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釣行の日

 早朝、朝食もそこそこにティーダは軽やかに宿のロビーに躍り出た。


「じゃあ、行って来るッスよ〜」

「はいはい、気を付けなさいよ」

「そうッスね。ティーダちゃん、美少女ッスから、暴漢に襲われるかも知れないッス!

 気を付けるッスよ!」

「いや、そこは心配してないわ。

 呑み過ぎに気を付けなさい。

 連日、泥酔して帰って来るんじゃないわよ」

「…………前向きに善処する事も視野に入れて、建設的で誠実な対応となる様、努力するッス」


 エリーと目を合わさない様に視線を逸らしながらも、ティーダは鼻歌を歌いながら機嫌良く宿を出た。



 宿を背後に通りを歩くティーダは、少し進んだ先で、中央区に入る門を抜け、このケレバンの街の中心で有る歓楽街へと入って行った。


 まだ早朝にも関わらず、男と腕を組んで歩く薄着の女や、酒の匂いを漂わせる人々が闊歩する光景は、まさに歓楽街である。


 ティーダは楽しげに路地を曲がると、裏路地にひっそりと存在していた、小さな看板が出ているだけの酒場へと入った。


 酒場の中は薄暗く、席はカウンターのみで5人も入れば満席になる様な小さな店だ。


「…………此処はガキが来る様な店じゃねぇぞ、帰んな」

「まぁまぁ、そう言わずに。

 この店の事はロブさんに聞いたんッスよ」

「ロブの野郎に?お前、あいつの知り合いか?」

「昨夜、大通りの酒場で意気投合したんッスよ。そしたらこのお店を紹介されまして……ふっふっふ、聞いてるッスよ〜、良いヤツ揃ってるって」


 ティーダの言葉に肩をすくめた店主は、親指で空席の1つを指し示した。


「座んな」




「…………まぁ、そんな感じだな」

「ふ〜ん、そんな奴が居たんッスか〜。

 あっ、次はそっちの果実酒をロックで」


 太陽が空の中央にまで来てもティーダは機嫌良く呑み続けていた。

 そして店に置いてあった目ぼしい酒を一通り味わったティーダは、代金を支払って店を出た。


「うへへ、本当に楽しい街ッスね〜」


 ほろ酔い気分で楽しげに街をフラつくティーダは、酒やツマミの匂いに誘われ、炎に惹かれる羽虫の様にフワフワと店を渡り歩いた。


 有名な人気店、常連から聞き出した穴場、気になった小さな店と次々にハシゴしたティーダは酔いが深まるのと同時に、人通りの少ない路地へと迷い込んで行ってしまった。


「おろ?道を間違えたッスかね〜?」


 そう首を傾げた時、ティーダの前後を塞ぐ様に険呑な様子の男達が立ち塞がった。


「ん?私に何か用ッスかね?

 はっ!もしかしてナンパ⁉︎ナンパッスか?

 ダメ!ダメッスよ!ティーダちゃんは敬虔なる女神様の僕なんッスよ!

 遊びのお付き合いは出来ないッス。

 あと、お兄さん達は好みじゃないッス、顔が」

「あぁ⁉︎」

「よせ」


 くねくねと身を捩るティーダに苛立った男が前に出ようとするが、リーダー格の男が手を上げて押し留めた。


「おいお前、最近俺たちの事をコソコソと嗅ぎ回っているらしいな」

「ええ?何の事ッスかね〜?ティーダちゃん、わかんな〜い?」

「シラを切っても無駄だ。既に情報屋が吐いたぜ。どうせ口止め料を渋ったんだろ?」

「…………それは違うッスよ。【解毒(アンチ・ポイズン)】」


 ティーダは光属性の治癒魔法で体内のアルコールを分解しながら男達の言葉を否定する。


「私はちゃんと支払ったッスよ。でもそれは口止め料じゃないッス。

 私はお金を支払って、あんた達の事を私が探っていると言う情報を流して貰ったんッスよ。

 まさか、こんなに早く釣れるとは……ぼったくりの様な料金を支払った甲斐が有ったって物ッスよね」

「なん……ぐあ!」


 一足で間合いを詰めたティーダは、リーダー格の腕を掴み捻り上げた。


「さぁ、知っている事を全て吐いて貰うッスよ」

「クソっ!殺れ!」


 リーダー格の命令で他の男達が武器を取り出してティーダに向かってくる。


「はぁ、まぁ、数人残っていれば話は聞けるッスよね」






 数分後、人気の無い路地裏には鉄の匂いが充満し、全身を血に染めた男達の生き残りの数人がうめき声を上げていた。


「ま、待て!何だよ!何なんだよお前は⁉︎」

「んん?私の事を知って襲って来たんッスよね?」

「お、俺達は上に命令されただけだ!

 嗅ぎ回っている女を殺せって……」

「そうッスか、ではその上について教えて下さい」

「それは……勘弁してくれ!話せば殺される」

「では今死にますか?」

「ま、待て!だ、だが、良いのか?こんな街中で派手に殺して、お前だってこれが表沙汰になれば……」

「ああ、そう言う心配は要らないッス。

 ええっと……どこやったッスかね?

 普段は着けてないッスから……あ、あったあった!」


 そう言ってティーダは懐から取り出した物を首に掛け、男の目の前で揺らして見せた。


「コレ、知ってるッスよね?」

「…………バカな……そんな、そんな情報聞いて……」

「そりゃあ、バレない様にこの街に来る商会の一行に潜り込んで来たッスからね。

 で、どうするッスか?」

「い、命だけは……」

「それはコレからのお話次第ッスね。

 取り敢えず、拐った子供の居場所から吐いて貰いましょうか?」

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― 新着の感想 ―
ティーダさん、街に来る前から不穏な噂を知ってたってことか。 そして、「身内」にさえバレないように罠を張ったと。
[良い点] これは女神様も加護を惜しみませんわぁ
[良い点] ティーダちゃん、まさか本当に正義の味方だったの!?←失礼 強いけど遊び歩いて、酔った弾みで事件を解決してる感じかと思ってました(笑) 本当に崇高な使命の下に働いてたんですね〜 酔いを回復…
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