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開戦④

「リリ、大丈夫なの?」

「はい。勿論、確実にとは言えませんが……助かる可能性は有ります」


 そう話しながらもリリは手早く道具を取り出して並べて行く。

 鋭く研ぎ上げられたナイフや鋭利な針、何に使うのか分からない物も多くある。


「エリーさん、この道具に消毒の魔法をお願いします」

「ええ」


 私は水を創り出しリリの道具を包み込み消毒する。

 私の消毒魔法は水属性の魔法なので、光属性の消毒魔法程使い勝手は良く無い。

 そのまま青年の傷口も消毒した私は、リリの治療を手伝う。


 リリは青年を連れてきた男にも指示を出す。


「彼を押さえていて下さい」

「分かった」


 男が青年をがっしりと押さえ付けると、リリは消毒したナイフで傷口を切り開いた。


「お、おい!」

「黙って!治療です」

「ぐぁあ!!」


 青年は痛みで暴れようとするが、男が慌てて押さえ直した。

 大きく開いた傷口に手を差し入れたリリは、なんと針と糸で繕い物をする様に傷口を縫い合わせ始めた。


「これは……」


 リリはポーションや魔法を使う前に、傷口を糸で物理的に塞ごうとしている様だった。

 確かに大きく開いた傷口にポーションを使うより、傷口を合わせてポーションを使った方が治癒効果が高い。

 それを糸で合わせ続ける事で行おうと言う訳か。


 リリは額に汗を浮かべながら手早く傷口を縫うと、最後に下級ポーションを掛ける。


「これで大丈夫です。後は造血薬と痛み止めを飲んで休んで下さい」

「あ、ありがとう!」

「う……あ……」


 男がリリの手を握りお礼を言うと、痛みで目を覚ましたのか、青年が薄く目を開いた。


「アルバ!」

「あ…き……れ、は……」

「もう大丈夫だ、この嬢ちゃんが助けてくれたんだ」


 青年はリリに視線をやると、再び気絶してしまった。

 私は空いているスペースを確認し、青年を移動させる指示を出した。


「お疲れ様、リリ」

「はい、お疲れ様です。エリーさん」

「あの治療法はユウが考えた物なの?」

「いえ、アレは私が考案して研究していた治療法です。

 師匠に見てもらいながらゴブリンで実験して、その後小さな怪我で試していたんです。

 彼程の大怪我に処置するのは初めてでしたけど」

「そう……」


 アレを自分で編み出した、か。

 …………流石、ユウが弟子に取るだけの事はあるわね。

 この治療法は多くの人々の命を救う物になるかも知れないわ。


 その後も次々と運ばれてくる怪我人の治療を行い、魔力が半分を切った頃、私も魔力を回復する為に部屋に戻り、アリス達と休息する。




 そして翌朝、魔力が回復した私はオーキスト殿下に呼び出された。


 どうやらブラート王が近くまで来ているらしい。

 帝国軍の面子の問題も有るが、その為に負けてしまっては意味が無い。

 オーキスト殿下はその辺りの引き際は心得ているらしく、私達義勇軍にも出撃を命じたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 便利な魔法があるから、医療技術が発展してなかったんですな……
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