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43話:一旦保留という事にしてもらう

「それでどうでしょうか? もし良かったらファーストライブに入って頂けると社長の私としても非常に嬉しいのですが」

「え、えっと、そうですね……こんな事を社長さんに言うのは凄く図々しいと思うんですけど、一旦考える時間を頂けませんか? 僕はダンジョンライバーの前に一人の男子高校生です。なので一度家族や学校の先生にしっかりと相談させて欲しいですので……ですから少しだけ考える時間を頂けませんか?」


 社長さんのスカウトに対して僕はかなり図々しいお願いをしていった。だけど社長さんは僕のその言葉を聞いてニッコリと笑みを浮かべながらこう言ってきてくれた。


「えぇ、もちろんです。私も学生の本分は学業だと思いますので、親御さんや教師の方としっかりと相談していってください。あ、ルリも次の期末試験の勉強はしっかりと頑張るんですよ?」

「う……そ、それはもちろんわかってますよー……」

「それなら良いです。ユウ君も今すぐにファーストライブに入るかどうかを決めて欲しいというわけではありませんので、沢山時間をかけて決めていってくださいね」

「は、はい、ありがとうございます! しっかりと家族や先生と相談した上で答えを出しますので、あと少しだけ待っててください!」

「はい、わかりました」


 という事でファーストライブに入るかどうかについては一旦保留にさせて貰う事になった。これは帰ったら早速家族や先生に相談をしていかなきゃだな!


「はい、それじゃあ私の話はこれで以上となります。あ、そうだ。そういえばユウ君は冒険者としてルリのコーチング役を引き受けてくださったそうですね? 確か明日の朝にルリと二人でダンジョンに行くという話はルリから聞いてますよ」

「え? あ、はい、そうです! 明日はルリさんのコーチングをさせて貰う事になっています!」


 そして社長さんはルリさんのコーチングの件についての話も軽く触れてきた。確かに僕達は明日一緒にダンジョンに行く約束を交わしていた。明日はルリさんと出会った東京ダンジョンのアストルフォに行く事になっていた。


「あ、でも凄く今更なんですけど……僕みたいな一般人がルリさんのコーチング役を引き受けるのってファーストライブさん的には大丈夫なんですかね? 何か契約書とか書いた方が良いとかってありますか?」

「いえ、何も問題はありませんし契約書なんて全く必要ありませんよ。というかむしろ今回はルリのコーチング役を快く引き受けて下さって本当にありがとうございます。S級冒険者のユウ君になら私としても安心してルリを任せる事が出来ます。そしてこれからルリの事は沢山シゴいてもらって構いませんので……ふふ、是非ともルリの事を立派な冒険者にしてあげて下さいね」

「は、はい、わかりました!」


 社長さんは笑みを浮かべながらそんなお願いをしてきたので、僕も力強くわかりましたと言って返事を返していった。


 こうして今日の社長さんとの面談はこれで終了していった。終始穏やかな感じで進んでいって本当に良かったな。


◇◇◇◇


 それから程なくして。


 僕はファーストライブの事務所が入っているビル前でルリさんと別れの挨拶をしている所だった。


「今日はファーストライブに来てくれてありがとう! ユウ君!」

「はい、こちらこそありがとうございました! 今日は社長さんと色々なお話が出来て良かったです!」

「ふふ、それなら良かったよ。それに私の言った通り社長は良い人だったでしょ? 見た目は結構冷たい感じなんだけど、でも中身は凄くアツくて人情味溢れる人なんだよねー」

「はい、本当にルリさんの言う通りの人でした。それにとても優しくて人格者な社長さんで凄く尊敬しちゃいました!」

「あはは、ユウ君がそう言ってくれるときっと社長も嬉しいと思うよ。社長って冷たそうな見た目をしてるせいでファーストライブ内でも社長の事を怖い人だと勘違いしてる子がそこそこいるんだよね。だからもしもユウ君がファーストライブに入ってくれる事になったらさ、その時は社長と沢山話してあげてね!」

「そ、そうなんですね。は、はい、わかりました! それじゃあその時は僕の方から社長さんにガンガン話しかけていく勢いで頑張ります!」

「うん、是非ともそうしていってね!」


 そんな感じで僕はルリさんと社長さんについての話で盛り上がっていった。まだファーストライブに入るかどうかは決めてないけど、もしもファーストライブに入る事になったら社長さんとこれからも楽しくお話が出来たら嬉しいな。


「あはは……って、あ、そうだ。そういえばルリさんも荒らしコメントの被害にあってたんですね。しかも僕とほぼ同時期に荒らされてたなんて……やっぱり同一人物なんですかね?」

「あぁうん。実はそうだったんだよ。社長曰く荒らしの手口が似てるって言ってたからその可能性は十分ありそうだよね。まぁでもこれから調査会社に依頼して本格的にしていくからそれで判明するでしょ。そしたらすぐに犯人は見つかると思うからユウ君は安心して良いと思うよ。犯人が見つかったらユウ君にも連絡するから待っててね!」

「はい、わかりました。それにしてもルリさんはここ最近は色々と災難が続いてますよね。自分のチャンネルが荒らされたり、ダンジョンでヤングワイバーンに襲われたりとか……」

「あはは、確かにそうだよねー。でもその分、私にも良い事はちゃんと起きてたからね! ほら、今こうしてユウ君と友達になれた事なんて、私にとってはすっごく嬉しい事だしね! ふふ、だから今までの災難なんて全部チャラだよー!」

「あ、ルリさん……」


 ルリさんは満面の笑みを浮かべながら僕にそんな事を言ってきてくれた。それは本心からそう言ってくれてるのが凄く伝わる屈託のない笑顔だった。


 だから僕も満面の笑みを浮かべながらルリさんにこう返事を返していった。


「はい、そうですね! 僕もルリさんとお友達になる事が出来て凄く嬉しいですよ!」

「わわっ、ユウ君にもそう言って貰えると私も嬉しいよー! よし、それじゃあもうそんな暗い話はそれくらいにしてさ、ここからはもっと明るい話をしていこうよ! 具体的に言うなら明日のダンジョンが今から楽しみだね!」

「あ、はい、そうですね! 僕もすっごく楽しみです!」

「うんうん、それじゃあ明日は一緒にすっごく楽しもうね! あ、そうだ! そういえばさっき社長も言ってたけどさ、私の事はもう沢山ゴシゴシとシゴいちゃって良いからね! 私打たれ強さにだけは自信あるからさ、だからもうユウ君の全力で沢山鍛えちゃってください!」

「はい、わかりました! それじゃあ僕も全力でコーチングをしていきますね!」

「うん、よろしく頼むよ! ユウ君!」


 こうして僕とルリさんはお互いにやる気全開な表情をしていきながらそんな言葉を交わしていった。


 何だか今日だけでも色々と考えなきゃいけない事が沢山増えてしまった気がするんだけど……でも今はとりあえず目の前のルリさんのコーチング役を全力で頑張っていく事にしよう!

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