地下牢
舗装された街道を馬車で進む私達の前にハルドリア王国の王都の門が見えて来た。
私が乗る馬車にはオーキスト殿下とアデル、ルーカス様が同乗していた。
此処まで来るまでに通った村や町の様子を見て来たが、何処も酷い物だった。
アデルが色々と手配した様だが、それでも王都に近い街では食糧の枯渇が深刻で、少数ではあるが貧困層では餓死者まで出ている程だった。
おそらくブラートは此処まで長期戦になるとは想定していなかったのだろう。
アデルの支援が無かったらもっと酷い事になっていたに違いない。
門に辿り着くと、先触れが出ていた為か、止められる事なくスムーズに王都に入った。
普段は活気のある筈のメインストリートだが、今は殆ど人が居らず、家々の木戸の隙間から此方を窺う視線を感じた。
「………………」
アデルは王都のその様子を見て思う所が有ったのか、何かを押し込める様な表情を浮かべている。
私達が向かっているのは王都の中心にある王城だ。
アデルに捕らえられたブラートやフリード、軍の上層部などは、王城で拘束されている。
私達が向かうのも、オーキスト殿下による簡易裁判や政権の委譲などの事務手続きを済ませる目的がある。
そしてブラートやフリード、簡易裁判で責任が大きいと判断された重臣は帝国に連れ帰り処断される事になっていた。
私達が王城に入ると、王城で働く者達総出で出迎えられた。
私の姿を見て驚く者達も多かったが、それを表に出す者は少ない。
「アデル姫!」
そんな私達の前に立ち塞がる者達が数名いた。
フリードの後ろ盾をしていた貴族が3人と、柄の悪そうな騎士が10名だ。
「貴様ら!ユーティア帝国皇太子殿下であらせられるオーキスト殿下の御前で無礼だぞ!」
アデルが殺気混じりに一括すると貴族達はひっ、と喉を鳴らし、後退りする。
だが背後の騎士達を見て気を取り直したのか、アデルを睨みつけた。
「ブラート陛下を卑劣な手段で投獄するなど許される事ではないぞ!」
「正統なる後継者であるフリード殿下を差し置いて王を名乗る痴れ者め!」
「その上、卑しい帝国に降る売国奴が!」
「…………貴様ら」
私は魔力を練り始めたアデルの肩を叩き前に出た。
コイツらはアデルの足を引っ張るだけの役立たずだろう。
私がいた頃も、どうにか自分達に有利な法案を通そうとしたり、横領を隠そうとして私の仕事を増やすだけの存在だった。
そもそも、ブラートとフリードの正統性を主張する癖に幽閉された奴らを命懸けで助けようともしない。
アデル達の背後から姿を表した私を見た奴らは驚き目を見開いた。
「お、お前はエリザベート!」
「反逆者が何をしに来た!」
「この裏切り者め!」
喚き散らす男達を無視した私は【縮地】を使って背後の騎士達の中に踏み込み、【強欲の魔導書】からフリューゲルを取り出し振るう。
10人居た騎士達が瞬時に肉塊に変わり、3人の貴族達の全身が血で真っ赤に染まる。
「「「え?」」」
「現在、ハルドリア王国はユーティア帝国の支配下に有るわ。皇太子殿下への反逆はその場で処刑される理由としては十分よ」
「ま、まて、びゃ」
手前に居た貴族の首を斬り捨てる。
「ひっ!あ、謝る!謝るからばっ」
次の貴族を上半身と下半身に分ける。
「や、止めろ、エリザベート!」
「エリザベート『様』よ。私は公爵令嬢、貴方は子爵。身の程を弁えなさい」
最後の1人は細切れにしてフリューゲルをしまう。
「片付けておきなさい」
隅で青い顔をしている衛兵や従僕達に命じた私は、アデルを促してオーキスト殿下を客間に案内した。
この日、私達は一旦部屋で休む事になった。
明日からはオーキスト殿下がアデルと共に忙しくする予定で、私とルーカス様もそれを手伝う事になる。
その夜、私はミレイだけを連れて地下牢に向かっていた。
数年前、私が入れられていた地下牢だ。
何年も過ごした城だ。
迷う事など無い。
地下牢に着いた私は、牢番を下がらせてミレイに魔法で灯りを点して貰う。
そして牢の中の2人に話しかける。
「久しぶりね。フリード、シルビア」




