表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/103

33話:アストルフォにヤングワイバーンが現れた理由

「あ、そうだ! それともう一つユウ君に伝えておく事があったんだ!」

「あ、はい、なんですか?」


 僕はファーストライブに行った時の事を想像していると、ルリさんはさらに僕にこう言ってきた。


「ほら、アストルフォの一階層でヤングワイバーンが出現したでしょ? それの調査を冒険者ギルドの方でやってくれたんだけど、その調査結果の第一報が私の所に入ってきたの!」

「あ、そうだったんですね! それで、ヤングワイバーンがアストルフォに現れた原因はわかったんですか?」

「うん。冒険者ギルドの調査によると、アストルフォのあの大部屋で誰かが召喚魔法を使っていた形跡が残っていたらしいの」

「え!? 召喚魔法ですって!?」


 召喚魔法とは闇属性の魔法だ。一度でも狩った事のあるモンスターを召喚して使役する事が出来る魔法だ。


 召喚魔法には沢山の魔力を消費する必要があり、さらに強いモンスターを呼び出すためにはそのモンスターを一度でも倒さないといけないという制約もあるので、かなり使い勝手の難しい魔法だと言われている。


 そして召喚されたモンスターは基本的には召喚した冒険者の言う事を聞くんだけど、でも召喚した冒険者がそのモンスターの付近から離れてしまうと、召喚されたモンスターは普通のモンスターに戻ってしまうんだ……。


 だから召喚魔法を発動すると他の冒険者に危険が及ぶ可能性もあるので、細心の注意を払って発動しないといけない魔法なんだ。それなのに……。


「えっ? で、でも誰かがヤングワイバーンを召喚したとして……それを召喚した人はアストルフォにはいませんでしたよね?」

「うん。あの大部屋には私とユウ君以外には誰も冒険者はいなかったよ。人の気配とかも私達以外には一切感じなかったしね」

「そ、そうですよね? それじゃあつまりルリさんがアストルフォに訪れるよりも前に……誰かがヤングワイバーンを召喚してそのまま放置してアストルフォから帰ったって事ですよね? そ、そんな危険な行為をしてた人がいるなんて……」


 召喚したモンスターをそのまま放置したのが“うっかり”なのか“故意的”にやったのかはわからないけど……でもそんな危ない行為を故意的にやってる人がいたとしたらとても恐ろしい事だ。


 だってそんな事を故意的にやられてしまったら、その被害にあった人は命を落とす可能性だってあり得るしね。というか実際にルリさんだって最悪死んでた可能性もあったわけだしね……。


「うん、そうだね。召喚したモンスターを放置したのが偶然なのか故意的なのかわからないけど、でもかなり悪質な冒険者がアストルフォにいたって事になるね」

「そ、そうですよね。今回の件は命を落とす冒険者が出てしまっていた可能性もあると思いますし、うっかりだったとしてもかなり悪質ですよね……」

「うん、だから冒険者ギルドの方でそんな悪質な事をしでかした冒険者の調査をさらにしていってくれるってさ。ついでにウチの社長も今回の件は滅茶苦茶にブチギレてるからね。だからファーストライブも総出でこの冒険者を探し出すって言ってたよ」

「な、なるほど。何だかルリさんの話を聞いてるとファーストライブの社長さんって所属してるライバーさんの事を大切に思っている感じが凄く伝わってきますね。それと結構アツい感じの人なんですね」

「あはは、そうだね。見た目はすっごく冷たそうな鉄仮面みたいな社長なんだけどね。でも中身は凄くアツい人なんだ。そんなアツくて優しい社長だからこそ私もファーストライブに所属してるんだよ」

「へぇ、そうなんですね」


 ルリさんの話を聞いてる限りだとファーストライブの社長さんは凄い人格者な雰囲気がヒシヒシと伝わってきた。そしてそんな社長にお礼の挨拶をしたいって言われてると思うと何だか凄く緊張しちゃうよね……。


「まぁそんなわけでヤングワイバーンが現れたのはダンジョン側の異常事態というわけではなくて、単純に人為的な行為だって事が判明したという報告でした! また新しい情報が入ってきたらユウ君に伝えるねー!」

「はい、アストルフォの情報を教えてくれて本当にありがとうございます!」

「うん、という事で私がユウ君に話したかった事はこれで全部かな。あ、そうだ。そういえばさ……ユウ君はまた配信者とか動画投稿者に戻ったりしないの?」

「え? 僕がですか?」

「そうそう。今回ユウ君のチャンネルが燃えてたのって荒らし行為にやられただけであって、ユウ君に落ち度は全然ないからね。それにコメント欄も“引退なんてしないで動画投稿とか配信を復活してください”って書きこみも凄く多かったよ? だからせっかくだし一旦引退を撤回してさ、また動画投稿とか配信者を再開してみても良いんじゃないかな?」


 ルリさんは優しい口調のまま僕にそんな事を提案してきてくれた。そして僕はそんなルリさんの提案を受けて……。


「えっと、そうですね。今すぐ引退を撤回して再開するってのはメンタル的にもちょっと厳しいですけど……でも僕が今まで作ってきた動画が沢山の冒険者さんの参考になっているというのなら、せっかくなのでまたいつかそんな人達のためになるような動画を作っていこうと思います!」

「そっかそっかー! うん、それじゃあ私もユウ君チャンネルのファンとして、ユウ君の新しい動画が投稿されるのを楽しみにしてるね!」

「はい、ありがとうございます!」


 そう言ってルリさんは優しい雰囲気のまま僕に向かってとても嬉しいエールの言葉を送ってきてくれた。本当にルリさんって思いやりがある素敵な人だよね。


 そして今回の一件で僕の動画を参考にしてくれる冒険者がいるという事もわかったので、そんな参考にしてくれてる人達のためにも動画投稿はちゃんと再開しようと改めて思っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ