57話:ルリさんから弟さんの話を聞いていく
僕が久々に動画投稿をしてから二週間ほどが経過した頃。
今日は二週間に一度のネット通話にてルリさんのコーチングをする日だ。という事で僕は早速ルリさんとのネット通話を始めていった。
「あ、ルリさん、お久しぶりです!」
『うん、久しぶりだね、ユウ君! 今日も一日よろしくね!』
「はい、もちろんです!」
ネット通話を繋げていくとルリさんの天真爛漫な姿が映し出されていった。今日もとても可愛らしい姿だなぁ。
『? どうしたのユウ君? 急に無言になっちゃったけど何かあった?』
「……え? あ、い、いえ! 何でもありませんよ!」
ルリさんの可愛い姿をジロジロと眺めていたら、ルリさんはキョトンとしながら僕にそんな事を尋ねてきた。
なので僕は慌てて何でもないと言って誤魔化していった。ま、まずいな、何か話を変えていかなきゃだ……!
「え、えっと……って、あ、そうだ。そういえば先日ネットニュースで知ったんですけど、スザクさんはライバー事務所のアークナイトを辞めたらしいですね」
『あ、うん、そうらしいね。スザクさんはファーストライブに正式に謝罪をして、それで責任を取って事務所も辞めたらしいね。これからはフリーのライバーとして活動していくみたいだよ』
「なるほど。という事は今回の荒らし事件はこれで無事に解決したって事で良いんですよね? それじゃあ改めて本当にお疲れさまでした、ルリさん!」
『うん、ありがとう、ユウ君! まぁでも今回の件は全部社長に任せっきりだったから、正直私はほぼ何もしてないんだけどね』
「え、そうだったんですか?」
ルリさんは笑いながらそう言ってきた。ルリさんは当事者として向こうの事務所と色々な協議に参加してたのかなと思ったんだけど、でも実際にはそんな事もなかったようだ。
『うん、社長曰く今回の件は“未成年の女子高生が関わったら教育上よくない案件”だからって事で、向こうの事務所とかのやり取は全部社長がしてくれたんだ。だからどういう経緯でスザクさんが私のチャンネルを荒らしたのか全然知らなかったんだけど……まぁその後にゴシップ雑誌を読んでどういう理由だったのかは全部知ったよ。流石に物凄く温厚な私でもドン引きしちゃうような内容だったよ……』
笑顔だったルリさんは一転してため息交じりにそんな事を言ってきた。こんな優しい性格のルリさんがドン引きしてしまう内容だなんて……一体どんな内容だったんだろう?
「へ、へぇ、ゴシップ雑誌に今回の事件の経緯について書かれてるんですか? えっと、実は僕もファーストライブの社長さんには今回の事件は君は関わらない方が良いって言われたから全然情報知らないんですけど……ゴシップ雑誌を読んだら全部わかるんですかね?」
『えっ……って、あ!? ダメダメ! ユウ君は絶対に今回の事件は調べちゃ駄目だよ! ユウ君みたいな男の子はゴシップ雑誌を読んじゃ駄目だからね!』
「え? ぼ、僕は読んだら駄目なんですか?」
『うん! 実はゴシップ雑誌って未成年が読んじゃ駄目なんだよ! だからユウ君がゴシップ雑誌なんて読んだらそれはもう犯罪だよ! そんな事したらユウ君が警察に捕まっちゃうから絶対に駄目!』
「え? そ、そんな法律ありましたっけ? というかそれならルリさんもゴシップ雑誌を読んだら捕まっちゃうんじゃ……?」
『いやいや、私はほら、18歳だから! 高校三年生だけどちゃんと選挙権も持ってる立派な大人だからね! でもユウ君はまだ16歳の高校一年生でしょ? だからユウ君はまだまだ子供なんだからそういう大人の雑誌を読んじゃ駄目だよ!』
「な、なるほど? ま、まぁそういう事なら……わかりました。それじゃあゴシップ雑誌は大人になるまで読まないようにしておきますね」
ゴシップ雑誌を読んでみようかなと思ったんだけどルリさんが慌てた表情でそれを全力で制止してきたので、僕はそれを受け入れていく事にした。
まぁ事件が解決したのならそれ以上詳しい事を調べる必要もないしね。
『うん、わかってくれればそれで良し! それじゃあ別の話をしようよ! 何か明るい話題とか……あ、そうだ! そういえばユウ君が前に投稿した動画を弟と一緒に見たよー!』
「あ、本当ですか? 弟さん、僕の作った新作動画を見て楽しんで貰えましたかね?」
『うん、もうすっごく楽しんで見てたよ! それで弟は元気一杯になって“僕も手入れの勉強をしてみたい!”って言ってきたんだよ! だからもう急いで私は冒険者ギルドに行って手入れセットを借りてきて、それを弟に渡してあげたんだ。という事で弟は今、病室で毎日のように武器の手入れの勉強をしてる所なんだよー!』
「へぇ、そうなんですね! はは、弟さんが元気になるきっかけを与える事が出来たようで良かったです!」
ちょっと前まで弟さんはルリさんが虐められてると思って落ち込んでいたという話を聞いたので、そんな弟さんが僕の動画を見て元気になってくれたようで僕としては凄くホッとした。
『うん、今はもう毎日すっごく元気に武器の手入れを頑張って練習してるよ! それでいつか武器の手入れの仕方を完璧にマスターしたら、お姉ちゃんの武器の手入れをしてあげるって言ってくれたんだ! そう言ってくれたのがもう私すっごく嬉しくてさー!』
「あはは、それは凄く嬉しいですね。それじゃあ弟さんに武器の手入れをして貰える日が来るのを祈っていますね!」
『うん、そう言ってくれて嬉しいよ! ふふ、だから改めてありがとね、ユウ君! あんなにも素晴らしい動画を投稿してくれてさ! 本当にありがとう!』
「いえいえ、それだけ喜んで貰えたなら僕も投稿した甲斐がありました。あ、それじゃあ最後まで動画を見てくれて本当にありがとうございましたって弟さんに伝えておいてくださいね」
『うん、わかった! あ、そういえばユウ君ってさ、来週に久々に東京に来てくれる予定になってるよね? えっと、その日は前にも言ったようにさ……私の弟にも会って貰えるかな?』
「はい、もちろんそのつもりですよ! あ、その東京に行く件について僕もルリさんに相談が一つあるんですけど……」
『え? 私に相談? 一体何かな?』
「はい、今度東京に行く時に僕の妹を連れてこようと思ってるんですけど……良かったら僕の妹もルリさんと会う時に一緒に付いてきても大丈夫ですかね?」
『えっ!? ユウ君の妹ちゃん!? うんうん! そんなのもちろん大丈夫だよ! というか私だってユウ君の妹ちゃんに会ってみたいしね!』
「あぁ、良かったです! そう言って貰えると助かります! それじゃあ次回東京に行く時は妹も連れて行くんで当日はよろしくお願いします!」
『うん、こちらこそ!』
という事で次回に東京に訪れる時には妹の浅香も付いて来る事を了承して貰えた。これはあとで浅香が帰ってきたらしっかりと報告しなきゃだな!




