16話:浅香と一緒に晩御飯を食べていると
とある日の晩御飯時。
今日はお婆ちゃんは町内会の集まりがあるからそちらに参加している。だから今日は自宅で浅香と二人で晩御飯を食べる事になった。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
「そっか。あ、今日の晩御飯はお兄ちゃんの大好きなハンバーグだからね。沢山作ったからいっぱい食べてね」
「うん。いつもありがとね。浅香」
浅香は僕の顔を見ながらそう言ってきた。もしかしたら僕の顔がどんよりとしていたので浅香は気を使ってくれたのかもしれない。
僕がダンジョン実況、配信界隈から引退した事は前に伝えている。それを伝えた時は浅香も僕に対して気軽に実況動画を作ればと言った事に負い目を感じたようだけど、でも浅香には何も非は無い事はしっかりと伝えた。
まぁそれにやっぱり僕にはダンジョン配信とかそういうのは才能が無かったという事がわかって逆にスッキリもしたよ。だからこれでスッパリと引退出来て良かったと思った方が良いよね。
「よし、それじゃあ冷めない内に食べようか、浅香」
「うん、そうだね。それじゃあ、いただきます」
「うん、いただきます」
という事で僕達は両手を合わせてそう言ってから晩御飯を食べ進めていった。そして僕達はそのままお互いに学校での出来事とか面白かった話とかをしながらホンワカとご飯を食べ進めていった。
しかしそんな晩御飯時に……。
―― プルルルル……プルルルル……
「あれ? こんな遅い時間に電話なんて珍しいね? ちょっと電話に出てくるね、お兄ちゃん」
「うん、わかったよ」
そう言って浅香はテーブルから立ち上がって玄関前に置かれてる固定電話を取りに行った。
「はい、もしもし、沢城です……って、あぁ、お母さん。久しぶりだね。どうしたの?」
どうやら家に電話をかけてきたのはお母さんからのようだ。僕達の両親は海外で仕事をしている多忙な社会人だ。そんなお母さんから電話が来るなんて珍しいな。
「うん、うん……って、えぇっ!? ほ、本当に!? う、うん、わかった! それじゃあお兄ちゃんにも伝えておくね! うん、わかった! それじゃあまたね!」
「うん?」
するとお母さんと電話をしてる浅香のテンションは一気に高まっていってるようだった。そして高いテンションのまま浅香は玄関からリビングの方に急いで戻ってきた。
―― ドタドタドタッ!
「お、お兄ちゃん! 凄いよ! 重大ニュースだよ!!」
「重大ニュースって……どうしたの浅香? お母さんから電話だったようだけど?」
「う、うん、そうなんだよ! あのね、お母さん達が来週の土日に東京に来るんだって! それでせっかくだから土日に家族皆で東京に集まらないかってさ! 東京だよ東京! 大都会だよ!!」
「え……って、えっ!? と、東京!? だ、大都会じゃん! ぼ、僕達が東京に行けるの!?」
浅香はとても興奮としながら先ほどの電話内容を伝えてきてくれた。その話を聞いた僕も当然のように浅香と同じくテンションが高まっていった。
だって僕も浅香も東京なんて一度も行った事がないからね。だからそんなの興奮だってするよ。大都会の東京とか……凄くワクワクすぐ響きだからね!
「で、でも一体どうして東京に行ける事になったの? お母さん達って今は海外の会社で働いてるでしょ? 東京で何か用事でも出来たのかな?」
「うん、お母さんとお父さんのお友達が東京で結婚式をするからそれに出席するんだって。それでお母さんが短期間だけどせっかく日本に帰ってくるんだし皆で東京にプチ旅行に行くかって提案してきてくれたんだよ! だからお兄ちゃんとお婆ちゃんに来週の土日に用事がないか聞いといてくれって言われたんだ!」
「へぇ、それはお母さん太っ腹だね! うん、僕は用事何にもないよ! これは是非とも東京に行きたいなー!」
「だよねだよね! それじゃあお婆ちゃんにも連絡しておくね! 皆で東京に行こうって!!」
「うん、わかった!」
という事でちょっと前に辛い事があった僕だったけど、そんな辛い事を軽く吹っ飛ばす程に凄くワクワクするイベントが急遽入ったのであった。
◇◇◇◇
そんなワクワクとする話を聞いてから1時間くらいが過ぎた頃。
浅香はお母さん達に東京旅行に行く事の連絡をしてくれた。ちなみにお婆ちゃんは来週の土日は町内会の温泉旅行があるからそっちに参加するとの事だ。どうやらさっきの町内会の集まりはその温泉旅行についての話だったようだ。
お婆ちゃんと一緒に旅行に行けないのは残念だけど、久々に家族四人で観光とか楽しんできなさいって優しく言ってきてくれた。
(あとは東京のお土産も沢山買ってきてねって言われたから、お婆ちゃんのためにも美味しそうなお菓子をいっぱい買ってきてあげよう!)
という事で来週の土日に僕と浅香は東京に遊びに行く事がこれで決定した。東京には土曜日の朝に新幹線で向かう事になっている。
そして東京に着いたら日中は各自で自由に東京観光をしつつ、夜は家族そろって都内のレストランにでも行って美味しいご飯を食べようという事になった。これは来週のが本当に凄く待ち遠しいなー!
「ふふ、凄く楽しみだなー。あ、そうだ。そういえば浅香は東京についたら日中は何処に行く予定なの?」
「私は都内のデバートとか服屋とか色々巡る予定だよ! ここらへんじゃ買えないようなデパコス沢買いたいし、友達とかにも東京で買ってきて欲しい物とか頼まれたし一日中買い物してるよ。お兄ちゃんはどうするの?」
「なるほど、流石はオシャレな浅香だね。うーん、それじゃあ僕は……まぁせっかくだし東京のダンジョンに行ってみようかな?」
「え? ダンジョンに? その……大丈夫なの?」
僕がそう言っていくと浅香はちょっとだけ心配そうな顔をしてきた。まぁもちろん浅香が心配そうな顔をする気持ちはわかる。でも……。
「うん、全然大丈夫だよ。動画投稿者と配信者は辞めたけど、冒険者としてはこれからも頑張って続ける予定だからね。それにやっぱり冒険って楽しいしね。だから大丈夫だよ、浅香」
僕は満面の笑みを浮かべながら浅香に向かってそう言っていった。冒険が楽しいっていうのは本心だからさ。
「そっか。うん、そう言ってくれるなら安心したよ。それじゃあ東京のダンジョンも楽しんでいってみてね、お兄ちゃん」
「うん、ありがとう、浅香」
そう言って浅香はホッと安堵しながら笑みを浮かべ返してきてくれた。やっぱり浅香は家族思いで凄く優しい妹だよね。
という事でその後は浅香と一緒に東京の観光スポットとかを楽しく調べていきながら、近い内に行く事になる初東京に期待で胸を膨らませていった。




