第89章「世界の命運」
「……お、驚いたよ。まさか1日でサンセット・モードを習得するとはね。」
荒野での厳しい修行が始まり、15時間経過した頃、ケイはようやく習得することに成功する。ルーチェからみて、その姿は美しく神々しかった。黄金の長い髪に、夕陽の光のように輝く2枚の太陽の翼、全身は緋色のオーラに包まれ圧倒的なプレッシャーを放っている。ケイは初めての感覚にルーチェに今思ったことを伝える。
「……不思議な感覚だ。今ならどんな相手にも負けない気がする……」
「そうだね。今の君ならダークネス・ジャイアントにも負けないと信じられるよ。これでこの世界での僕の役割は終わった……」
「ルーチェ……」
ケイはサンセット・モードを解除する一方、ルーチェの姿が透明になりつつあった。どうやらもとの時代に戻るらしい。最後にルーチェはケイに伝える。
「どうやら時間みたいだ。ケイ!明日の16時ジャストに気をつけるんだ。トラモント王国の東西南北それぞれにシャドウナイトの最高戦力の6人が率いる精鋭部隊が襲撃を開始する。……僕が知っている未来はここまでさ。いずれにしても奴らを倒さない限りダークネス・ジャイアントは必ず目覚めることになるだろうね……あとあんまり未来のことを詳しくは他人に話すぎないほうが賢明だよ。奴らが襲ってくるかもしれない……話せるとしたらそれくらいだね。未来を大きく帰るリスクはさっき話した通りだ。」
「……そうか。忠告ありがとう。できればダークネス・ジャイアントを目覚めさせないうちに止める方向で戦うよ。」
「ああ!その通りだ!そのサンセット・モードの力は目覚めてしまった最悪のケースへの備えだと思ったほうがいい!最後にいいかい?!ケイ!」
「なんだ?」
「大切なのは想いだ!それ忘れなければ君のその翼でどんな困難も乗り越えられるはずだ。この世界を頼んだよ……」
「……ああ!必ずこの世界を守って見せるっ!!」
ルーチェの姿が完全に消えると同時に、周囲がまばゆい光に包まれる。そして次の瞬間、オリオン座の入り口に戻ったのだった。ケイはそれから携帯で時間をみて、安堵のため息をつき独り言を呟く。
「……ちょうど今から24時間後ってわけか。」
それからオリオン座から歩いて、表通りへ戻る。歓楽街はもう既に夕陽の光に照らされ、人が増えつつあった。
「こんなに今平和なのに明日にはこの世界の守るための戦が始まるなんてな……あれは……」
そう言いながら歩いているうちに、少し離れた距離にいた見覚えのある騎士と目があった。それはロゼッタだった。一方ロゼッタは無機質な表情と声で一緒に捜索していたグレン、ボルグ、クルミ、リンに報告する。
「ケイ様、いましたよ。」
ロゼッタの声に皆が反応し、その方向をみる。ゆっくりとこちらに向かって歩いてくるケイの表情は何か深刻そうだった。5人はいつもと違うケイの雰囲気に圧倒され、合流するまで無言だった。
「ただいま。……わりーな。急にいなくなって。みんなには迷惑をかけた。大変だったろ?色々。」
「まぁ……少しパニックになったくらいさ。無事でよかったよ。……それよりどうしたんだい?何か思い詰めた表情に見えるけど……」
グレンがそう答えた後、ケイは目を閉じ、少し間があく。それから決心がついたのか真剣な表情で5人に言う。
「……みんな。疲れてる中申し訳ないが、この後トラモント城に戻って、俺の部隊で緊急会議を行いたいと思う。俺達に世界の命運がかかってるからな。」
『……えっ?!』
ケイのその言葉に皆、同時に驚きの声をあげたが、この場でその理由を聞く人はいなかった。沈黙の空気の中、ただひたすらケイの後に歩いてついていく。それはケイが周囲に漏れだす計り知れないエネルギアのプレッシャーに言葉を口に出すことさえ恐れたからだった……




