終戦③
ミーシャにドアを開けて貰い、会議室に入った。
会議室では円卓を囲む様にオーキスト殿下とルーカス様、文官達、そしてアデルが座っていた。
「やあ、エリー姉様」
「こんにちは、アデル」
私は空いていた文官の隣の席に腰を下ろす。
「アデル陛下が君と話がしたいと言ってね。
既に和平交渉は終わっている。私達は席を外す」
そう言って部屋を出るオーキスト殿下達に頭を下げて見送った。
そうして2人になった私達は、戦争やフリード達の事を話題に出す事はなく、子供の頃の思い出話やアデルの留学先のレキ帝国の話、私の商会の話をして過ごした。
私達の談笑はオーキスト殿下の侍女がそろそろ、と声を掛けるまで続いた。
侍女に促され部屋を出るアデルは、ふと立ち止まり、私に振り返る。
「エリー姉様、ありがとう」
「何のことかしら?」
「ボクの誇りを守ってくれた事だよ」
「…………」
「1つだけ頼んでも良いかな?」
「構わないわよ」
「ボクの配下達の事、面倒を見て欲しいとは言わないけど、少しだけ気に掛けてあげて欲しいな」
「ええ、約束するわ」
「ありがとう。また話して貰えるかな?」
「勿論よ」
私の答えを聞いて破顔したアデルは機嫌良さげに部屋を出て行った。
アデルは、これからはしばらくレクセリン砦の一室で軟禁され、1度ハルドリア王国の王城でオーキスト殿下と諸々の処理をした後、身柄を帝都に移される事になるだろう。
それまでの間、なるべく会いに行ける様にしたいと思う。
こうして、ハルドリア王国の長い歴史は幕を下ろす事になった。
◇◆☆◆◇
広く荘厳な帝都の宮廷の謁見の間で、壇上の帝座に腰を下ろした壮年の男を前に、ルイスは頭を垂れていた。
皇帝陛下は長々と口上を述べた後、ルイスと隣で同じ様に頭を垂れるリサーナに面を上げる様に促した。
そうして皇帝陛下直々に勲章を付けて貰ったルイスは、決められた口上を述べた後、リサーナをエスコートして皇帝陛下の前を辞した。
控室に戻ったルイスはソファにドサっと身を投げて緊張で張り詰めていた息を吐き出した。
「お行儀が悪いですよ、ルイス様」
「緊張してたんだからしょうがないさ」
「これからは正式な公国の後継になるのですからしっかりして下さい」
ルイスのフルネームはルイス・レブリック・ハルドリア。
ハルドリア公国の公子であり、次期大公である。
公国を治める大公家は、ユーティア帝国より与えられた爵位であり、公国は国としての自治権を持ってはいるが、実質は帝都の傘下の国である。
その為、次期大公となった者は婚約者と共に皇帝陛下より勲章を賜るのが伝統であった。
「しっかりして下さい。公国に帰ったらもっと緊張する儀が待っているんですから」
「……そうだった」
ルイスは身を起こし、緊張を誤魔化す様に机の上に有ったリモコンで映像水晶のスイッチを入れる。
画面の向こうでは、炎の様に赤い髪をポニーテールに纏めた若い少女がマイクを手にポーズを取っている。
『《実録!歴史ヒストリー》来週は2時間スペシャル!『英雄ティルダニア』様の素顔に迫る!』
軽快な音楽と共に赤毛の少女が和かに手を振り番組の終了を告げていた。
「今週の、見逃してしまったな」
「私はメイドに頼んで記録結晶に録画して有りますから、帰ったら一緒に見ますか?」
「ああ。それにしても来週はティルダニア様の特集か……またアカリちゃんが歴史的な場所を巡ってリポートするのかな?」
帰国すれば爵位継承の為のあれこれが待っている。
ルイスは現実から目を逸らす様に、リサーナが最近お気に入りの赤毛のアイドルの話を振るのだった。
此処までお付き合い頂き有難う御座います。
お気に入り登録や評価、ご感想、誤字報告など、とても有り難く思っております。
本作を投稿し始めた当初は、この章で全ての決着をつけて終わりの予定でした。
ですが蓋を開けてみれば魔導書で祖国をあまり叩き潰していないタイトル詐欺な展開となってしまいました。
まさかこんな展開になるとは、作者も予想外で驚いております。_:(´ཀ`」 ∠):
今後は、次章が最終章『アリス編』その後エピローグを入れて完結の予定となっております。
長く続くに連れ、自身の実力不足を痛感させられる本作ですが、もう少しだけお付き合い頂けると嬉しいです。
次回の更新は7月7日水曜日を予定しております。
(`・∀・´)ノシ




