適正の日
式典を終えて屋敷に帰って来ると、何故だか屋敷が騒がしかった。
「何かあったんでしょうか?」
「そうね……あ、ミレイ!」
ちょうど姿が見えたミレイを呼び止める。
「随分と騒がしいみたいだけど何か有ったの?」
「エリー様、おかえりなさいませ。
実はアリスの事なんですが……」
「え⁉︎」
困惑した様子のミレイによると、アリスに関して何かが有った様だ。
「実はアリスがミーシャと中庭で遊んでいたらしいのですが、その時にアリスが魔法を使ったらしいんです」
「魔法を?」
確かにアリスはまだ幼いが、才能が有る子供が何かの弾みで魔力を漏らして魔法が発動してしまう事もなくは無い。
珍しい事だが、そんなに大騒ぎする事だろうか?
「その魔法なのですが……火属性魔法と水属性魔法を使ったのです」
「な、何ですって⁉︎」
「本当ですか⁉︎」
「はい、私もミーシャからの報告を聞き、アリスに確認しました」
「…………アリスは?」
「遊び疲れて眠っています」
「そう、とりあえず執務室に行きましょうか。ミーシャも呼んで頂戴」
「畏まりました」
場所を移した私達は執務室にある応接用のソファに腰を下ろしていた。
「それで、アリスが火属性魔法と水属性魔法を使ったって言うのは本当なのね?」
「はい、エリー様。私がアリス様と中庭を散歩している時、アリス様の手から火花が飛んだんです。その後、自分の手から出た火花に驚いたアリス様が転ぶと周囲が水浸しになりました」
「典型的な魔力の暴走ね。今は大丈夫なの?」
「はい、アリス様には封魔の腕輪を着けて貰っています」
封魔の腕輪とは子供が魔力を暴走させない様にする為のマジックアイテムだ。
私が作った魔封じの枷程強力な物では無いが、魔力の発動を抑制する効果がある。
「魔力の暴走はそこまで珍しい物では有りませんが、問題はもう1つの方ですね」
「ええ、まさか2つの属性に適性があるなんて……」
「あのー」
ミーシャがオズオズと手を挙げる。
「2つの属性に適性が有るのはそんなにおかしいのですか?」
「そうね。一応、複数の属性に適性を持つ場合もあるわ」
「いわゆる、『複合属性』と呼ばれる物ですね」
「それはどんな物なんですか?」
ルノアが首を傾げる。
「そうね……ルノアやミーシャはシスティア・プルオールは知ってる?」
「はい、Aランク冒険者『泥のシスティア』ですよね」
「前のお休みにルノア様と泥のシスティアの冒険と言う劇を観に行きました」
「ええ、そのシスティアよ。
彼女が使う泥の魔法は、正確には水属性と地属性の複合魔法なのよ」
「では泥のシスティアは水属性と地属性の2つに適性があるのですか?」
「そうよ。でも複合属性に適性を持つ人は普通、その複合属性しか使えないの。
システィアの場合なら水属性や地属性の魔法は使えず、泥魔法しか使えない。
アリスの様に2つの属性をそれぞれ使える訳ではないのよ」
「2つの属性を使える人は居ないのですか?」
私は腕を組み眉根を寄せる。
「う〜ん、記録に無い訳じゃないわ。
例えばイブリス教の聖典に出て来る『黒の聖女様』は光属性と闇属性の魔法を使う描写が有るわ。
それから故王国時代のエルフの大賢者にして大錬金術師、ホールン・パラケルススは水、風、地の3属性を操ったと言うわ」
私の説明にルノアは反応に困った感じで口を開く。
「それは……どちらも伝説上の人物ですよね?実在したかどうかも分からない」
「確実に実在した人物だと、約1800年前、異界から現れて魔王を倒した『勇者』ヒロシ・サイトーは全ての属性の魔法を扱えたと言われているわね」
「いずれにしてもアリスはかなり特異な存在と言う訳ですね」
「そうなるわ。この話が広がれば妙な連中に狙われるかも知れないわ。
早いうちに魔力の制御を教える必要があるわね」
私達はアリスの教育方針を話し合い、細かい指導方法を詰めて行くのだった。
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(・ω・)ノシ




