17話:ルリちゃんと遭遇する(スザク視点)
金曜日の夕方。俺は冒険者ギルドを訪れて新しい武器や防具などを物色していっていた。これらの新しい武器を使ってモンスターを試し切りする配信でもしていこうかな?
「ふんふんふ~ん……って、うん?」
そんな事を考えながら新しい武器の物色を続けていってると、ふいに俺の傍を通り過ぎていくめっちゃ可愛い女の子を見かけた。
これは是非ともナンパするしかないと思って武器の物色を止めてその女の子に近づいて行ったんだけど、でもよく見るとその女の子は……。
「って、あぁ、ルリちゃんじゃーん。おっすー」
「え? って、あぁ、スザクさん。お久しぶりですー」
「うんうん、久しぶりー! ルリちゃんとは先月のダンジョンライバー合同コラボで会ったのが初めてだったよね? いやー、あのコラボめっちゃ面白かったよね!」
「はい、そうですね。スザクさんにはダンジョンライバー合同コラボで凄くお世話になりました。それと沢山のライバーさんとお話が出来て凄く楽しかったです」
「うん、そうだね。俺も沢山の配信者と知り合いになれて本当に楽しかったよー!」
そんな感じで俺とルリちゃんは先月に一緒にやった合同コラボの話をしながら盛り上がっていった。
という事で改めて今目の前にいる女の子の名前は如月ルリという高校三年生の冒険者だ。冒険者歴は大体1年ちょっとだったはずだ。
そして今の話でわかるようにルリちゃんも俺と同じくダンジョン配信活動もしている。ルリちゃんの冒険者ランクはCランクなので俺よりも冒険者ランクは下なんだけど、チャンネル登録者は200万人を越えてる超人気の配信者だ。
俺のチャンネル登録者数はまだ80万人しかいないので、正直何とかしてこのルリちゃんの人気を俺にもあやかりたいものだ。
「あ、それで? 今日は冒険者ギルドに来てどうしたの? もしかしてダンジョンから帰ってきた所とかかな?」
「あぁ、はい、そうです。さっきまで東京郊外にある“アストルフォ”に行ってたんです。それでアイテムがいっぱいになったんでギルドに預けに来た所です!」
「え、アストルフォ? あそこって強いモンスター全然いないし、レアアイテムも全然落ちないハズレの雑魚ダンジョンだよ? あんな不人気ダンジョンにさっきまで行ってたの?」
「あはは、まぁ不人気ですけど色々と楽しいダンジョンですよ! 実は今日だけじゃなくてここ最近は毎日アストルフォに通ってるんです。ふふ、今の私のお気に入りダンジョンなんですよー」
「ふぅん? そうなんだ?」
よくわからないけど、ここ最近のルリちゃんは東京にあるダンジョンで一番の不人気ダンジョンであるアストルフォに毎日通っているらしい。
アストルフォは東京郊外にあるために交通の便が悪いので行くのが大変だし、ダンジョンもかなりショボいから人が全然来ない事で有名だ。でもそんな不人気ダンジョンでルリちゃんは一体何をやってるんだろう?
「……って、あ、そうだ。そういえば先日は晩御飯のお誘いをして貰ったのに行けなくてすいません。あの日はどうしても外せない用事があったので……」
「うん? あぁ、いいよいいよ。当日に誘っちゃった俺も悪いんだし、また日を改めて誘うよ」
「はい、わかりました」
ルリはそう言って俺に向かって頭を深々と下げながらお辞儀をしてきた。なので俺は笑いながら大丈夫だよと言っていった。
まぁそもそもあれ以降色々な女とオフパコしまくってるから性欲もちゃんと発散出来ているので問題はないからな。もし発散出来てなかったら若干キレてたかもしんないけど。
(いやー、それにしてもルリちゃんってマジで礼儀正しくて良い子だよなー)
ルリちゃんの見た目は凄く明るい陽キャなギャルっていう感じなのに、ちゃんと年上に対してはしっかりと敬語で喋って来る。そういう所がしっかりとしているのは素晴らしい。
あと個人的に“礼儀正しいギャル”って性癖にドンピシャ過ぎるわ。だからこそこういう女の子とは是非ともオフパコしたいんだよなー。
(……って、あ、そうだ! めっちゃ良い事を思いついた!)
その時、俺はある事を閃いたのでそれをルリちゃんに提案していってみた。
「あ、そうだ! 良かったらさ、また今度一緒に俺とコラボしない?」
「え? コラボですか? また複数人で合同コラボするって事ですかね?」
「いやいや、そうじゃなくてさ、今度は俺とルリちゃんだけで一対一のコラボ配信をしたいなって!」
という事で俺はルリちゃんに向かってそんな提案をしていった。ルリちゃんのような超人気配信者とコラボ出来ればチャンネル登録者数が増えるのでかなりやり得なイベントだ。
そしてルリちゃんと一対一でコラボ配信をする事になれば色々と打ち合わせとかする事になるだろうし、その合間にラブホにつれ込んだりすればオフパコ出来るはずだ。
いやー、こんな可愛いギャルなルリちゃんとオフパコが出来て、さらにコラボ配信で視聴者を増やす事も出来るなんてマジで最高過ぎる名案を思い付いちゃったな!
「え? スザクさんと二人きりでコラボ配信をですか?」
「うん、そうそう! 俺達って結構人気あるから一緒に配信したらリスナーの皆が喜ぶと思うんだよね。それにほら、ルリちゃんって今冒険者ランクはCランクでしょ? だからBランクの俺がコーチングするダンジョン配信とかどうかな? 何だかそれめっちゃ面白そうじゃない?」
続けて俺はそんな提案をしていってみた。我ながら結構面白そうなコラボ案だと思う。
ちなみにコーチングとは名前の通り冒険者の指導する人の事だ。ルリちゃんの冒険者ランクはCランクなので、Bランクの俺がコーチングをするというのは合理的な話だと思う。
「あー……そう言って貰えるのはありがたいんですけど、でもすいません。しばらくはダンジョン攻略とかランク上げはしないつもりなので、コーチングコラボに関しては今回はちょっと遠慮させてください」
「……え? そ、そうなの?」
俺はめっちゃ良いコラボ案だと思ったんだけど、でもルリちゃんにはまさかのコラボ案を却下をされてしまった。
いや、まぁ確かにクソショボいダンジョンのアストルフォに毎日通ってる時点でダンジョン攻略やランク上げをしようとしてる感じは全くなさそうだったけどさ。
「えぇっと、でもダンジョン攻略やランク上げを全くしてないなんて……それじゃあ今はルリちゃんって冒険者として何をやってるの?」
「はい、実は最近から調合のレベル上げを始めていってるんですよ。それで調合に必要な薬草とか鉱石を採取しにアストルフォに行ってるんです。あのダンジョンはモンスターが弱いので採取や採掘が凄く捗るんですよねー。という事で調合のレベリングが一通り終わったらまたコラボを誘って頂けたら嬉しいです!」
「え? ちょ、調合?」
ルリちゃんの口から最近聞いた忌まわしいワードが飛び出してきたので俺はちょっとだけビックリとしてしまった。
「? 私何か変な事言いましたか?」
「い、いや、調合って……あの古びたシステムの事でしょ? あんなの今の若い人達は誰もやってないしょうもないクソシステムだよ? そんな事やっても冒険者として強くなったりはしないからかなり無駄だよー?」
「え? そうなんですか?」
「うん、だってそもそも薬草を調合してポーション薬を作るくらいなら店で買った方が遥かに簡単じゃん? それにルリちゃんって配信とかスパチャでだいぶ金稼いでるでしょ? 所属してるライバー事務所にマージンが引き抜かれてるとしても相当の額貰ってるでしょ??」
「え? ま、まぁ、はい。それなりにお金は事務所から貰っていますけど……」
「あはは、やっぱりね。それなら調合するよりも金でアイテム買った方がコスパもタイパも遥かに良いじゃん! って事でそんな無駄な事やってる暇があんなら俺とコーチングコラボした方がよっぽど冒険者の成長に繋がるよー? あはは、だから一緒にコラボ配信しようよー! ね、いいでしょー?」
「……」
俺はルリちゃんに笑って貰おうと思って軽くふざけた感じの態度を取りながらルリちゃんにそう言ってみた。
しかし俺の予想に反してルリちゃんはちょっとだけ顔をムッとさせながら俺にこう言ってきた。
「……まぁ確かに、スザクさんの言う通り調合はコスパやタイパは悪いからやるだけムダなのかもしれませんけど、でもやっぱり私は冒険者になったんだから出来る事は何でもやりたいと思うんです。それに楽な事ばかりしてても冒険者としての実力は上がらないんじゃないですかね?」
「え? る、ルリちゃん?」
「それに世の中には病気や怪我をしてて冒険者になりたくてもなれない子だって沢山いるんですよ。だから私はそういう子達に向けて、私は配信者として冒険者が出来る事は全て見してあげたいと思っているんです。それが配信者として私のやるべき事だと思っているので」
「は、はぁ?」
ルリちゃんはムッとした表情のまま淡々とした様子で俺にそう言ってきた。何だか俺に説教をしてくる感じがしてきて無性にイラだってきてしまった。
するとルリちゃんは俺が若干苛立ってる事を察したようで、続けて俺にこう言ってきた。
「ですので、スザクさんの冒険者としての考え方が私の考えとは合わないようでしたらすいませんが今回のコラボは辞退させてください。それでは失礼します」
「え……って、えっ? あ、ちょ、ちょっと!」
そう言ってルリちゃんはペコリとお辞儀をしてから俺の元から去っていってしまった。俺はその後ろ姿を見つめながら……。
「……っち。何だよあれ。ブスな対応しやがって……」
俺は舌打ちをしながらそんな事を呟いていった。あの女……ちょっとチャンネル登録者数が多いってだけで調子乗ってんな。マジで腹立つわ。
ってか調合のレベル上げなんかよりもモンスターを倒して冒険者としての強さを引き上げる事の方が遥かに大事だっていうのに、それをあのブス女は全然理解してないようだ。マジで冒険者として失格だろ。
「……はぁ、仕方ねぇ。それじゃあ先輩冒険者として、ちょっと痛い目に合わすとするかなぁ……!」
ついさっきあのブス女はアストルフォに毎日行ってると言ってた。
そしてそのアストルフォは交通の便が悪いのと雑魚モンスターやゴミアイテムしか落ちてないというショボすぎるダンジョン構造のせいで、滅多に人が来ない過疎ダンジョンになっているんだ。
という事は今のうちにアストルフォに罠をしかけておけば……それに引っかかるのは当然あのブス女という事になるよな?
それであのブス女が手や足の一本くらい大怪我でも負ってくれれば、そしたらアイツは冒険者として強くなった方が良いと理解して俺にコーチング依頼をしてくるだろう。
そしたら俺は優しくあのブス女の事をコーチングしてやりつつ、そのまま身体も一緒に味わっていこう!
あはは、これぞ一石二鳥というやつだな!




