表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/308

辺境での今後

 大将首には逃げられてしまったが、サージャス王国軍の排除は順調に進み、程なくしてブロッケン砦の奪還は成功した。


 私はルーカス様を始めとする主要メンバーと共にブロッケン砦の一室、軍議などに使われる作戦室の1つに集まり今後に付いて話し合っていた。


「ひとまずはサージャス王国軍を追い返すことができたが、問題はこれからだな」


 ルーカス様が深い溜息を吐きながら言った。

 ハルドリア王国の一部の貴族などは平民など替えの利く労働力程度にしか考えていないアホも少なくないが、帝国の平民への認識はかなり違う。

 帝国臣民はあまねく皇帝陛下の財産である。帝国法にはそう明記されているのだ。

 そのため、たとえ田舎の村人であろうと、他国から不当に害されるとなれば、それは皇帝陛下の財産に手を出した、と認識される。

 ルーカス様がこのまま、なぁなぁに済ませてしまうと、帝国の他の貴族から、皇帝陛下の財産に傷をつけられて報復もしない腰抜けと言われ、酷くなれば国家への反逆と言い出す者も居る。


 つまり、この紛争はまだ終わらないというわけだ。


 手段は2つ、外交ルートを通じて謝罪と賠償を求める方法。

 もう1つはこのまま逆侵攻して直接代償を払わせに行く方法。


 消耗を考えるならば1つ目の外交ルートでの交渉だけれど、帝国はサージャス王国との国交が無い。

 その上、裏で暗躍していたフリード、ひいてはハルドリア王国の国際的な責任を追及したいところだが、外交で時間を掛ければ決定的な証拠を処分されてしまう可能性が高い。

 あの頭のてっぺんから爪先まで筋肉でできたアホなら、筋を通すとか言い出しても不思議ではないが、宰相を務めるクソ親父は絶対に証拠を隠滅しようとする。

 脳筋も政治に関しては公爵の献策に従うだろう。


 ならば此処で取るべき選択は1つ。

 ルーカス様もその答えに行き着いたのか、覚悟を決めた顔で言った。


「これより……サージャス王国へ侵攻する」



 ◇◆☆◆◇



 サージャス王国の王城の一室でソファにふんぞりかえり、不機嫌そうにワイングラスを傾けるハルドリア王国の王太子、フリードとその正面に腰掛けた憔悴頻った表情のサージャス王国の王子グリントの姿を視界に収めながら、フリードの近衛騎士ロベルト・アーティは複雑な気持ちを押し殺して壁際に立っていた。


「まったく!たかだか田舎貴族から砦1つ満足に奪うこともできないのか?

 これだから無能な下級国は嫌になる」

「………………」


 フリードの罵声を浴びるグリントだが、何も言い返すことはない。

 そんなことをすれば主国であるハルドリアからの支援を止められ、国民に多大な被害が出てしまう。

 そのため、グリントは喉から出掛かる恨言を必死で飲み込んでいた。


 その光景を見てロベルトは考える。

 自分のしていることは本当に正しいのだろうか。

 帝国の村人からの略奪を許可すると言うフリードに、ロベルトは考え直すように何度も進言した。


 そんなことをすれば国際社会からの非難は避けられない、と。

 しかしフリードはそんなロベルトの忠言に耳を貸すことなく命令を発した。

 兵の士気の維持や褒賞の節約などの理由はあるのだろうが、一番の理由は帝国への嫌がらせだとロベルトは考えている。

 確かに戦時国際法では禁じられていることだが、それをしたからと言って帝国がわざわざ攻め込んでくるとは考えにくい。

 ただの田舎の村人のために、多大なコストを掛けて戦争をするなんて非効率的な行いだと言うフリードの予想にも頷ける。


 ロベルトは、王太子の婚約者となっているシルビア・ロックイートに恋をしていた。

 しかし、彼女の心を射止めたのは目の前の王太子。

 ロベルトの身分ではライバルとなることすらできない相手だ。

 ならばと、ロベルトは友人でもあるフリードと最愛の女性、シルビアのために剣を捧げようと考えたのだ。


 だが、その選択が正しかったのか、今になって疑問に思ってしまった。

 優秀で気さくだった友人は、日々苛立ちを募らせて臣下に当たり散らすようになってしまい、ロベルトの言葉も届かなくなってしまった。

 思えばフリードの前婚約者であるエリザベートを排した頃から状況が変わり始めた。


 ブラート王と共に国を空けていた、父である近衛騎士団長は、シルビアのためにフリードと共にエリザベートを捕らえたことで、烈火の如く怒り、ロベルトは骨を数本折るほどの折檻を受けた。

 父曰く、エリザベートが裏からフォローしていたお陰でフリードは『優秀な王太子』でいられたのだ、と言う。


 ロベルトが『何を馬鹿な』『シルビアを害そうとするような悪女を放置すれば国がダメになる』と反論すると、折られた骨はもう1本増えた。


 当時は恋焦がれる少女を傷つけたエリザベートを擁護する父や母に反感を覚えたものだが、今になって思うと、エリザベートがシルビアを狙ったという証拠などは無かった。

 エリザベートを悪だと断じた理由は、フリードとシルビアの言葉でしか無かったのだ。


 だが、2人の言葉を疑うなんて………。


「おい、ロベルト!聞いているのか!」

「は、はい!」


 ループしそうになっていたロベルトの思考を不機嫌そうなフリードの声が遮った。


「このオメオメと逃げ帰った無能の軍が壊滅したせいで、大した武功が得られなかった。

 なのでお前が直々に軍を率いて侵攻してくるであろう野蛮な帝国兵共を殲滅してやれ!」

「………………御意」


 さまざまな言葉を飲み込んで、ロベルトはそう答えるしか無かった。

お気に召して頂けたらブックマーク登録、評価をお願いします。

また、感想を頂けたら嬉しいです。


(・ω・)ノシ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ロベルト南無さん、断罪組は一番死に方楽しみにしているゾ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ