一方その頃:精霊結晶
バルコニーから戦場を見下ろすティーダは、フラウが気怠げに腕を振ると、それに合わせて騎馬に乗った砂の騎士団が1つの生き物の様に魔物を引き裂き、城門に備え付けられたバリスタから放たれた砂の巨矢が、一際大きな竜種を撃ち倒すのを見た。
「す、凄いッス」
3体の悪魔も倒しても倒しても直ぐに元に戻り戦線に復帰する砂の騎士に討ち取られる。
「終わったの〜」
あれだけ居た魔物の群れが全て屍に変わるのに1時間も掛からなかった。
「……これがSランク冒険者の実力ッスか」
「あちしは〜大群を相手に〜するのが得意なの〜」
「得意とかって次元の話ッスか?」
ティーダとフラウは魔物の死体の間を歩いていた。
…………フラウはティーダに背負われているが。
「変異種も問題なく討伐されてるッスね」
「そうなの〜」
どうでも良いと言う感じでフラウが適当に返事を返す。
「ん?」
ティーダは魔物の死体の山の中に、違和感を感じた。
「どうしたの〜」
「いや……何か妙な感じが……」
フラウを背負ったままティーダが近づいたのはグランドベアーの変異種の死体だ。
「どこかへんなの〜?」
「何処と言うか……変な魔力の流れを感じるんッスよ」
「ん〜?」
フラウはティーダの背から手を伸ばすと指先をクイっと回した。
たったそれだけの動作で砂の刃がグランドベアーの変異種を輪切りにした。
「ちょっ⁉︎」
「これで問題ないの〜」
ティーダが慌ててグランドベアーの変異種を見ると、切断された身体の中から妙な物が覗いていた。
「何ッスか、コレ?」
それは大きく透明な水晶球だった。
「ちょ⁉︎子供が入っているッスよ!」
「あわ〜なの〜」
フラウを取り落としながらティーダが水晶球に駆け寄る。
水晶球の中に閉じ込められているのは金色の髪の裸の少年だった。
歳の頃は10歳程、ティーダは鉄杖を振り上げて水晶球を叩き割ろうとするが、罅1つ入らない。
「う〜落とすなんてひどいの〜」
「フラウさん、水晶の中に子供が閉じ込められているッスよ!」
「ん〜?」
フラウが水晶球を覗き込む様に調べると何度か頷いた。
「これは〜多分、精霊結晶なの〜」
「精霊結晶?」
「そうなの〜」
「…………」
「…………」
「いや、説明して下さいッス!」
「え〜」
フラウが渋々説明し始めた事を簡潔に纏めると、精霊結晶とは精霊が魔力を凝縮して作り出す結晶で、非常に硬く破壊する事は難しいらしい。
「何でそんな物の中に子供が入っているんッスか?」
「さぁなの〜」
首を傾げたフラウの横で水晶球が不意に溶ける様にして消え去った。
「え⁉︎」
「消えたの〜」
ティーダは急いで子供に駆け寄って抱き起こした。
「…………もう死んでるッスね」
ティーダは精霊結晶に閉じ込められていた少年を寝かせて布を掛け、胸で手を組ませてやった。
「一体どうなっているんッスかね?」




