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40話:いよいよ社長と対面していく

 僕はルリさんの案内によってファーストライブの事務所に入っていき、そのまま応接室の前まで連れて来られた。


 そしてルリさんは応接室のドアをノックをしていった。


―― コンコン!


『……はい?』

「ルリです。お客様を連れてきましたー」

『あぁ、わかりました。どうぞ入ってください』

「はい、失礼します」

「し、失礼します!」


―― ガチャ!


 そう言ってルリさんは応接室のドアをゆっくりと開けていき、僕達はそのまま応接室の中に入って行った。


 すると応接室の中には高級そうなスカートスーツを着ている物凄く綺麗な女性が立っていた。年齢はおそらく20後半~30代前半かな?


(こ、この人がファーストライブの社長さんか……!)


 僕は目の前の女性をジックリと見ていった。その女性の身長は170センチ近くのスレンダー体型だ。腰つきとか物凄く細いのでモデルさんのような感じにも見えた。


 さらに顔付きはとてもサラサラなロングヘアと切れ長な瞳が特徴的で、いわゆる“和風美人”という言葉がピッタリと似合う綺麗な大人の女性だった。


 まぁでも以前にルリさんが言ってたようにちょっと冷たそうな感じがするというのは何となくわかった。切れ長な瞳のせいで何だか睨まれてる感じもするのでちょっと怖くも見えるな……。


「ふふ、大丈夫だよ。社長はこんな怖い顔付きしてるけど全然温厚な人だからさ」

「えっ……? も、もしかして僕なんか口に出してましたか?」

「いや、何も言ってないけど、でも皆社長を見たら第一印象は怖そうって言うからね。でも社長は全然優しい人だから大丈夫だよー」


 僕がそんな事を思っているとルリさんは僕の耳に向かってコソコソとそんな話をしていってくれた。どうやら僕がビクビクとしているのを見て安心させようとしてコソコソ話でそんな事を教えてくれたようだ。やっぱりルリさんは優しい人だな。


「……? どうかしましたか? 二人してコソコソ話なんかして?」

「いえいえ、なんでもないですよ。それじゃあ社長、こちらが先日お話したS級冒険者の沢城ユウ君です!」

「あぁ、君がユウ君なんですね。今日は遠路はるばるファーストライブの事務所まで来て頂きありがとうございます。とりあえずまずはソファに座ってゆっくりとくつろいでください」

「は、はい、失礼します!」

「あ、社長、私も同席して大丈夫ですか?」

「ん? ユウ君が良いと言うのなら、もちろん大丈夫ですけど?」

「あ、はい! 僕は全然ルリさんも一緒で大丈夫ですよ!」

「うん、ありがとうユウ君! それじゃあ御言葉に甘えて私も失礼します!」


 そう言って僕とルリさんはソファに座っていった。そして目の前の美人な女性……おそらく社長さんも僕達と一緒にソファに座っていった。


(って、あ、そうだ! 浅香に選んでもらったお土産をすぐに渡さなきゃだ!)


 僕はそう思って鞄の中から浅香から受け取った地元のお土産を取り出して社長さんに手渡していった。


「あ、そ、そうだ! それとこれなんですけど、お土産にどうぞです! 僕の地元は柚子が有名なんですけど、その柚子を使用されて作られた銘菓のクッキーです。沢山買ってきましたので良かったら事務所の皆さんで食べてください!」

「わわっ! こんなに沢山の柚子のお菓子を持ってきてくれたんだ! お菓子は凄く嬉しいなー!」

「あぁ、わざわざご丁寧にありがとうございます。それじゃあ後で事務所の皆で食べさせて貰いますね」

「は、はい、是非ともご賞味ください! 味も香りも凄く良いので気に入って貰えたら嬉しいです!」


 社長さんもルリさんも地元原産の銘菓の柚子クッキーに喜んでくれて良かった。


 本当は僕はファーストライブへのお土産に石鹸とかタオルを持って行こうとしてたんだけど、でも浅香に意見を聞いたらそんなのよりも無難にお菓子にした方が良いと言われて地元の銘菓を選んで貰ったんだ。


 結果として浅香に選んで貰った銘菓を持って行く事にして大正解だったな。これからも困った時は必ず浅香に意見を聞く事にしよう。


 という事でそんな感じでアイスブレイクも出来て周りの空気は穏やかになっていった。そしてそれから程なくして、社長さんは自己紹介をしてきてくれた。


「それでは改めて自己紹介をさせて頂きます。私はこのファーストライブの代表取締役兼社長を務めています、姫川雪音(ひめかわゆきね)と申します。よろしくお願いします」

「あ、は、はい! ご丁寧にご挨拶ありがとうございます! えっと、僕は沢城悠と申します! 高校一年の男子で、それと冒険者もしています!」

「はい、もちろん存じ上げております。そして君は当事務所のライバーであるルリを救ってくれた命の恩人です。今回の件はファーストライブの社長である私からも改めて感謝の言葉を伝えさせてください。今回は本当にありがとうございました」


 そう言って社長さんは僕に向かって深々と頭を下げてきてくれた。この一連の流れだけでもこの社長さん……雪音社長は凄い人格者だという事がすぐに理解できた。


 やっぱり最大手のライバー事務所なんだから、当然その事務所の社長も凄い人だっていう事なんだろうな。


「え、えっと……あ、い、いえ! 僕としては当然の事をしたまでですので! だから社長さんもそんな気にしないで大丈夫です!」

「そうですか。ふふ、やっぱり君の事はルリから話を聞いてましたけど、凄く優しい少年のようですね」

「はい、本当にユウ君はすっごく優しい男の子なんですよ! ね、ユウ君!」

「えっ? あ、う……」


 唐突にルリさんと社長さんは一緒になって僕の事をそんな風に褒めてきてくれた。何だかちょっと恥ずかしい気持ちになっていってしまった。


 なので僕は恥ずかしい気持ちを反らすためにも、社長さんにこう話しかけていった。


「う、うぅ……って、あっ! そ、そうだ、それで社長さんは僕に話があるそうですね? そ、それって一体何の話でしょうか?」

「あぁ、はい。そうでしたね。それでは本題に入りますが……君を事務所に呼んだ理由は二点です。まず一点目、君のチャンネルを荒らしてた犯人を調べる許可を頂きたいのです」

「あ、は、はい、その件についてはルリさんから聞きました。でも僕のチャンネルを調べてくれるなんて……本当に良いんですか? そういう調査ってそれなりの費用がかかってしまうんじゃないんですかね?」

「はい、そうですね。それなりに高額な費用はかかりますが、それは全てファーストライブの方で出しますし、ユウ君には金銭的なダメージはありませんので安心してください」

「そ、それは僕としてはありがたい事なんですけど、そもそも何で急に僕のチャンネルの荒しを調べて頂ける事になったんですかね? ルリさんを助けたお礼というのは以前聞きましたけど……でもルリさんを助けただけでそんな高額な調査を無料でして頂けるなんて、それは流石に僕に都合が良すぎる気もするんですけど……」


 そんな僕にとってメリットしかない話が本当にあるのか凄く疑問に思ったので、僕は素直に社長さんにそう尋ねていってみた。だって昔から先輩冒険者さん達から“タダよりも怖いモノはない”って言われてきたしね。


「そうですね、君のチャンネルの荒らしについて調査をさせて欲しい理由はもちろん君がルリの命の恩人だという事もありますが……実はそれ以外にも君のチャンネルの荒らしについて調べたい理由がもう一つあるのです。実は君のチャンネルが荒らされたのと同じような感じで、つい数週間前にもルリのチャンネルが荒らされてたんです」

「え……って、えぇっ!? 数週間前にルリさんのチャンネルも荒らされてたんですか?」

「うん、そうなんだよ。荒らされ方に関してもユウ君と全く同じっぽくてさ、何の脈絡もなく突然と誹謗中傷のコメントが全動画に書かれ始めていったんだよ」


 僕はその話を聞いて凄くビックリとしていった。どうやらルリさんも僕と同じような感じの荒らされ方をつい数週間前にされたようだ。


「それで私の方でルリのチャンネルが荒らされた原因を色々と調べてたのですが、某匿名掲示板を利用してルリのチャンネル荒らしを扇動してる人がいた痕跡が見つかったんです。それでその某匿名掲示板の過去ログを遡って見ていくと……なんと君のチャンネルも同じ手口で荒らしを扇動している書きこみも見つかったんです」

「えっ!? お、同じ手口って……そ、それじゃあもしかして?」

「はい、君のチャンネルとルリのチャンネルを荒らそうとした犯人は同一人物の可能性があると私は睨んでいます。そこでここからはちゃんとした調査会社に依頼して犯人の特定をしていこうと思っています。そしてそのためにも君のチャンネルの調査も併せてしていきたいので、君のチャンネルの調査をする許可を頂きたいのです」

「な、なるほど! そういう事でしたら是非とも僕のチャンネルの併せて調査していってください! それと僕の方でも提供出来る情報がありましたら全部ファーストライブさんに提供しますので!」

「はい、そう言ってくれると非常に助かります。ご協力本当にありがとうございます」


 社長さんから理由を聞いた僕はすぐさま二つ返事でチャンネル調査にオッケーを出していった。


 僕のチャンネルが誰かに荒らされたのは正直どうでも良いけど、でもルリさんのチャンネルが荒らされてたなんて到底許せない行為だ! それはなんとしても絶対に犯人を見つけなきゃだね!!

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