13話:なんか僕のチャンネル荒らされてるんだけど……
翌日の夕方。
「ふぅ、今日も学校疲れたなぁ」
僕はそう言いながら自分の部屋で制服を脱いでいった。今日は学校で中間テストがあったのでいつもより疲れてしまった。
あと昨日はスザクさんという有名配信者のライブを見ながら動画作りの勉強もさせて貰ったりしたので、その疲れも今日はまだ残っているようだ。
「それにしても昨日はスザクさんとか周りのリスナーさんにも凄い迷惑をかけちゃったよね……謝りたいけど、でもブロックされちゃったしな……」
昨日は色々と大変な一日だった。スザクさんの事を凄く怒らせてしまったんだよね……。
その事について僕は一日中ずっと考えたんだけど、やっぱり初対面の人に不躾にあんな事を言っちゃった僕が圧倒的に悪いよね。
お婆ちゃんにも人と交流する時は礼儀を重んじなさいって言われてきたのに、それをちゃんと遂行出来なかったのは駄目だと思う。
だから今回の事はしっかりと反省して、いつかスザクさんに謝る機会があればちゃんと謝っていこう。
「よし、それじゃあ今回の事はしっかりと反省する事にして、今日は久々に配信でもしようかなー……って、おっ! 今日は久々に通知マークが来てる!」
僕は着替えを終えてからパソコンを起動して自分のチャンネルに飛んでいってみると、チャンネルの上部に通知マークが表示されている事にすぐ気が付いた。
この通知マークはチャンネル登録者が増えた時とかコメントが書き込まれた時に通知されるやつだ。形状は鈴のマークになっている。
この通知マークをクリックすると通知内容を全て確認する事が出来る。そして通知内容を確認し終えると通知マークは消えるという仕様だ。
まぁでも僕のチャンネルは物凄く過疎ってるから、この通知マークが届く事なんて滅多に無いんだけどね……。
だから僕はこの通知マークを今までほぼ見る事なく生活してきてたので、久々に通知マークが表示された事にちょっとだけテンションが上がった。
「通知マークなんて本当に珍しいなぁ。いつもは通知マークなんて全然来ないのに……って、えぇっ!? な、なんでこんなに大量の通知マークが来てるの!?」
僕は画面上に映し出されている通知マークの総数を見て思いっきり驚愕していった。
通知マークが表示されるのはサイトの仕様上、最大で『+99』までだ。それ以上の通知マークはカンスト状態となって『+99』で保持され続ける。
そして今僕のチャンネルには……なんと『+99』の通知マークが表示されていた。という事はつまりたった一日間で僕のチャンネルに99件以上もの通知マークが送られてきたという事だ。
「な、なんでこんな事になってるの!? 僕の動画か何かがバズったりしたのかな? いや、でもそんな大バズリするような動画は全然ないんだけど……」
僕は混乱しながらそう呟いていった。だけどもしかしたら何かしらの動画がバズって沢山の人に見て貰えるようになったのかもしれない。
そして僕が現時点で投稿してる動画はほぼ全てが初心者向けの解説動画ばかりだ。という事は……。
「という事は……もしかしたら初心者さんが見に来てくれるようになったのかな?」
僕はここまでずっと浅香のアドバイスを貰って初心者向けの解説動画とか色々と動画投稿を頑張ってきた。だからその成果がようやく出て初心者の人達が見に来てくれるようになったのかもしれない。
「はは、もしそうだったら本当に嬉しい限りだよね。よし、それじゃあ早速コメントを確かめていってみよう……って、え……」
僕は嬉しくなって笑みを浮かべながら早速通知マークをクリックして通知内容を確認していってみた。しかしその通知内容は……。
『マジでつまんねww』
『喋り方マジで不快。消えろ』
『ゴミカス実況者』
『才能なさすぎ。早く辞めてくれ』
『ゴブリンとかスライムしか倒せねぇとか雑魚w』
『キモすぎ。タヒネ』
……
……
……
「え……な、なにこれ……」
その通知マークは全て僕に対する誹謗中傷のコメントだった。それはただひたすらに酷い誹謗中傷コメントが99件以上も書き込まれている事を知らせるものだった。
「そ、そんな……なにこれ……それにこんなにも酷い事を他人に言えるなんて……こ、こんなの……酷すぎるよ……」
もちろん僕だって今までに家族とか冒険者の先輩とかから何度も注意や叱られたりした事は何度だってある。
だけどそれは僕のためを思って皆注意や叱ったりしてくれたんだ。だから僕は注意してくれたり叱ってくれた人達には物凄く感謝をしている。
「こ、こんなの……こんなの酷すぎるよ……ぐす……」
だけどここまで理由が何も無い誹謗中傷や暴言を吐かれた事は一度たりとも無い。しかもここまで酷い誹謗中傷や暴言をモロに沢山見てしまった事で……僕は何だか急激に悲しい気持ちが込み上がってきた。
そしてこんな悲しい思いをしてまで……僕はダンジョン配信者を続けていきたいとは思えないよ……。
「うぅ……ぐす……うぅ……」
僕はそう思いながら一人で静かに涙を流していった……。




