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23話:さらにルリさんから深く話を聞いていく

「まぁそんなわけで今の若い子達はこのランクを上げるために日々頑張ってる感じなんだよ。ふふ、どうかな? ユウ君の参考になれたかな?」

「はい、すっごく参考になりました! 僕が住んでる所は冒険者が少ない田舎だから、そういう新しいシステムを知る機会が全然なかったのでとても有難い情報でした! 丁寧に教えてくれて本当にありがとうございました!」

「ううん、全然大丈夫だよ。私もユウ君に助けてもらったわけだし、そのお返しだよ!」


 ルリさんは笑みを浮かべながらそう言ってきてくれた。


 やっぱり配信でいつも見てたけどルリさんは人当たりが良くて優しい女性なんだろうな。これはますますルリチャンネルのファンになっちゃうよ!


「……って、あれ? でもルリさんって配信ではランクについて全然言及してませんでしたよね? ルリさんはランクとかはあまり気にしてないって感じなんですかね?」


 僕はこれまで何度もルリさんの配信を見てきたけど、でもランクについての言及は今まで一度も無かったと思う。いつも楽しそうにダンジョンの中を巡っていく配信ばかりだった。


 でもルリさんだって18歳の女子高生なわけだし、今の話を聞いてる限りだと若い人を中心にしてそのランクシステムで盛り上がっているようだ。だからルリさんも気になってるんじゃないのかな? 


「あぁ、ううん。私も冒険者ランクは自分が強くなるための指標に使わせて貰ってるよ。でもダンジョン配信に関しては見てる視聴者を楽しませたいという思いでやってるんだ。だからランク関係の話は一切しないで、視聴者の皆と一緒に楽しくダンジョンを見て回るエンジョイ勢的な感じの配信を心掛けているんだよー」

「あぁ、なるほど! 僕達視聴者のためにそんな事を考えていってくれてたんですね! いつも楽しい配信をしてくれて本当にありがとうございます!」

「うん、そう言ってくれると私も配信者として凄く嬉しいよ。ふふ、まぁでもね……欲を言えば私だって冒険者をしてるんだから、いつかは高難度ダンジョンを探索する配信とかもやってみたいとは思ってるんだけどね……」

「え? ルリさん……?」


 ルリさんはちょっとだけ落ち込んだ様子になりながらそんな事を言ってきた。そしてそのまま落ち込んだ様子でルリさんは続けてこう言ってきた。


「まぁやっぱり私だって冒険者をしてるからさ……だから高ランク帯になって強くてカッコ良い冒険者になりたいなって夢も持ってるんだ。だから配信をしてない裏では訓練とか練習とか色々と頑張ってるんだ。でも全然強くなれなくて……それに今日も命を落としそうになったわけだし……はは、やっぱり前々から思ってたけど私って冒険者向いてないんだろうなぁ……」

「……」


 ルリさんは落ち込んだ様子になりながらそんな事を呟いてきた。どうやらルリさんは冒険者の素質が無いと思って本気で落ち込んでいるようだ。


 だけど僕はそんな落ち込んだ様子のルリさんの言葉を聞いて……。


(あぁ、やっぱりそうだったんだ……)


「あぁ、やっぱりルリさんって……凄い努力家なんですね! ルリさんの配信を見ていて僕が想像してた通りの人で嬉しいです!」

「え……? ど、どうしたの急に?」


 僕がそう言っていくとルリさんはキョトンとしながら僕の方をジっと見てきた。なので僕はそんなキョトン顔をしているルリさんに向かってこう言っていった。


「僕はルリさんの一番最初のダンジョン配信からずっと見ています。それでルリさんは最初の方はスライムとかゴブリンを倒すのにも凄く必死だったけど、今は簡単に倒せるようになってるじゃないですか。それにダンジョンのマッピング技術やダンジョンの罠解除、宝箱の鍵開けとか、そういう細々とした技術を沢山習得してるじゃないですか。それって僕は本当に凄い事だなって思ってるんですよ!」

「え……?」


 冒険者という職業は何もモンスターを倒すための“力強さ”さえあれば良いというわけではない。


 ダンジョンを探索するには測量技術(マッピング)の能力が必要になるし、罠解除(アントラップ)鍵解除(アンロック)の能力だって必要になる。薬草や毒草の見分け方とかだって必要になるはずだ。


 そしてこれらのダンジョンを探索するための能力というのは……。


「そしてこれらのダンジョンを探索するための能力を育てていくには日々の鍛錬が必要になってくるんですよ。そして今のルリさんの話を聞いて……あぁ、やっぱりルリさんは配信の裏で物凄い努力を積み重ねてきたんだなっていうのが合っていて本当に嬉しいです!」

「う、うん、そう言って貰えるのは嬉しいけど……でも別にこんなの誰だって練習すれば出来る能力だしね……」

「いやいや、そんな事はないですよ! これらの能力は結構な冒険者がないがしろにしてしまう能力なんです。それなのにルリさんはしっかりと練習して来たって事は本当に素晴らしい事なんですよ!」


 前にギルドの支部長さんに聞いたんだけど、こういうダンジョン探索の技術をちゃんと覚えようとしない若い冒険者も増えてきたらしい。それなのにルリさんはちゃんと今まで努力してそれらの技術を覚えようとしていってるんだ。


「だからルリさんは自分の事を冒険者が向いてないなんて悲しい事言わないでくださいよ。ルリさんは誰よりも真っすぐと努力を積み重ねてきているんですから。だから誰が何と言おうともルリさんは凄く立派な冒険者ですよ!」

「ユ、ユウ君……」


 という事で僕はそんな頑張っているルリさんに向かって全力でエールを送っていった。だってこんなにも頑張ってる人が冒険者に向いてないなんて、そんなの絶対にあり得ないからさ。


 そしてルリさんは僕の言葉を聞いて一瞬だけキョトンとした表情をしだしていったんだけど、でもすぐにルリさんは優しく微笑みながら僕にこう言ってきてくれた。


「うん、ありがとう。そう言ってくれると私も凄く嬉しいよ。でもそんな細かい所にも気づいてくれてる人がいたなんて……ふふ、それは凄く嬉しいな」

「はい、まぁ僕もそれなりに冒険者をやってる身ですからね。頑張ってる冒険者だったら一目見たら僕はすぐにわかりますよ。……って、あ、すいません。年下なのに何だか上から目線みたいな事を言ってしまって……」

「ううん、そんな事ないよ! 私はユウ君にそう言って貰えて凄く嬉しかったからね! だから本当にありがとね、ユウ君! これからも頑張って冒険者を続けていくよ!」

「はい、それなら良かったです! それじゃあこれからもお互いに頑張っていきましょうね!」


 という事で僕達はお互いに笑いながらそんな約束をしていった。何はともあれルリさんの表情が笑顔になって本当に良かったよ。


「あははー……って、あ、そうだ。そういえば凄く今更なんですけど、冒険者ランクってどうやったら調べる事が出来るんですかね? せっかくそんなシステムがあるんだったら僕も調べてみようかなって思うんですけど」

「あぁ、ランクに関しては冒険者ギルドですぐに調べる事が可能だよ。あ、それじゃあせっかくだしさ、良かったら今から一緒に冒険者ギルドに行ってみない?」

「えっ? ルリさんも一緒にって……い、良いんですか!? 僕みたいな一般人と一緒に行っても!?」

「あはは、全然大丈夫だよー! そもそも私だって別に芸能人とかなわけじゃないしね。私だって一般人だからね。それにこんな低階層にワイバーンが出現した事はギルドに報告しないといけないしね。だからお互いにギルドに用事があるわけだしさ、良かったら一緒にギルドに行こうよ?」

「は、はい、わかりました! それじゃあ是非ともご一緒させてください!」

「うん、オッケー! それじゃあ一緒に行こう!」


 という事でこの後はルリさんと一緒に冒険者ギルドに向かう事になった。まさか推しの配信者と一緒に行動出来るなんて……こんなの夢みたいだよ!

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