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38話:目の前の二人組の男性について

「え、えっと、お二人はさっきの冒険者さんですよね?」

「あぁ、そうだ。俺の名前はカケルって言うんだ。それとこっちの男は……」

「シュウジだ。よろしくな!」

「あ、はい、よろしくお願いします!」


―― ギュッ……


 そう言いながらシュウジさんは僕の方に手を差し伸べてきてくれたので、僕も手を差し出してギュッと握手を交わしていった。


 そして僕はそのまま二人の方を見ていった。二人ともシュっとした体型をしていて二十代前半くらいの見た目をしていた。おそらくは大学生かな?


(……て、あれ? あそこにあるのって……撮影用ドローンだよね?)


 そして二人の後方に撮影用ドローンが浮かんでいるのにも気が付いた。あれは配信用に使われる事が多いタイプの自動撮影ドローンだ。という事はこの二人はもしかして……。


「あ、もしかしてお二人は……ダンジョン配信者の方なんですかね?」

「あぁ、そうだよ。俺達はコンビでダンジョン配信者をしてるんだ。それで今日もシュウジと一緒にダンジョン配信をしてたんだけど……って、あ、そうだ。その前に確認したい事があるんだけどさ、君って配信に映しちゃっても大丈夫かな? 事後報告になっちゃうんだけどさっきの君の戦闘を配信で映しちゃったんだ」

「もしもプライバシー的な観点で駄目なようなら今すぐに配信切るし、さっきまでの配信も削除するから気軽に言ってくれ」


 どうやらカケルさん達は僕とヒュドラの戦闘を配信でずっと流していたようだ。


 そしてそのヒュドラとの戦闘が無事に終わったので、カケルさん達は僕の元へと駆け寄ってきて配信に映っても大丈夫かの確認をしにきてくれたようだ。


「そういう事でしたら全然大丈夫ですよ。僕も自身のチャンネルを持ってますし、顔出しとかに関しても何も問題は無いです。あ、でも一応僕の方でも後で配信のチェックをさせて頂きたいのでお二人のチャンネル名を教えて頂けますか?」

「おぉ、それなら良かった。俺達は“カケル&シュウジ”っていうチャンネル名で活動してるコンビライバーだ。まぁ普段からリスナーの無茶ぶりに応えまくってるチンケなチャンネルさ」

「ぷはは、そうだな。俺達はチンケなコンビだなー」

「あぁ、なるほど。お二人はコンビで活動されてるんですね。って、あ、それじゃあ今もカケルさん達の配信に僕が映り込んじゃってますよね? す、すいません、カケルさんとシュウジさんの配信を楽しみにしてるリスナーの皆さん……急に僕が配信に入り込んじゃって本当にすいません……」


 僕はそう言いながら撮影用のドローンに向かって謝っていった。するとカケルさんとシュウジさんは笑みを浮かべながら僕にこう言ってきた。


「いやいや、そんなの全然気にしないでくれよ。というか俺達もリスナーの皆も君の戦闘を見て凄く興奮してたんだよ! さっきはマジでめっちゃ助かったよ!」

「いやマジで凄かったよ! はは、それにしても俺達がヒュドラに襲われた時はどうなるかと思ったよなー」

「そういえばお二人はヒュドラに襲われてたんですよね。もしかしてこのダンジョンが上級ダンジョンだという事は知らなかった感じですか?」

「いや、もちろん知ってたよ。でも実はさぁ……ちょっと前に俺達冒険者のBランク認定が貰えたからさ、その記念に視聴者のリクエスト企画をやるって事になったんだ。それでリクエストで一番多かったのが“高難度のダンジョンをチラ見しにいく!”って企画だったんだよ」

「あ、なるほど、そういう事ですか。カケルさん達はリスナーさんからのリクエストでこのダンジョンにやって来たんですね」

「あぁ、そういう事なんだよ。でもBランクに上がったばかりでこのダンジョンに入るのは流石に駄目だったな。今回の件は俺達もリスナーの皆も全員でしっかりと反省しようぜ」

「そうだな、リーダー。だけどいつかこのダンジョンを俺達二人で攻略するっていう新たな目標が出来て良かったよな! って事でこれからも全力で冒険を頑張っていこうぜ!」

「はは、そうだな。シュウジ!」


 カケルさんとシュウジさんは笑いながらそんな目標を語り合っていった。その様子からしてとても仲の良い相棒感を感じられて凄く素敵だなと思っていった。


「あ、そうだ! そういえばすっかりと忘れてたんだけどさ、君の名前を教えて貰っても良いかい?」

「え? あ、すいません、そういえばまだ自己紹介してませんでしたよね。えっと、僕はユウという名前で活動している冒険者で――」

「あぁ! やっぱりそうなんだ! 君はユウ君っていうのか!」

「おぉ! それじゃあやっぱりこの子が……!」

「え? ど、どうしたんですか二人とも?」

「あぁ、ごめんごめん。ちょっと興奮しちゃったんだ。はは、だって君ってさ……S級冒険者の男子高校生なんだろ?」

「え……って、えぇっ!? な、なんで知ってるんですか!?」


 興奮気味にカケルさん達は僕にそんな事を言ってきたので凄くビックリとしていってしまった。な、なんでカケルさん達は僕の事を知ってるんだろう?


「あはは、君は凄くビックリとしてるようだけど、それだけ君は有名人って事だよ! って事で今日はマジで助かったよ! ヒュドラを撃退してくれて助かった!」

「いや、マジで相当に凄かったぞ! あんな華麗にヒュドラを倒すのも凄いし、本当にカッコ良かった! リスナーの皆と一緒にめっちゃ食い入るように君の戦闘をずっと見てたよ!」

「あ、そ、そうなんですか? ま、まぁでも僕としてはあくまでも普通に戦闘をしてただけなんですけどね」


 興奮気味のままカケルさんとシュウジさんは全力で僕の事を褒めてきてくれた。


 でもここまで全力で褒められるとちょっと気恥ずかしくも思ったので、僕は顔を赤くしながら頬をポリポリと掻きながらそんな事を言っていった。


「いやいや、そんな事はないだろ! 君のその戦闘スキルはめっちゃ高いしマジで凄かったよ!」

「本当本当! それに君って高校一年生なんだろ? そんな若さで“業火の柱”なんて上級魔法を使えるの凄すぎるって! しかもめっちゃピーキーな魔法なのにヒュドラに完璧に当てていくとかすげぇ鳥肌立ったわ!」

「あぁ、マジでそうだよな! 配信で君の戦闘を見てたリスナーの皆もすげぇ!! ってめっちゃ感動してたからな!」

「か、感動!? そ、そんなにですか? そ、それならまぁその……カケルさん達や配信を見ていたリスナーさん達に楽しんで貰えたようなら僕も良かったです! ヒュドラとの戦闘を最後まで見て頂いて本当にありがとうございました!」


 僕はそう言ってカケルさん達が使っている撮影用のドローンに向かって丁寧にお辞儀をしていった。


 するとそんな僕のお辞儀してる様子を見ていたカケルさんとシュウジさんは急に顔を近づけてコソコソ話を始めていった。


「う、うわ……な、何だよこの子……マジでめっちゃ良い子すぎんか!?」

「あ、あぁ、本当にな! 俺んちの弟も今高校一年だけど、めっちゃ口悪いし横柄だししょっちゅう喧嘩してるってのに……俺、こんな良い弟が欲しかったわー」

「? ど、どうしたんですか? 二人でコソコソと話をして?」

「えっ!? あぁ、いや、こっちの話だよ! そ、それでさ、さっきの君のヒュドラとの戦闘なんだけど……良かったらあの戦闘シーンを切り抜いてSNSとかに投稿したいんだけど駄目かな?」

「え? さっきの戦闘の切り抜きですか?」

「そうそう! いやマジでさっきのヒュドラ戦は相当に凄かったからさ、俺達以外の冒険者にも見て貰いたいって思ったんだ! だからどうかな? さっきのヒュドラとの戦闘シーンを切り抜いてSNSとかに投稿しても良いかな?」


 カケルさんとシュウジさんは僕に向かってそんなお願いをしてきた。


「ふむふむ、切り抜き動画ですか。はい、誹謗中傷とか悪い事とかにさえ利用しなければ全然切り抜いて貰って構いませんよ」

「あぁ、もちろん誹謗中傷とか悪い事には一切使わないから安心してくれ! 純粋に沢山の冒険者に今の戦闘シーンを見て貰いたいって気持ちだけだからさ!」

「許可してくれて本当にありがとう! それじゃあしっかりと見やすいようにテロップとか編集して投稿しておくよ! 楽しみにしといてくれ!」

「は、はい、わかりました!」


 僕はカケルさん達に切り抜き動画の許可を出していくと、二人とも嬉しそうな顔をしながらそんな返事を返してきてくれた。


 しかもただの切り抜き動画ではなくて、ちゃんと見やすいようにテロップとかの編集も施してから投稿してくれるらしい。何だかとても親切な二人組だなぁ。


(でも今の冒険者界隈ってエンタメ系の動画が一番盛り上がっているんだから、そんなヒュドラ戦の動画なんて誰も興味無いんじゃないのかな?)


 正直僕は心の中ではそんな事を思っていたんだけど……まぁでもカケルさん達が嬉しそうにしてるから別にいっか。

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― 新着の感想 ―
ああ、認識がズレてる、良いねw 面白いです、良い物語をありがとうございます。
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