37話:久々に大技を繰り出していく
ヒュドラと対峙していくと、ヒュドラはすぐに僕に目掛けて全力で突進をしてきた。
「グギャアアアアアッ!」
「……おっと!」
―― ドゴォン!!
僕はヒュドラの突進を紙一重で躱していくと、そのままヒュドラはダンジョンの壁に向かって大きく激突していった。そしてそのヒュドラの激突によってダンジョンの壁は大きく抉られていってしまった。
この抉り取られていった壁面を見ただけでもこのヒュドラの攻撃力は相当に高いという事が一瞬で判断出来る。やはり高レベル帯のヒュドラなんだろうね。
「でもヒュドラが壁に埋もれている今の内に攻撃を……」
―― カキンッ……
「ま、そうだよね……」
僕の双剣による斬撃はヒュドラの硬い皮膚によって簡単に弾かれてしまった。とても大きな個体だし物理防御力もそれなりに高いという事だろうな。そしてこうなると物理攻撃ではなく魔法攻撃で倒すしかなさそうだ。
「よし、それじゃあ……久々に大仕事をさせて貰うとしようかな!」
「グルルルル……!」
僕はそう言って一旦後ろに下がっていきヒュドラから距離を取っていった。そしてそのまま僕は地面に手をかざして久々に上級魔法を唱えていった。
「火属性魔法・設置」
「グルルルル……グギャアアアアアッ!」
地面に手をかざしてそう唱えていくと、地面には赤く魔法陣が描かれていき始めた。まずは一つ目だ。
しかしそんな悠長な事をしている僕の様子を見ていたヒュドラは雄叫び上げながらクルっと反転してもう一度僕に向かって突進をしてきた。
「ん? おっと!」
「グギャアアアアアアッ!」
―― ドゴォン!!
僕はその突進をまた紙一重で避けていくと、ヒュドラは反対側の壁に大きくぶつかっていった。そして先ほどと同様にヒュドラの突撃によって反対側の壁も大きく抉れてしまった。
僕はそんなヒュドラの行動をじっくりと観察しながらも、先ほどまでヒュドラが立っていた壁の方向に手をかざして僕は魔法を唱えていった。
「火属性魔法・設置」
そう唱えていくと手をかざした壁の方向に赤い魔法陣が描かれ始めていった。これで二つ目の設置が終わった。残るはあと一つだけだ。
「グルルルル……!」
するとその時、ヒュドラは身体を僕の方に再度向き直して唸り声を上げ始めていっていた。どうやらまた僕に向かって全力で突進をしてくるようだ。
なのでヒュドラが再び攻撃を仕掛けてくるよりも前に全ての準備を終わらせるために、僕はすぐに手を空にかざしていってもう一度同じ魔法を唱え始めていった。
「火属性魔法・設置」
僕は手を空にかざしてそう唱えていくとダンジョンの天井にも同様の赤い魔法陣が浮かび始めていった。これで三つ目が置かれた。これで準備は完了だ。
「ふぅ、これで良し。って、おっと」
「グルルルル……グギャアアアアアア!!」
そしてその瞬間にヒュドラは大きな雄叫びを上げながら僕に目掛けて全力で突撃をしてきた。だけど今回はもう避ける必要はない。
という事で僕は双剣を再び構え直していき、そしてそのヒュドラの全力の突撃を……。
―― ガキンッ!
「グギャッ!?」
「……ふっ!」
その全力の突撃を僕は双剣を駆使して完全に受けきっていった。今現在は肉体強化の魔法も施しているので僕は何なくヒュドラの突撃を受け止める事が出来た。
そして今この瞬間……ヒュドラが立ち止まっている地面には魔法陣が描かれていた。さらに壁と天井にも同様の魔法陣が描かれており、その全ての魔法陣の直線状にヒュドラが居る状態となった。
これで全ての準備が完了した。なので僕はすぐさま新たな魔法を唱えていった。
「設置魔法起動! 業火の柱!」
「グ、グギャッ!?」
―― ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
僕がそう唱えていったその瞬間、三つの魔法陣からは巨大な火柱が盛大に呼び出されていった。
―― ゴオオオオオオオオォォオッ!!
「グ、グギャッ!? グギャアアアアアアアアアッ!!」
その魔法陣から呼び出された三本の巨大な火柱はヒュドラの身体を全て包み込んでいき、そしてそのままヒュドラはその業火の炎に巻き込まれていった。
今僕が発動した業火の柱は名前の通り巨大な火柱を呼び起こす上級の火属性魔法だ。
業火の柱を発動するためには事前に魔法陣を設置しないといけないし、当然火柱なので直線状にいる敵にしか攻撃は当たらないので使い勝手はそれなりに悪かったりもする。非常にピーキーな魔法だ。
でもその代わりに恐ろしい高火力が叩き出せる業火の柱を呼び出せるので、相手の行動を見極めて先に魔法陣を設置しておく事で強いモンスターも一瞬で倒す事が出来るという面白い魔法でもある。
「グギャ……ガ……ッ……」
―― ドサッ……
そしてそれから程なくして。
僕の発動した業火の柱に包み込まれていたヒュドラは力尽き地面に倒れ込んでいった。そして倒れていったヒュドラは大きな魔石に変わっていき地面にドロップしていった。
「……ふぅ。久々に大技を使ったけど上手く決まって良かったなー」
僕は軽く背伸びをしながらそう呟いていった。そして僕はそのまま地面にドロップしたヒュドラの魔石を拾い始めていこうとした。しかしその時……。
「す……すげぇっ!! あ、あんなピーキーな火属性の魔法を使いこなしてるヤツ初めて見たぞ!!」
「あぁ、本当に凄いよ! あのヒュドラを綺麗に完封したなんて凄すぎる! しかもソロでだろ!? いや、マジで凄いな!」
「……うん? って、あれ?」
その時、ふと僕の後ろの方から何人かの男性の声が聞こえてきた。なので僕はその声が聞こえた方に顔を向けていった。
すると僕の後ろには……先程の二人組の冒険者男性が立っていた。




