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王都の人々②

 

「アデル姫様が戴冠したってどう言う事だ?」

「ブラート王様はどうなったんだ」

「まさか戦で?」

「馬鹿な!あの《雷神》だぞ⁉︎」

「だがアデル様なら今の不景気をどうにか出来るんじゃないか?」

「ああ、アデル様は戦争反対派らしいからな」


 至る所で交わされる民の会話が耳に入る度に腹立たしさが込み上げてくる。

 偉大なるブラート王から王位を簒奪した小娘が評価されるのが我慢ならなかった。

 ブラート王の忠実な臣下として、そして正当な後継者であるフリード王太子の後ろ盾となって来た。

 仕事などはエリザベートに回して置けば全て上手く行っていたのだ。

 それなのに……。

 王国で大臣を務めていた男は頭を抱えてアデルに命じられた書類を仕上げて行く。

 こんな仕事は本来、大臣である男の仕事では無い。

 しかし、現在はアデルが連れて来た若い下級貴族の文官がこの部署を仕切っていた。


「ここ、計算が間違っていますよ。最初からやり直して下さい」

「っ⁉︎」


 目の前の机にさっき提出した書類を突き返された。


「貴様っ⁉︎黙って従っていれば良い気になりおって!私はこの国の大臣だぞ!それも侯爵家に繋がる者だ!貴様の様な木端貴族が……」

「おい、コイツを摘み出せ」

「「はっ」」


 部屋の端に控えていた騎士に両腕を掴まれて引きずられて行く。


「放せ!無礼だぞ!」

「貴方の様な老害には消えてもらう。アデル陛下のご意志だよ、元大臣殿」




 王国の古い体制を急速に改革して行くアデルだったが、その恩恵が民に与えられるにはまだまだ時間が掛かる。

 戦争が半年を超える頃には物資の枯渇は深刻になって来ていた。

 元々計画的な侵攻では無かった為、王都の食料が不足しており、アデルの支援策も追いつかなくなって来ていた。

 中には食糧の掠奪や、商人や貴族による買い占めが発生し、家族を奴隷商に売る者も現れ始めた頃、アデルが軍を率いて戦争を終わらせる為に出陣して行った。


 ハルドリア王国は今までブラート王の圧倒的な戦争センスで勝利を重ねて来た。

 痛み分けに終わったユーティア帝国との戦争ですら民には大した影響は無かった。

 つまり、ハルドリア王国の民の殆どは戦争による苦しみを初めて味わったのだ。


 故に戦争を終わらせると宣言したアデルの人気は高まっており、奇襲で戦端を開いたフリード、それを肯定したブラートへの支持は急落していた。




 それから数ヶ月、ハルドリア王国に敗戦の報が齎され、ユーティア帝国軍がアデルと共に王都へと乗り込んで来た。


「俺達……これからどうなるんだ?」

「さぁな、でももう戦争は終わったんだよな」

「数年前は良かったよな。いつからこの国はこんな事になったんだろう」

「前に王都を出て行った商人が言ってたんだ、エリザベート様が国の上の方で頑張っていたから王国は豊かだった、ってよ」

「エリザベート様ってアレだろ?国を売ろうとして王子様とシルビア様に成敗された売国奴だって噂の……」

「俺も最初は噂を信じてたけどよぉ、その噂も王子が流したんだって話だぜ。

 良く考えりゃエリザベート様が居なくなってから国がおかしくなり始めたんじゃないか?」

「そんな……いや、確かに……失業する奴も増えたし、治安も悪くなったよな」

「大体、婚約者を追い出して直ぐに別の女と婚約するなんて不誠実なのは王子の方だろ」

「じゃあ、エリザベート様は無実なのか?」

「多分……なぁ、俺、戦地に行った商人から聞いたんだけどさぁ」

「何だよ」

「今回の戦争、帝国側にエリザベート様が居るのを見たって……」

「エリザベート様が帝国に……」

「本当、これからどうなるんだろうな」


 噂話をしていた男達は、大通りを整然と並んで行進する帝国の国旗を翻す軍隊を見た。

 噂が本当なら、あのエリザベートが王国と敵対していると言う事だ。

 そして自分達はエリザベートを犯罪者だと思って侮蔑していた。

 その報いをうけるのかと、男達は底知れぬ恐怖を感じるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 情報媒体の限定された世界では、権力側の捏造したストーリーを正義とすることは日常茶飯事ですからね、
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