53話:今回の荒らし事件について話を聞いていく
それから少し時間が経って。
「今日は長時間探索をしていると思いますし、ちょっと休憩にしましょうか?」
『そうだね、それじゃあちょっと休憩しよっか! ふぅ、今日も頑張ったなー!』
そう言ってルリさんは地面に座りながら休憩を始めていった。そしてその休憩中に僕はあの事件についての話を聞いてく事にした。
「あ、そうだ。休憩中にすいません。そういえば社長さんから聞いたんですけど、ルリさんの荒らしてた犯人が見つかったらしいですね……」
『あぁ、うん。ユウ君も社長から聞いたんだね。ごめんね、当事者だったのにユウ君を途中で今回の件から外しちゃってさ』
「いえいえ、全然構いませんよ。社長さんは僕を守るために今回の荒らし事件から外してくださったのは知ってますし。でもルリさんは大丈夫なんですか? 今回の荒らし事件の炎上が未だに納まってないんですけど……ルリさんへの被害みたいなのは大丈夫なんですかね? もうあのニュースが世の中に流れてから一週間くらいは経ってるのに炎上が全然鎮火してないですよね……」
僕は炎上とかネガティブな内容のニュースを見ると心が痛くなるので、普段からSNSはあまり開かないようにしている。朝の登校時間にチラっとSNSを見るくらいだ。
そんなSNSを全然やらない僕でも今回の事件についてはネットに書きこんでる人を未だにチラホラと見かけるので、今回の事件はかなり大きな炎上になってしまっているという事なんだろう。そんな事件の当事者に立ってしまっているルリさんは大丈夫なんだろうか……。
『あー……うん、そうだね。スザクさんのスキャンダルが大きすぎて炎上が止まる気配はまだまだないね。あと私に関してはスザクさんを推してた人達からのバッシングを受けてる最中だね』
「え……えっ!? そ、そうなんですか!?」
『うん、そうなんだ。まぁスザクさんもチャンネル登録者数80万人越えの大手配信者だからね。だから今回の事件を受けてから向こうの熱心なファンから“お前が冒険者としてたるんでるのが悪い”“これでスザクが冒険者や配信者を引退する事になったらお前のせいだ”“お前は配信者としても冒険者としても失格だ!”みたいな長文のお気持ちコメントが沢山送られてくるようになったね……』
「え……な、なんですか、それ……そ、そんなの……絶対に間違ってますよ……」
それを聞いて僕はビックリしてしまった。どうやらルリさんのチャンネルは今回の炎上の余波を受けてしまっているようだ。
『うん、まぁもちろん私に対しては同情の声の方が圧倒的に大きいし、今もファーストライブと向こうの事務所がしっかりと協議をしてこの事件を鎮静化させようと頑張ってくれてるから私は全然気にしてないんだけど、でもね……』
「でも……?」
『でもね、弟がね……“お姉ちゃんが沢山の人から虐められてる”って悲しそうにしながらそう呟いてきたんだ。弟はいつも私のチャンネルは楽しみに見てくれてるんだけど、ここまで長文のお気持ちコメントが大量に投稿されるなんて初めての事だからさ……弟はその大量のお気持ちコメントを見てショックを受けちゃったんだ。私は誹謗中傷とか全然気にしないんだけど、でも弟が悲しそうにしてるのを見ちゃうとどうしても辛くてね……』
「な、なるほど……」
今の話を聞いた限りだとスザクさんの熱心なファン達はかなり過激な長文コメントをルリさんに送りつけているようだ。今までの“つまんねぇ”とか“4ね”みたいな短文の誹謗コメントとは全然毛色が異なっているようだ……。
そしてそんなお姉さんを非難する過激な長文コメントが大量に投稿されだしたら、弟としてはかなりショックを受けるのは当たり前だよね。しかも未だにそんなお気持ちコメントが大量に届いているんだから相当辛いと思う。
そしてきっと弟さんはお姉さん思いの心優しい男の子なんだろう。そんな心優しい弟さんが今回の事件で傷ついているなんて……流石に可哀そうだよね。
(うーん、そんなショックを受けている弟さんのために僕は何かしてあげられる事はないかな……)
僕としても僕のチャンネルのファンだと言ってくれてる弟さんのためにも、傷ついた心を癒す手助けをしてあげたいと思った。
だから僕は弟さんのために何か出来る事は無いかと考え始めていった。そしてそれから程なくして……。
「……よしっ! それじゃあルリさん、弟さんにちょっと伝言をお願いできますか?」
『え? う、うん、いいよ?』
「はい、それじゃあ近い内に僕のチャンネルで動画投稿を再開しようと思います! きっと冒険者になりたい弟さんのためになるような動画になると思うので是非とも楽しみにしていてくださいって伝えといて貰えますか?」
『えっ? ユウ君……ついに動画投稿を復活するの?』
「はい! 今までずっと何の動画を作ろうか悩んでたんですけど、今ようやく新しい題材を思いついたので、それについての動画を出します! 弟さんにも楽しんで貰える動画だと思いますので期待しておいてくれたら嬉しいです!」
『そうなんだね! うん、わかったよ! それじゃあ今日帰ったら病院に行く予定だから弟に伝えとくね!』
「はい、よろしくお願いします!」
という事で僕はルリさんにそんなお願いをしていった。
よし、それじゃあ久々に動画作りを頑張っていくぞ。ルリさんの弟さんに元気になって貰うためにも!




