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第92章「月の宿命、月光決戦~始まりの時~」

決戦当日の15時45分。ここはトラモント王国の西部に位置するカーラ橋にて、ケイ、ハク、アイリスを中心に約400名の騎士達が戦いに備え、静かにその時を待っていた。緊急感の溢れる空気の中、ただ1人、ハクだけは違った。大きなあくびをしながら余裕そうである。ケイはハクに尋ねる。


「……お前緊張しないの?」

「せーへんで?どうせウチは負けへんし!」


自信満々にそう答えるハクにアイリスも便乗する。アイリスもまた不敵な笑みをこぼしていた。


「まぁ普通に考えて負けるメンツじゃないわよね!月のエネルギアを持った最強の3人がいるんだからね!それにこの総勢約400人のチームもかなりバランスよく組まれている!チームジーニアスが考えたの?」

「ああ!!グレンとボルグとロゼッタには感謝だな!!」

「ほなもう負ける要素ないやん!!」

「ハク!果たして本当にそう簡単に上手くいくかな。俺はそんな甘くないと思うぞ?油断するなよ?アイリスもな!」

「安心して!ハクと違って私は決して油断しないわよ!それよりケイ!本当に西部にくるのはガロードなの?そっちのほうが私にとって懸念点だわ!」

「……えーっと……多分?」

『多分?!?!』


ケイは目を反らし不安そうな返事をする。明らかに様子のおかしなケイにアイリスとハクはどういうことなのか同時に尋ねる。ハクも一気に目が覚めたようだ。


「ちょお待ちぃ!!別の敵っちゅうこともあるん?!ま、まさか西部に最強の敵6人全員終結なんてことにならへんよね?!」

「そ、そりゃ予想だからな!絶対ってことは言えないだろ?!」

「じゃ、しゃあ!ケイ!一体何で西部にガロードが来ると判断したのか教えてよ!!」


アイリスの最後の質問にケイは一瞬躊躇う。そして決心がついたのか自信満々に二人にはっきり答える。


「それはな……占いだ!!!」

『……はっ!?』


まさかの回答にアイリスとハクは目を見開きケイに詰め寄る。ハクはケイの胸ぐらを思いっきり掴み、ブンブン身体を激しく前後に揺らす。


「ド、ドアホぉ!!ジブンどや顔で何ゆーとるん?!?!せ、世界の命運がかかっとるっちゅうのに!余裕なんはケーくんやないかい!!!」

「そ、そうよ!!占いじゃなくてもっと他の方法あったでしょ?!?!」

「ハ、ハク……苦じぃ!い、息がっ!」

「ケ、ケーくん!もっと詳しく説明しーや!」

「ケホッ……ケホ!チームシークレットが今日の14時まで情報を集めたがそれでも奴らがどこに現れるかわからなかった!それで最後の手段として占いのエネルギアをもった奴に頼んだってわけだ!!よく当たるらしいぞ!?名付けて『天にお祈り大作戦』だ!!」

『えぇぇぇーーーー?!?!』


そんな会話をしているうちに時刻は16時となる。するとケイの携帯の電話が鳴るのだった。相手はシルファである。音声をスピーカーモードにして周りに聞こえるようにする。


「もしもし?シルファか?!」

「はい!!シルファです!北部にシモンとアトラス、南部にメイメイ、東にドラグナと名乗る男が現れたそうです!チームシークレットの予想完璧です!おそらくそちらにはガロードがやってくるかと!!」

「そうか!それは良かった!他は戦いがもう始まったんだな!」

「は、はい……!ケイ!あなたの無事を祈っています!負けないで下さい!」

「ああ!俺達は絶対負けない!!連絡ありがと!助かったよ!」


そう言い、ケイはシルファとの電話を切る。ハクとアイリスは予想が的中し唖然としていた。


「……ま、まさか占いが的中するなんて!」

「な、なんでなん?!き、奇跡や!た、ただの運ちゃうの?!」

「だからよく当たる占いだっていっただろ?チームシークレットが一番当たる可能性の高い占い師を探してくれたのさ!!」

「そ、そうなんや!クルミとリン、ファインプレーやな!!」

「やるわね!チームシークレット!!これで戦いに専念できるわ!」

「ああ!俺達は必ず勝つぞ!!」


ケイの解説にアイリスとハクが感心している中、いよいよその時はやってきた。正面から真っ黒の甲冑を身に付けた軍団が歩いてやってきたのだった。シャドウナイトである。その数は約400人といったところか、数は大体こちらと同じくらいだった。ケイは気を引き締めるため味方の部隊に大声で叫ぶ。


「お前ら!!いくぞぉぉ!戦闘準備だ!!!!」

『おぉぉぉーーー!!!!』


こうして騎士の雄叫びが夕方に響き渡り、命をかけた戦いがいよいよ開幕したのだった。

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