追撃戦①
深い闇に光が差す様に意識が浮上し、私は目を覚ました。
「ん、此処は……」
「目が覚めましたか?」
「ユウ」
「此処はレクセリン砦のエリーさんの部屋ですよ」
「私は……」
「ブラート王との戦いで魔力を使い果たして倒れたんです」
「彼奴はどうなったの?」
ブラート王を倒しきれては居なかった筈だ。
確か、大技をぶつけ合った隙に逃げられたと思う。
「ブラート王は逃走しました。一応追いかけたのですが見失ってしまいました」
「そう……私はどれくらい眠っていたの?」
「丸1日くらいですね」
その言葉を聞き、私は魔法で灯りを点そうとしてみるが、自分の魔力を動かせなかった。
【嫉妬の魔導書】の反動で魔力が使えなくなっている。
魔力が使えないと身体強化も出来ないので、私は多少鍛えている程度の力しか無い。
「後2日は戦えないわね」
「あの神器の代償ですか?」
「ええ、アレは1度使うと3日間魔力を使えなくなるのよ」
それからユウから現在の戦況を聞いた。
ブラート王を逃した後、半日程するとハルドリア王国軍が攻め手を緩め、遠巻きに包囲するように陣形を変えた。
どうやらハルドリア王国軍の指揮官達は混乱している様だが、物資や馬車の動きから撤退しようとしていると見られている。
帝国側は監視を強め、ハルドリア王国軍に動きが有れば直ぐに対応出来る様に構えていた。
そして、私が目覚めてから1日が経った後、ハルドリア王国軍が撤退を開始した。
オーキスト殿下はその機を逃さず、足の速い騎馬部隊を中心とした追撃部隊を放った。
背を見せる敵軍を容赦無く攻め立てて戦果を挙げていた追撃部隊だが、半日程経つとハルドリア王国軍も殿に強力な兵を配置したようで、当初程のダメージを与えられなくなっていた。
「【灯り】」
私の指先に淡い光が点く。
再び魔力が使える様になっている事を確認した私は、直ぐに指を振るって光を消すと、ミーシャが連れてきてくれた軍馬の手綱を受け取った。
「じゃあ、私も追撃に出るわ」
「御武運を」
「ミレイとミーシャも此処を頼んだわよ」
「お任せ下さい」
ミレイ達に見送らせた私は、軍馬に跨り撤退するハルドリア王国軍を追うのだった。




