31話:ビックリしすぎて浅香に話を聞いていく
僕は思いっきり混乱しながらパソコンの画面を眺めていった。
「い、いや、な、なんでこんな事に……って、あ、そうだ! こういう時は浅香に話を聞こう!」
その時、僕にはネット関係でいつも頼りになる妹がいる事を思い出した。
ネット関係は僕なんかよりも浅香の方が遥かに得意だ。だから急激にチャンネル登録者が増えていってる理由も浅香ならすぐに気が付くかもしれない。
という事で僕は急いで自分の部屋から出ていき、そのまま隣の浅香の部屋へと向かって行った。
―― コンコン!
「はーい?」
「あ、僕だよ浅香! ちょっと聞きたい事があるんだけどさ、部屋に入っても良いかな?」
「え? うん、良いけど?」
「あ、ありがとう、それじゃあ失礼します!」
―― ガチャッ!
僕はそう言ってすぐに浅香の部屋に入っていった。すると浅香はベッドの上で寝転びながらスマホを弄っていた。
「? どうしたのお兄ちゃん? 何か変な顔してるよ?」
「あ、う、うん、ちょっと浅香に聞きたい事があってさ……と、とりあえず僕のチャンネルを見て欲しいんだ!」
「え? お兄ちゃんのチャンネル? もう動画上げてないのにどうしたの急に?」
「え、えっと、実は僕のチャンネルがちょっとよくわからない事態になっててさ……それで浅香に見て欲しいんだよ」
「? うん、まぁいいけど。それじゃあちょっと待っててよ」
僕の挙動不審な様子を見て浅香はキョトンとしながらもパソコンを立ち上げていって僕のチャンネルを開いていってくれた。そしてすぐに……。
「えぇっと、お兄ちゃんのチャンネルは……って、えぇぇぇっ!? お兄ちゃんのチャンネルの登録者数……11万人になってるじゃん!?」
「えっ!? この短期間でまた1万人も増えてるの!?」
浅香は僕のチャンネルを確認していくと、すぐに僕と同じように驚愕とした表情をしながら大きな声を出していった。
そしてさらにチャンネル登録者数はこの短期間で1万人も増えていったようだ。こんなにも登録者数が増えていってるなんて僕もビックリするよ!
「ど、どうしたのこれ!? お兄ちゃん何かまた新しい動画でも投稿したの!?」
「い、いや、そんな事は一切してないよ! 前に引退表明の動画を出してから何も出してないよ!」
「そ、そうなの? そ、それじゃあ一体なんでこんなにチャンネル登録者が増えていったんだろう? こんなの誰か超有名人とかにチャンネルを紹介されたとかそういうレベルのバズりだよ!? 何かお兄ちゃん心当たりとかないの?」
「……え? 有名人に紹介……?」
浅香にそう言われて僕はすぐにルリさんの顔が思い浮かんでいった。も、もしかして……。
「ど、どうしたのお兄ちゃん? そんなキョトンとした顔をして……あ、もしかして何か心当たりとかあるの?」
「あ、う、うん。もしかしたら……僕のチャンネルがバズった理由がわかったかもしれないよ」
「え? ど、どういう事!? 今すぐに教えてよお兄ちゃん!」
「う、うん、実は……」
そういえば浅香にはルリさんと出会った事をまだ伝えてなかった。だ、だって家族旅行中にダンジョンについての話なんてする暇は無かったしさ。
という事で僕は浅香に土曜日にダンジョンで起きた事を包み隠さずに全て伝えていった。
◇◇◇◇
それから程なくして。
「……なるほどね。そんな事があったんだ」
「う、うん、そうなんだ」
「そうなんだじゃないわよ! そんな大事な事はもっと早くに言ってよね!」
「ご、ごめん、浅香……」
僕は土曜日にダンジョンでワイバーンに襲われてるルリさんを助けた事や、ルリさんのコーチングを引き受けた事などを全て報告していくと、浅香からはもっと早くに言えと叱られてしまった。
いや全くその通りだよね……。
「はぁ、全くもう……まぁお兄ちゃんを叱るのは一旦置いておくとして、お兄ちゃんのチャンネルがバズってる件について私もちょっと調べてみたよ。そしたらやっぱりルリさんが配信でお兄ちゃんのチャンネルを紹介してくれたからっぽいね。ほら、ちょっとこれ見てよ」
「う、うん、どれどれ……」
『ルリちゃんのコーチングを引き受けたユウチャンネルって人の動画めっちゃ参考になるものばっかりだ!』
『ユウチャンネルって人の動画わかりやすいから初心者は登録しておくと良いかも!』
『ルリちゃんのコーチング役の人はユウチャンネルって言うんだけど、凄く参考になるよ! 凄くオススメです!』
……
……
……
「……え、何これ?」
「これは今さっきSNSで投稿された“ユウチャンネル”についての呟きだよ。ルリさんが配信でお兄ちゃんのチャンネルを紹介してくれたおかげで、今も数分に一回のペースでお兄ちゃんの事がSNSで書き込まれてるんだよ」
「え……って、えぇっ!? そ、そんな事になってるの!? というかルリさんに紹介されただけでこんな事になっちゃうの!?」
「そんなの当たり前でしょ! あの有名インフルエンサーのルリさんに配信で紹介されたら滅茶苦茶拡散されるに決まってるじゃん! 超大人気インフルエンサーを舐めたら駄目だよ!!」
「そ、そうなんだね……って、あれ? そういえば浅香もルリさんの事を知ってるの?」
「いや流石に田舎者な私でもルリさん程の超大人気インフルエンサーは知ってるよ。というか私もちょこちょこルリさんの配信は見てるんだからね」
「あ、そうだったんだ」
まさか兄妹揃ってルリさんの動画や配信を楽しんでいるとは思わなかった。というかやっぱり兄妹だから好きな配信者とかも似てるのかもしれないね。
そんな事をほんわかと思っていると、目の前の浅香は急にジトっとした目つきで僕の事を見てきた。
「はぁ、それにしてもお兄ちゃんだけ一人でルリさんと会ってたなんて本当にズルいよなー。私も生のルリさん見てみたかったなー」
「えっ!? い、いや、でもあれは緊急事態だったから、別にズルいとかそんな事はないと思うんだけど……」
「ふふ、わかってるよ。冗談だよ、お兄ちゃん。まぁそんなわけでこのバズりを引き起こしたのはルリさんで間違いないから、これはちゃんとルリさんにお礼の連絡をした方が良いよ。こんなバズらせ方はトップインフルエンサーのルリさんにしか出来ない事だし、それにルリさんに紹介して貰うなんて本来なら数百万円とか支払うレベルの事だからね?」
「え……って、えぇっ!? しょ、紹介して貰うのって本来はお金かかる事なの!?」
「えっ? あ、当たり前でしょ!? 何言ってんのよお兄ちゃん?? トップインフルエンサーのルリさんに多額のお金を払って商品とかアプリとかサイトを紹介して欲しいって思ってる企業なんて沢山あるに決まってるんだよ!? それなのにお兄ちゃんのチャンネルを無料で紹介してくれたなんて……こんなの一生足を向けて寝られないレベルの事なんだからね! だから今日中にルリさんにしっかりとお礼の連絡をする事! わかった?」
「う、うん、わかったよ! と、というかもう今すぐにでも連絡してくる!」
「うん、そうしときなよ!」
という事で浅香にそう言われた僕は今すぐにルリさんにお礼の連絡をする事にした。
こ、こんなにも凄い事を無料でしてくれたなんて……本当にもうルリさんには一生足を向けて寝る事なんて出来ないよ!




