カイダン
レブリック伯爵領のトレートル商会の拠点へ戻って来た私は、出迎えてくれた商会員達を労い執務室の椅子に腰を落ち着けていた。
「お疲れ様です、エリー会長」
「久しぶりね、グランツ。
ルノアの様子はどう?」
「妻と少し話していましたが、落ち着いています」
「そう、しっかりと気に掛けていて頂戴ね」
「勿論です」
ルノアは初めて野盗を殺してから、領都に着くまでの間に落ち着いた様だった。
領都に着いてからはグランツ達、親元に帰したが、問題なく乗り越えられている様だ。
「頼んでいた件はどうなっているの?」
「はい、スティア」
「此方が頼まれていた資料です。
既に商会を置く国は選定してあります」
「ご苦労様」
「午後にはルーカス伯爵様との会食をセッティングしてあります」
「分かったわ。それまでにこの資料には目を通しておくわ」
それからいくつかの指示を出した私は、集められた資料に目を通すのだった。
陽が傾き始めた頃、派手すぎないドレスに着替えた私はミーシャが御者をする馬車でミレイと共にレブリック伯爵邸へ向かった。
屋敷に到着すると、使用人に迎えられルーカス様の所へと案内される。
応接室に入ると、ルーカス様に迎えられた。
「久しぶりだな、エリー会長」
「お久しぶりですわ、ルーカス様」
私達はお互いに和やかに挨拶を交わした。
その後、簡単に近況を話し、食事の用意が出来たとの事で場所を移した。
会食で卓を囲むのは私とルーカス様の2人だけだ。
ミレイやミーシャは別室で食事を出して貰っているだろう。
「しかし、君も変わったな」
「あら、どういう事かしら?」
「王国を抜けたばかりの君はもっと張り詰めていただろう?」
「…………そうかも知れませんわね」
確かに最近は以前ほどピリピリとはしていない。
勿論、王国への復讐心を忘れた訳では無いし、奴らから受けた仕打ちや亡命後の対応を思うと腑が煮えくり返って来る思いだが、それとは別に今の生活を楽しんでもいる。
「ですが私の目的は変わりませんわ」
「わかっているよ。
既に派手にやった後だしな」
「ロベルトの件ですか?」
「ああ、王国は未だに対応に苦慮している様だ。
まぁ、アレは半分以上は向こうの自滅と言えなくも無いがな」
「そうですわね。
あの紛争で私も派手に動いたのに未だに王国は接触して来ませんし」
「そこまで手を回す余裕が無いのだろうな。
だが、流石にそろそろ見つかっても不思議では無いな」
「ええ、王国からの追手を躱す用意はそれなりにしているのですけどね」
所々に物騒な話題を挟みつつ、デザートまで食べ終えて、食後の珈琲を貰い、一息ついた所で私は切り込む事にした。
「さて、今日の本題なのですが…………ハルドリア王国が帝国金貨を偽造して経済闘争を仕掛けて来ていますわ」
「なに⁉︎」
「ハルドリア王国……正確にはあの馬鹿王太子が糸を引いている様ですが、既に帝国内にいくらか入り込んでいます」
「……不味いな」
「ええ、既に商業ギルドには偽金が見つかった事は報告してありますわ」
「そうか……確かにここ最近、王国からの商人の流入が不自然に増えていたな」
「その中の何割かはフリードの息の掛かった商人でしょうね」
面倒な事になったと、ルーカス様は額を押さえるのだった。
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