罪の幻影
ブチ切れ令嬢2巻、HJノベルス 様より本日発売です。
ヾ(๑╹◡╹)ノ"
「うぅ……」
重たい泥の中から浮かび上がる様に意識を取り戻した。
「エリー!」
「気がついたか!」
ボヤけた視界が正常になるにつれて床に寝かされた私を覗き込む人達の顔を理解できた。エルザ、ティーダ、ユウ、システィア。皆、怪我をして疲れている様だが無事の様だ。
「はっ! アリスは⁉︎」
慌てて周囲を伺うと隣で横たわるアリスの姿があった。
「アリス!」
私が駆け寄り抱き起こすと、アリスは小さく息をしていた。
「大丈夫だ。エリーが神器を使って意識を無くした後、アリスの魔力の放出が止まって安定したんだ」
「……そう。良かった」
では女神様が言っていた私とアリスの魂の共有は成功したという事か。アリスをそっと抱き上げてみんなを振り返る。
「みんなの方は大丈夫だった」
「ああ、問題ない」
「正体が悪魔だった事には驚きましたがちゃんと始末しましたよ」
エルザとユウは無事倒したようだ。しかし、ティーダは私からそっと視線を外した。
「わ、私の方は……まぁ、判定勝ちってところッスかね」
「ティーダは逃げられたそうだ」
「ち、違うッスよ! アレは……そう! 見逃してやったんッスよ」
ティーダによるとあのアルトロスと名乗る悪魔は、アリスの魔力によって作られた黒い魔法陣が消えた瞬間、もうこの場には用はないと言って去っていったそうだ。危険な存在だが今はあいつを追う余力はない。
私達はナイル王国の王都を包囲している者達と合流する為にゆっくりと足を踏み出した。
◇
あの戦いから一ヶ月が過ぎた。
帝都に帰還後しばらく動けないくらいのダメージを負っていたが、ようやく回復してベッドから起き上がる事ができる様になった。ベッドから身を起こして水差しからグラスに水を注ぎ飲んでいると、私の私室のドアが開いて小さな人影が部屋に飛び込んで来た。
「ママ!」
アリスを抱きとめた。アリスは問題なく目を覚ました。流石に衰弱はしていたが、直ぐに回復して元気になって安心した。今のアリスの精神は私の魂の一部によって守られている。女神様は出来ると言っていたが魂の共有によってどんな弊害があるか不安だったのだが、アリスには何の後遺症も残らなかった。
「ママ。ミレイお姉ちゃんがご飯だから呼んで来てって!」
「そう。ありがとう。直ぐに行くからアリスは先に行っててね」
「うん」
部屋を出ていくアリスの背をに見送りながら私は立ち上がる。そんな私をベッドに……いや、その更に下に引き戻そうとする腕が有る。私の肩を、腰を、腕を掴む血まみれの腕。
『許さない……許さない……』
『私の子供を返して!』
『人殺し!』
『痛いよぉ! お母さん!』
報復の犠牲にした者達の怨嗟の声が耳の奥から聞こえる。王国は滅びた。これからは帝国に組み込まれる事になるだろうが、政治が安定するまで、更に犠牲は増えるだろう。
私はアリスと魂を共有させる時、自身の壊れ掛けの魂の綺麗な部分を使ってアリスの精神を保護した。その結果、私の精神を包む魂は穢れ傷ついた物となった。女神様が言っていたアリスに出会わずに魂が完全に壊れた状態に近いのだろう。
「……ごめんなさい」
私は意識をズラし亡者の幻覚を振り払い、アリスの後を追うのだった。




