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68 自信が有るかと言えば、全然ありません!

 土曜日になりました。なっちゃいました。私は、中村さんと美穂さん、そして、まあ美穂さんが行くなら来るよねって感じでお姉ちゃんも一緒に証券会社へとやって来ました。


「うわ、何か雰囲気あるね」


 初めて証券会社へと足を踏み入れた中村さんが感嘆の声を上げます。でも、銀行と似たような感じではあるんですけどね。


 そして、受付で名前を伝えると、そのまま応接室へと案内されちゃいました。人数なども事前に伝えていた為、案内されたのは大きめの応接室です。その為、真ん中に中村さんと美穂さんを座らせて私とお姉ちゃんはその両サイドに座りました。


「事前に連絡入れてあるから、多分だけど手続き諸々で美穂さんと中村さんがメインになると思う。私やお姉ちゃんは既に口座もあるし、其処まで手続きはかからないから」


 まあ、私自身は打ち合わせだけですから、具体的な作業がある訳ではありません。その為、今日は何方かと言えば二人の口座開設がメインになるでしょうか?


「メインバンクは同じダイヤ銀行だし、開設自体は直ぐ終わる? でも、日向も今日、一緒に株を買うんでしょ?」


「そうね、美穂が買うし、私も買っておくかな」


 お姉ちゃんと美穂さんが何やら話し始めました。今回の件で二人は色々と話し合ったみたいで、美穂さんのみならずお姉ちゃんも久しぶりに株を購入する事にしたみたいです。


「うわあ、何かすっごくドキドキする」


「初めてだとそうだよね。でも、一度購入の手続きとかしちゃうと、あとは値上がりするまで放置だから」


 私はそう笑いますが、中村さんは思いっきり緊張しています。まあ、株ってどんなに綺麗な事を言っても、博打ですからね。儲かるも儲からないも自己責任です。


「お待たせしました! いやあ、流石は鈴木さんですね」


 証券会社の担当さんは、満面の笑みを浮かべながら開口一番そんな事を言い出しました。


「いえ、たまたま好きなゲームの会社だったので、応援したいなって思って買っていただけです。連絡いただいて吃驚しました」


「ええ、ええ。いやあ、私達も注目していたんですが、ここで一気にきましたねえ」


 私はそう返事をするのですが、明らかに信じていませんね。うんうん、解ってます、解ってますって感じで、これは何を言っても駄目そうです。


「あの、まずは二人の手続きをしたいのですが。この後、投資の話もありますので」


「あ、了解しました。望月君、お願いするね」


 話し込むと長くなりそうな感じですし、買い銘柄の話もあります。買いの手続きは口座が無いと始まらないので、まずは証券用の口座を作らないとです。

 担当さんの合図で、後ろに着いてきていた人が美穂さん達と話し始めました。まあ、そうかなって思っていましたけどね。


「日和、こっちは私が見ているから、貴方は自分のことを進めて」


「了解、お姉ちゃんお願い」


 まあ、お姉ちゃん的にも暇でしょうし、自分では口座開設していないので興味が有るのかな? 二人の横で手続きを興味深そうに見ています。


 そして、私は担当さんとの打ち合わせです。何と言っても今回訪問する事になった切欠はタリホー株の暴騰連絡ですから。


「タリホーの株はまだ放置でお願いします。勝手な予測ですがピークは年末頃だと思うので9月ぐらいからゆっくりと売りに出したいなと。それでも、あまり急がないとはいえ出来れば11月中には売り切りたいと思ってます」


 うん、はっきりと覚えていない弊害ですね。色々考えたんですが、残念ながらピーク時期を覚えていない為、手探りでの売りになっちゃいます。


「なるほど、ピークは年末ですか。来年まで持たないと?」


 担当さんとしては、やはり気になるのは売り時なのでしょう。恐らく我が家以外の顧客もいるでしょうし、何時売ればよいかは非常に気になるところかな。


「そうですね。今後も継続して伸びる可能性も無くは無いとは思うんですが、他メーカーのゲームがヒットする可能性もありますし、年末商戦とかも不安要素なので狙いは其処ら辺かなって思ってます」


 前世知識によってある程度は予想出来るからの後付け知識です。自分でも何言ってるのかなあって思うんですが、これが正しかった時の言い訳にはなりますよね?


「年末商戦まで考慮されますか。確かにゲームなどだと必要な要素ですね。どうしても私達は決算などの数字で見ますから売り時を見誤る事もあります。しかし、そうですか。11月頃ですね」


 担当さんは手元の手帳に何やら書き込んでいます。11月売り切りたいと言っても早々上手く調整できるものではありません。あくまでも目安です。


「今まで投資していた先とは毛色が違いますから。私としても中々判断が難しくて。買が多くて早々に売買が成立しても構わないので」


 私の発言に、担当さんは思いっきり頷いていますが、とりあえず株を売る時期を9月後半から11月に定めました。でも、自信はあるかと言われても、ぜんぜん無いのですが。まあ買った時よりは上がっていると思うので、売り時が遅れてピークを過ぎて損をしても諦めます。


「わかりました。流石に私が何か言えるような立場ではありませんが、鈴木さんの豪運を考えれば大丈夫ですよ! いやあ、本当にあやかりたいです」


 ニッコニコで答えてくれますが、其れで良いのだろうか? 普通はプロとして何かしらのアドバイスが出るのではないでしょうか? 最初の頃から比べても、大丈夫だろうかこの人ってくらい論理性の欠片も無くなってきてません?


 私が若干ジト目になりかけていると、タリホー株の話はもう良いのか話題が一気に変わりました。


「ところで、御姉様方を含め、今回は何処を購入されるご予定ですか?」


 今までの表情から一変、こちらに向けられる視線が非常に鋭くなりました。伊達に今まで投資で稼いできた訳じゃ無い私の判断なので非常に気になるところなのかな。


 美穂さん達の手続きが進んでいるのを横目で見ながら、まずは今回のターゲット株の話をします。


 実際の所、今回購入を決めたニコラ株は、私が既に購入している値段と比べると5倍近くも高くなっているんです。その為、家で銘柄を皆に伝え、現状と今後の予想を説明したら慎重な意見も出て来てはいました。


「アメリカの電気自動車メーカー、ニコラの株を買おうかと思っています。私は既に持っているので買い増しになりますね」


「ほう、ニコラ株ですか。今年に入って値上がりが始まっていますが、皆さんでですか?」


「はい、みんな揃ってですね」


 私が既に購入している1銘柄なので、株価の推移などの資料が用意されていたようです。その資料を見ながら今後の展開などを話し合います。


「今年に入って上がり始めていますが、私達も今後更なる値上がりを予想してはいます。ただ電気自動車が世界に受け入れられるかは、まだまだ不透明な為に判断が難しい所です」


 日本国内において、色々と議論がされています。最近、テレビなどで良く話題になりますが、フル充電における航続距離の問題や、充電に掛かる時間。新たなバッテリーの開発、充電スタンドなどのインフラ、未だ解決しないとならない課題は多く、今後世界で販売していくためにもクリアしなければならない課題は山積しているというのが経済界の判断っぽいです。


「一応、株の購入に関しては新規の二人を優先でお願いします。勿論、売買が成立しないとなので、二人が購入予算に達した所で姉の買いと私の買い増しをお願いしようかと。ところで、売却益を再投資に回してもその分節税に何てなりませんよね?」


 今回のタリホー株売却で、50億以上の売却益が出ると思います。その為、節税という点で考えないとなのですが、残念ながら私個人で出来る節税何てたかが知れているんです。


「残念ながらなりませんねぇ。色々のお客様からご相談を受けるんですが、再投資に回せる額は税金を抜いた残になります。経費という部分で何かご購入されると良いかもしれませんが、何せ億単位になるかと」


「ですよねえ、経費かあ」


 分かっていたんですが、やっぱり無理でした。

 所得としてざっくり25%の4分の1と考えて、12.5億くらい税金で持ってかれちゃいます。うん、貧乏性の私としては、すっごく辛いです。


 ちょっとドンヨリとした気分でいる間に、みんなの手続きが始まりました。そして、投資用の口座に資金を移動します。


「中村様が500万、柴田様が1000万円で宜しいですか?」


 お二人とも結構な金額を入れるみたいです。まあ、株を買うと言っても切りの良い数字になる事は稀ですので、実際には端数が出て来るとは思いますが。


「なんかドキドキするね。流石に暴落しても金額が0になる事は無いって分かってても」


「はい、鈴木さんを信じない訳じゃないんですけど、それでも大損したらって考えますよね」


「思いっきり聞こえているんですけど! プレッシャーが生半可じゃないんですけど!」


 私の言葉に二人は顔を見合わせて笑い出しました。中々の大金ですから冗談を交えないとって所だとは思いますが、未来が変わった今、損をする可能性が0では無いんです。


 担当さんも苦笑いを浮かべながら、ニコラ株の購入手続きへと移行しました。ただ、この際に改めて投資リスクなどの説明をされます。


「そっか、株購入先が倒産すると紙切れになるのか」


「想定していませんでしたね」


 真剣に説明を聞いていますが、説明の中で語られたバブル崩壊の話は、実際に第一線で経験されただけあって具体的で怖くなりますね。


「あくまでも投資はリスクが伴う事をご理解いただければと。それで、鈴木様とお姉さまは今回はいかほどご予定を?」


 お姉ちゃんとは勿論事前に話し合っています。それに、今回購入する電気自動車メーカーはお姉ちゃんでも知っていた会社ですからね。


「私は1億でお願いします」


 お姉ちゃんの言葉に美穂さんと中村さんがギョっとした表情を浮かべました。


「日向? そんなに投資に回して大丈夫なの? 損するかもしれないんだよ?」


「儲かるにしても、同じ比率でも元となる金額で大きく変わるでしょ? であればある程度投資しておこうかなって」


 例えば2倍になるとして、元金が100万円なら200万円にしかなりません。でも、元金が1億だったら2億円と凄い金額になるのです。あくまでも余裕があるならばですが、上がるまで待つという方法が使えるのは強いですね。


「私はどうしようかなあ」


 既にて持ち株が購入時の5倍に膨らんで25億に達しています。その為、ここで中途半端な金額に増額するのも今一つ? それでは幾らにするのかとなると悩みどころです。


「ほら、既に決めて来たんでしょ? 往生際が悪いわよ」


 お姉ちゃんに急かされながら、手元に渡されている現在の評価額を確認しました。

 中村さんが思わずと言った感じで驚きの


「端数は面倒なので、5億でお願いします」


 私の言葉に中村さんと美穂さんが更に驚きを露わにします。それこそ、え? この子何言ってんの? って感じの視線がバシバシと刺さって来ました。


「まあ、鈴木様は今回の売却益もありますし、口座の残高にも余裕がございますから。他の銘柄などは宜しかったですか?」


 確かにタリホーの売却益を考えれば5億なんて余裕ですね。流石に私の口座金額などは口にされませんが、担当さんの様子から美穂さん達は何となく察したみたいです。


「日向が妹ちゃんを心配する訳だよね。そりゃあ警備員付のマンションに引っ越しするわ」


 美穂さんが呟いて、その横で中村さんがウンウンと大きく頷いています。

 私はそんな二人を急かす様に、まずは取引の申請を終わらせるのでした。


 そして、一通りの手続きが終わると、証券会社の担当さんが何かを思い出したかのように鞄からチラシを取り出しました。


「忘れておりましたが、一応ご案内をしておきます。お聞きになっていると思いますが、来年より政府主導でNISA枠という個人対象の非課税枠が作られます。もしご検討される方などがお見えでしたら、ぜひご紹介ください。まだ制度自体は始まっておりませんから、制度説明会を予定しております。此方も宜しければご参加ください」


「あ、何かNISAですか? そういえば、先日テレビでも紹介してました。確か、年金だけでは生活できなくなるから個人投資を促進し老後の安定を目指すでしたっけ? 私や姉は枠は超えるので、あまり気にしてなかったです」


 政府の肝いりで始まるNISAですが、非課税投資枠を使用した少額取引がターゲットになります。その為、そもそも私なんかは対象外ですよね? 今でも値上がりを期待してそこそこ株を購入していますし、株主配当を期待して愛知県に本社のある自動車メーカーの株も購入しています。


「限度額以上の取引がNISA口座では出来ませんので、皆様では使い辛く感じるかもしれませんね。それでも非課税というのは魅力がありますので、もしご検討されますならご連絡ください」


 それぞれセミナーのチラシを受け取って、証券会社を後にしました。


 今回購入したニコラ株は、オーナーの言動なども相まって途中乱高下したりするんですが、それでも確実に価値を高めて行くと思うんです。私の知る限りにおいては、大きな流れの変化は見えていないですし、アメリカの存在感は前世よりも強く感じます。


 まあ、結果が判るのは4、5年はかかると思いますけどね。

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― 新着の感想 ―
この頃は日経平均2万~3万以下くらいでしたかね?伸びそうな銘柄を塩漬け覚悟で押さえてれば現在で日経平均で倍になる日が来ようとはなあ。 そういやコロナショックもあるけど新規組は精神的に乗りきれるかな?逆…
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