22話:改めてルリちゃんから自己紹介をされていく
そしてルリちゃんは配信を閉じてからすぐに僕の方に顔を向けてこう言ってきた。
「えっと、それじゃあ私の事は知ってると思うんですけど、改めて自己紹介させてください! 私は如月瑠璃と言います。高校三年生の18歳です。先ほどは助けて頂いて本当にありがとうございました!」
「あ、ご、ご丁寧にありがとうございます! え、えっと、僕は沢城悠と言います。高校一年生の男子です。あ、それと僕の方がルリちゃ……じゃなくて、ルリさんよりも年下なんで、タメ口で喋りかけて貰って大丈夫ですよ!」
「あ、そうなんだね! うん、わかった、それじゃあユウ君って呼ぶね! それじゃあ改めてさっきは本当にありがとう! ユウ君は私にとっての命の恩人だよ!」
「えっ!? って、あ!?」
―― ぎゅっ……
そう言ってルリちゃ……じゃなくて、ルリさんは僕の手をぎゅっと握りしめながら満面の笑みを浮かべてきてくれた。それは本当に凄く可愛らしくて素敵な笑顔だった。
(え……僕、ルリちゃんと握手してるんだけど!? や、やばい、ルリちゃんの手ってすごく柔らかいし、それに良い匂いもするんだけど!?)
急に推し配信者に手を握られて僕の脳内は完全にテンパってしまっていた。でも僕は脳内で滅茶苦茶にテンパりながらも、何とか冷静なフリをしてルリさんにこう言っていった。
「い、いえ! そ、その、僕もルリさんの事を助けられて本当に良かったです! と、というかこちらこそすいません! そ、その、ルリさんの配信中に移り込んでしまって……ルリさんやリスナーの皆さんを不快にさせてないか本当に心配です……」
「いやいや! そんなの私は全然気にしてないし、私のリスナーさん達も全然気にしてないから大丈夫だよー。だからユウ君はそんな顔しなくて大丈夫だよ!」
「そ、そうですか。そ、それなら良かったです」
ルリさんは笑みを浮かべながらそう言ってきてくれた。どうやら怒ってないようなので僕はホッと一安心していった。
こういうの配信荒らしみたいな行為を嫌う配信者は凄く多いと思うから、ルリさんが怒って無くて本当に良かったよ……。
「それにしてもユウ君って凄く強いんだね! 冒険者ランクはどれくらいなの?」
「え? 冒険者ランク……ですか? え、えぇっと……?」
そんな感じでホッと安堵していってると唐突にルリさんはそんな事を尋ねてきた。でも僕は“冒険者ランク”なんて言葉は聞き覚えがなかったのでキョトンとした表情を浮かべていってしまった。
「あれ、ユウ君は冒険者ランクって知らないの? それじゃあもしかしてユウ君は初心者なのかな? いやでもワイバーンを倒せる子が初心者なわけないもんね? うーん、どういう事なんだろ……?」
「?」
すると僕の反応を見てルリさんもキョトンとしながらぶつぶつと何か呟きだしていった。
「え、えぇっと、すいません。もしかしてそれって新しい冒険者システムだったりしますかね? 実は僕は都内出身ではなくて今日は田舎から旅行で遊びに来たんです。だから僕は田舎の冒険者なので新しい冒険者システムみたいなのがあったとしても知らない事も多いんですよね……」
「あー、そうなんだ! 確かに結構最近に導入されたらしいから、田舎の方だとまだ浸透してないシステムなのかもしれないね。それに興味無い人はそういうランクシステムはどうでも良いって思うかもしれないシステムだしね」
僕がそう言っていくとルリさんは頷きながら納得していってくれた。そしてそのまま僕に向かって続けてこう説明をしていってくれた。
「うん、それじゃあ私が軽く説明してあげるね! 冒険者ランクってのは、まぁ簡単に言うと冒険者としての実力を測るものなんだよ!」
「冒険者としての実力を?」
「そうそう。ほら、今まで冒険者っていうのは全員一括りにされてたでしょ? 具体的に言えば何十年も冒険者をしてるベテランさんも、つい最近始めたばっかりの新人冒険者も全員まとめて“冒険者”っていう括りにされてたでしょ?」
「あぁ、はい。確かにそうですね」
昔から冒険者には『冒険者は老若男女問わず全員が対等の存在だ』という教えがある。だから僕を含めて昔から冒険者をしている人達はそういう平等精神を持って冒険をしている人が大半だと思う。
「うん、そうだよね。でも最近はダンジョン配信ブームが起きてさ、昔と違って若い冒険者が爆増してきたんだよ。それでちょっと前に若い冒険者達が中心となって冒険者のランク制度を設けてくれってギルドに提案をしていったのよ」
「へぇ、若い人達が中心になってそんな制度を要求したんですか? でも何でそんな提案をしていったんですかね?」
「やっぱり自分の強さの指標になるものが欲しいからだよ。まぁ一種の承認欲求っていう感じだね。例えば自分はB級ランクですとか、A級ランクですって名乗れる方がわかりやすく強さを伝えられるでしょ? それでそんな提案をする若い冒険者が凄く沢山いたという事で、冒険者ギルドの方で冒険者の強さの指標を決めていくっていう方針になったんだ。それが冒険者ランクなの。私が冒険者になった頃に導入されたらしいから……まぁ大体1年ちょっと前に導入されたんじゃないかな?」
「な、なるほど。そういう理由でランクシステムが導入されたんですね。全然知らなかったので教えてくれて助かります!」
ルリさんは丁寧に俺にそう説明をしてきてくれた。どうやらランクシステムとは最近導入されたシステムらしい。僕はそんなシステムは全く知らなかったので一つ勉強になった。
「うん。それでランク制度は冒険者として今まで稼いできた魔石の入手量であったり、討伐したモンスターの称号によったり、使える魔法の種類とか複合的な評価基準で決まるんだ。まぁでも別にランクが決まったからといって何か称号が貰えたり報酬が貰えるわけじゃないから、あくまでもこれは自分の現状の強さの指標って感じだね。自分のランク帯を知って、今自分がどこら辺の強さにいるのかっていうのを知る感じだね」
「へぇ、そうなんですね。何だかそれって対人ゲームのランクシステムみたいな感じですね! プラチナ帯とかマスター帯みたいなそんな感じに分かれてるんですか?」
「あはは、確かにゲームみたいな感じだよね! 冒険者のランク帯に関してはS級~E級にわかれてるんだよ。今の若い冒険者達はこのランク帯で上位に入るのを目指して頑張ってる子が多いって感じだね」
「なるほど、今はそういう指標を見ながら冒険者として頑張ってる人が沢山いるんですね! 確かに自分の強さの指標としてランクシステムがあるとわかりやすそうですもんね!」
「うんうん、そういう事なんだよ!」
僕がそう言っていくとルリさんは笑みを浮かべたままそう返事を返してきてくれた。
そしてルリさんの話を聞いてると僕もランクシステムにちょっとだけ興味が出てきた。そういえば自分のランクはどうやって調べられるんだろう?




