101話:キングワイバーンからドロップ品が……!
「……ふぅ、でも魔力も全部使い切ったし流石にちょっと疲れたなぁ。って、あれは……?」
キングワイバーンを倒し切った後。僕は一息付きながら空を見上げていると、先程までワイバーンが飛んでいた付近にキラキラと輝くモノが現れていた。
「うん? あれはキングワイバーンからのドロップ品のようだけど……って、あぁっ!? あれはまさかっ!!」
―― タタタッ!!
僕はそのドロップ品が何なのかすぐに気が付いた。だから僕はドロップ品が地上に落ちて壊れてしまわないようにするためにも、全力で走ってそのドロップ品が地面に落ちる前にキャッチをしていった。
僕はキャッチしたそのドロップ品を改めて見ていった。そのドロップ品は綺麗なクリスタルで出来た小瓶だ。そして中には綺麗な青色の液体が入っている。これはまさしく……。
「こ、これは……!! ル、ルリさん!!」
「えっ……えっと……ど、どうしたのユウ君……?」
僕はすぐさまルリさんに声をかけていった。しかしルリさんは完全に満身創痍となっており、地面に倒れて身体を動かす事が出来ない状態になっていた。
という事で僕は急いでルリさんの元に駆け寄って行き、今さっきドロップしたアイテムをルリさんに見せていった。
「こ、これを見てください! ルリさん!!」
「えっ? わぁ、何だか凄く綺麗なクリスタルの入れ物だね? でもこれは一体……?」
「な、何を言ってるんですかルリさん!! これはアレですよ!! 最高峰のレアアイテムで、今までルリさんがずっと探し求めていた万能の霊薬ですよ!!」
「え……って、えぇえええええっ!? こ、これがエリクサーなのっ!?」
ルリさんは今までで一番驚愕とした表情を浮かべながらそのクリスタルの小瓶を見つめ始めていった。
そう、このクリスタルの小瓶に入った液体こそが……ルリさんが今までずっと探し求めていたエリクサーなのであった。
「はい、そうなんです! エリクサーがドロップするなんて本当に物凄い奇跡的な確率ですよ! そしてこれで雪人君も助かりますね! という事で……はい、どうぞ!」
という事で僕は満面の笑みを浮かべながらルリさんにエリクサーを手渡していこうとした。だけど……。
「え……えっと、その……でも……」
「? どうしましたルリさん? 表情が暗いですよ?」
「い、いや、だってそのさ……キングワイバーンを倒したのってユウ君だから、キングワイバーンからドロップしたアイテムはユウ君のモノでしょ? だからそれを貰う権利は流石に……私にはないかなって思ってさ……」
「な、何を言ってるんですか! そんな事を言わずに受け取ってくださいよ!」
「い、いや、でもそのさ……ユウ君だってわかってると思うけどエリクサーはとてつもない価値があるんだよ? そしてそのエリクサーの所持者はキングワイバーンを倒しきったユウ君のモノなんだよ。だからそんなのを私に無償であげるなんて……そ、それこそ絶対に駄目だよ……」
ルリさんは表情をうんと暗くしながらそう言ってきた。エリクサーの価格とても莫大な値段で取引されているというのは当然僕も知っている。一生遊んで暮らせる程の価格で取引されている最高峰のレアアイテムなんだ。
そんな莫大なお金で取引されるエリクサーをタダで譲る訳にはいかないとルリさんは思っているんだ。
なんともルリさんらしい答えだと思うけど、でも……。
「ルリさん。何を言ってるんですか?」
「えっ? な、何をって……」
「ルリさんが言ったように僕がキングワイバーンを倒したというのは事実です。でもキングワイバーンを僕が倒しきれたのは……ルリさんが風属性の上級強化魔法を僕に使ってくれたからですよ?」
「そ、それは……でもそんなの……ユウ君がいなかったら私の魔法なんて……何の役にも立たなかったわけだし……」
「そんな事ないですよ。だってルリさんがその上級強化魔法を覚えていたからこそ、ルリさんは僕が来るまで生き伸びる事が出来た訳じゃないですか。そしてあの短期間の修業期間で風属性の上級強化魔法を覚える事が出来るなんて、それは今まで沢山修行を頑張ってきた証拠じゃないですか。だから本当にルリさんは誰よりも凄い冒険者なんです! ルリさんはその事をしっかりと誇って良いんですよ!」
「え、あっ……」
―― ぎゅっ……!
僕はそう言いながらルリさんの両手をぎゅっと掴んでいき、そのままルリさんの手の中にエリクサーを握りしめさせていった。
「という事でさっきの話に戻るんですけど、キングワイバーンを倒したのは僕というのは正確には違います。あのキングワイバーンを倒したのは……僕とルリさんの二人の力なんですよ! 最後の最後に風属性の上級強化魔法を使ってくれてありがとうございました、本当に素晴らしくて最高の魔法でした! だからそのお礼も込めてこのエリクサーはルリさんに差し上げますよ!」
「ユ、ユウ君……でもその……やっぱりこのエリクサーはユウ君が持つべきだと思うよ。確かに私は強化魔法は使ったけど、でもキングワイバーンを倒したのはユウ君なのには変わりないんだからさ……」
「はは。ルリさんは結構強情な所がありますよね。まぁ冒険者たるもの我が強いのは良い事ですけどね。うーん、まぁそれじゃあ……よし、わかりました! それじゃあ今回はこのエリクサーを上げる代わりに僕からのお願いを一つ聞いてくれませんか?」
「え? お、お願い? そ、それって……一体何をかな?」
「はい、僕からルリさんへのお願いは……これからも一緒に楽しく冒険活動をしようっていうお願いです!」
「え? そ、それって……別に今と何も変わらなくないかな?」
「あはは、そうですね。でも僕にとってその変わらない出来事っていうのは何事にも変え難いとても大切な時間なんです。ルリさんと一緒に通話をしながら修行をしたり、東京に来て一緒にダンジョン探索したりとか……僕にとってはどれも本当にかけがえのない時間なんです! だからこれからもずっと一緒に……楽しく冒険活動をしていきましょうよ!」
「……ユウ君」
ルリさんはビックリとした表情を浮かべていったんだけど、でもすぐに優しく笑みを浮かべながらこう言ってきた。
「……うん、ありがとう。そう言ってくれて。ユウ君がそう言ってくれて私……すっごく嬉しいよ。私と一緒に過ごしてきた時間がかけがえのない大切なものだって言ってくれて……本当に嬉しいよ。だからその……それじゃあこれからも楽しく一緒に冒険をしていこうね」
「はい、もちろんです! という事でそれじゃあこのエリクサーはルリさんに差し上げます! だからこれで雪人君を救ってあげてください!」
「うん。ありがとう。それじゃあ遠慮なく貰うね。本当に……本当にありがとう。ユウ君」
ルリさんはそう言って僕からエリクサーを受け取っていった。そして暗かった表情からいつも通りの優しい表情に戻ってきてくれた。
(うん、やっぱりルリさんには暗い表情は似合わないよね)
僕はいつも通りの優しい表情のルリさんに戻ってくれて内心ですっごく喜んでいたんだけど、でもそれからすぐにルリさんは含みのある笑みを浮かべながら僕にこんな事を言ってきた。
「ふふ。でもユウ君さぁ……今の喋り方だとさぁ……ふふ、まるで私に愛の告白をしているような感じだねぇ?? ずっと私と一緒にいたいだなんてすっごく愛の籠った告白に聞こえちゃったよー?」
「え……って、えぇっ!? あ、い、いや、ち、違くてっ! ぼ、僕はルリさんと一緒に冒険するのが凄く大好きだというか――」
「えー? それだと私自体の事はそこまで好きじゃないって事なのかなぁ……? うーん、それはちょっと悲しいなぁ……ぐすんぐすん……」
「えっ!? あ、い、いや! そういう事でもなくて!! え、えっと、だからその――」
「あはは、嘘だよ、嘘! わかってるよ。ユウ君はそんな悪い意図はないって事くらいちゃんとわかってるよー」
「えっ!? あ、な、なんだ……も、もうビックリとさせないでくださいよー」
「あはは、ごめんごめんー!」
ルリさんは楽しそうに笑いながらそんな事を言ってきた。どうやら冗談で僕の事をからかっていたようだ。
「ふふ、それじゃあ冗談はここまでにしておく事にして……最後にもう一度改めてになるけど、私を助けてくれてありがとうね、ユウ君。本当にすっごくカッコ良かったよ」
「あはは、ルリさんにカッコ良いなんて言われて凄く嬉しいです。はい、僕もルリさんを助ける事が出来て本当に良かったです! よし、それじゃあルリさんも調子が戻ってきたようですし、そろそろ帰りましょうか?」
「うん、そうだね、皆も心配してると思うし早くアストルフォから帰還しよっか!」
「はい、わかりました!」
という事でお互いに暗い表情をするのはもう止めて笑い合っていきながら、それからすぐに僕達はアストルフォから帰還していったのであった。




