人がそれなりに賑わっていた。やっぱり大人気ダンジョンなのは伊達じゃないようだ。
「うん、本当にそうだね! というかここにいるだけの人達だけで私達の地元の冒険者の総数を軽く越えてそうだねー!」
「あはは、確かにそう言われてみればそうかもね! いやー、やっぱり東京って凄い街なんだなぁ……!」
という事で僕達はサンライズスポットの中に入って行く沢山の冒険者を見送りながらそんな感想を言い合っていった。
それに僕達が住んでる田舎だとこんなにも沢山の冒険者なんて絶対にいないから、何だかこんなにも沢山の冒険者で活気づいているのはちょっと羨ましいなぁ……。
「それにしても池袋のダンジョンがこんなにも活気づいてるのなら、きっと新宿のダンジョンの方も凄い人気がありそうだよね。いつかそっちも行ってみたいなー!」
「うんうん、確かにそうだよね! それじゃあ今度東京に来るときは新宿のダンジョンにも行ってみようよ!」
「あ……す、すいません! あ、あのっ……!」
「うん、そうだね! 次は是非とも新宿の方に……って、え?」
テンションを上げていきながらそんなダンジョンについての話を浅香としていると、ふいに僕の事を呼び止める声が後ろから聞こえてきた。
なので僕は何だろうと思いながらも後ろの方に振り返っていくと……そこには僕達と同年代くらいの若い冒険者が立っていた。




