41話:社長さんにファーストライブに勧誘される
「それでは続けて二点目の話に移りたいのですが……その前にユウ君に聞きたい事があります。君が今まで投稿してきた動画は全て自分で作っていったのですか? それとも外部委託で作ってきたのですか?」
「あ、はい、投稿してきた動画は全て自分で作ったモノです。基本的に自分の事は自分でやるべきだってお婆ちゃんから教わってきたので、動画とか配信関連の事は全部自分一人でやっていました」
「ふむふむ、そうなんですね。ちなみにユウ君は動画作りとかは誰かに教わったりしてきたんですか? それとも独学でここまで作れるようになったんですか?」
「えっと、一応独学ですね。僕の周りにはネットとかそういうのに強い人は誰もいなかったので、自分で色々と調べてやり方を覚えていった感じです」
「なるほどなるほど。まだ十六歳でここまでのものが作れるなんて凄いですね。しかも誰にも教わらずに独学でここまでこれたなんて本当に凄いですよ。ふふ、それじゃあ本題に戻るのですが……沢城ユウ君、良かったらファーストライブに入りませんか?」
「え……って、えっ?」
「えぇっ!? ユウ君がファーストライブに入るの!? あはは、それは私も嬉しいな!」
なんと社長さんは突然と僕をファーストライブに勧誘してきてくれた。そしてそれを聞いてたルリさんは嬉しそうに笑みを浮かべながら喜んでいってくれていた。
でも僕はそんな事を言われるなんて全く想像もしていなかったのでかなり間の抜けた声を出していってしまった。
「え……えぇっと……って、えぇっ!? 僕がファーストライブにですか!? いや僕はファーストライブに入れるような凄いライバーなんかじゃないですよ!? あ、もしかしてそれもルリさんを助けた事による謝礼みたいな感じですか? さ、流石にそこまでして頂かなくても大丈夫ですよ……?」
「いえ、これは先程の件とは違いまして、ルリを助けてくれたからそのお礼でユウ君をスカウトしているという訳では決してありません。私もファーストライブという大きな事務所の社長をしている身ですので、ファーストライブにスカウトする人材はこの事務所の発展にちゃんと貢献してくれるかどうかで判断していますからね」
社長さんは僕が言った事をすぐさま否定してきた。流石は超一流のライバー事務所の社長さんだ。そういう会社の経営に直結する部分の所はとてもシビアなようだ。
「な、なるほど。社長さんの考え方は理解しました。でもそうなると余計に疑問に思うのですが……正直僕にはファーストライブに入れる程の実力なんて無いですよ? 僕は冒険配信者としても実況者としてもそんな有名人なわけじゃないです。だから僕が入った所でファーストライブに貢献出来る可能性なんてほぼ0だと思うのですが……」
「いえ、そんな事はありません。このファーストライブ事務所の社長である私が断言します、君はこのままダンジョン配信や動画活動を続けて行けば必ずトップのダンジョンライバーになる事が出来ます。だから是非ともユウ君には私達の運営しているファーストライブに入って貰いたいのです」
「えっ!? 社長さんがそんな事を断言してくれるなんて……え、えっと、でもそれはどうしてですか? 社長さんがそう思ってくれる理由があるのでしょうか?」
「はい、もちろん理由は沢山あります。まず一つ目ですけど、ユウ君は数少ないSランクの冒険者という所です。S級冒険者の動画や配信なんて沢山の人達が見たいと思うコンテンツですからね。実際にほら……これを見てください」
「え? は、はい……って、えっ!?」
社長さんはそう言って僕にタブレットPCを手渡してきてくれた。
そのタブレットにはとある冒険者がモンスターと戦闘している動画が映し出されていた。その動画のタイトルは……。
『【生配信切り抜き】今噂になってる男子高校生のS級冒険者がヒュドラを華麗にキルしたぞ!!【カケル&シュウジ】』
というタイトル名の動画だった。それはさっきカケルさんとシュウジさんが言ってた切り抜き動画だと思われる。
という事はつまりその動画に映し出されている冒険者というのは……もちろん僕だった。
「わわ、凄いね! これヒュドラと戦ってる冒険者ってユウ君でしょ! しかもこの動画を投稿してるのってカケルさん達じゃん! ユウ君ってもしかしてカケルさん達とも友達なの!?」
「えっ? い、いや、お友達という程じゃないんですけど……カケルさん達とはついさっき知り合って一緒にダンジョン探索をしてたんです。え、えっと……もしかしてルリさんもカケルさん達の事をご存知なんですか?」
「うん、もちろん! カケル&シュウジっていうコンビチャンネルやってる人達だよね! 私も前にコラボさせて貰った事があるんだけど、ノリが良くて気さくで楽しい人達だったなー!」
「あぁ、はい! 確かにノリが良くて気さくで話をしていて楽しい感じのお兄さん達でした! って、あれ? ルリさんとコラボ……? ル、ルリさんのような超大人気配信者とコラボするという事は……も、もしかしてあの二人って結構人気のある配信者だったりしますかね……?」
「うん、そうだね! いつもワクワクするリスナー企画を二人で挑戦していったり、カケルさんとシュウジさんの掛け合いが漫才みたいで面白いという事で今若い子達から凄い人気を集めてるチャンネルだよ。確かもうすぐチャンネル登録者数は150万人くらいになるんじゃなかったかな?」
「え……って、えぇぇええええっ!?」
全然チンケなチャンネルじゃないじゃん!? チャンネル登録者数150万人近くだなんて……カケルさん達はトップダンジョンライバーの一員じゃん!!
そ、そんな凄すぎる人達にあんな慣れ慣れしい態度を取ってしまったなんて……ど、どうしよう、後でちゃんと謝らなきゃだ!!




