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第71章「始動」

「ねぇー!シルファ!聞いた?!ケイの部隊のこと!今までにない新しいチーム構成らしいわよ!」

「は、はい!噂で耳にしました!最初は大変かもしれませんがケイのことですからきっと上手くまとめてくれるはずです!!」


ここはトラモント城の中庭。朝陽が辺りを照らす中、日課の訓練が始まる前には話していたのはアイリスとシルファだった。アイリスは何かを思い出したかのようにシルファに言う。


「あ、そういえば……今日はアマネセル学園を1日借りて、午前中は教室で筆記試験、午後は実技実習場を借りて新人戦をやるみたいよ!!」

「え!?そうなんですね!!ちょっと見てみたいです……今日の午後は訓練オフですよね?アイリス!よかったらその新人戦を見にいきませんか??」

「いいわね!!アクアとロイ、ジョーカーあたりも誘ってみるわ!!」



そんな会話の一方ケイ部隊のメンバーは朝から会場準備で大忙しだった。ケイとグレン、ボルグは職員室でテスト問題の大量のコピーに精をだしていた。他のメンバーは教室の机や午後に使う実技実習場の整備を行っている。ケイは二人にお礼を言う。


「グレン!ボルグ!俺もチェックしたがテストの問題に特にミスはなかった!忙しい中作ってくれてありがとう!」

「はは!いや!むしろ楽しかったさ!!チームジーニアスのメンバーを選ぶとなるとこれくらいは自分達でしないとね!!それよりボルグ!君が担当した問題はあまりにも難しすぎるのではないかと心配なんだが……特に問8のチェスの問題は鬼じゃないか?あの盤面から逆転できる戦術などあるのか?」

「ん?問8か?35手あれば逆転できるはずだ。あれでもかなり簡単にしたつもりだぞ?」

『……』


二人は驚きのあまり、顔を青ざめる。それからケイはボルグに伝える。


「……さ、さすがIQ190!まぁその問題が解けるやつは間違いなくチームジーニアスに入るだろうな。」

「そ、そうだね!そんなメンバーが入ってくれたら僕も頼もしいよ!!」


彼の頭脳は次元が違うことを知り、グレンは焦った表情でそんな返事をするのだった。


そして実技実習場の入り口にはウル、ルナ、アランのナンバーズのメンバーが集まっていた。彼らが見ているのは入り口に立てられた大きなホワイトボードに張られた午後の新人戦の参加者名簿リストである。それを見ながらアランは2人に尋ねる。


「どうだ?気になる奴はいたか??」

「ああ!まず1人!!」


真っ先にそう答えたのはウルだった。そしてウルは指を指しながらその名前を呼ぶ。


「レイラ=アズーロ!」


その名前を聞き今度はルナが反応する。どうやら同じだったようだ。


「やはりウルも気になったか!私もアズーロという姓をみてな!アクア様の身内か何かではないかと気になっていたのだ!」


それに対してアランはニヤリとした表情をし答える。


「なるほどな……!気がつかなかったぜ!ナンバーズにふさわしいか楽しみだ……!だが俺は違う奴が気になってたんだがな!」

「ほう……誰だい?それは!」


アランが人に興味を持つのは珍しい、そう思いウルはアランに尋ねる。それに対してアランは一瞬目をつぶり、少しの間の後、覚悟を決めたかの表情で答える。


「……ハク=ヴァールハイト!こいつは化け物だ!!前に負けたおまえなら知ってるだろ?ウル!」

「ハク?誰なんだ!それは?!」


ルナは知らないようだが、ウルはその名前を聞き、目を見開く。驚きのあまり声をあげる。


「ハ、ハクだと?!彼女がケイの部隊に入ったのか?!」

「ああ!!俺ら世代のアマネセル学園の入学試験で実技でトップだった怪物……入学してすぐに問題行動を起こし退学になったがな……」


そんな会話を聞き、ルナはあることに疑問に思い、ウルとアランに尋ねる。


「実技主席ということなケイよりも強かったのか??彼が負けるのは私には想像つかないのだが……」


それに対してばつが悪そうな顔でウルは答える。


「いや!それがそうではないみたいだよ!噂で聞いた話なんだが、ケイは参加させてもらえなかったみたいなんだ!」

「はっ?!それはどういうことだ?!」


どうやらアランも知らなかったようだ。ウルのほうを見て次の言葉を待つ。


「アラン!実技試験の前にエネルギア量を計測をしたのを覚えているかい??」

「……ああ!やったな!そんなの!」

「それなら私も知ってるぞ!あのエネルギア数値がわかる機械で計測したな!」


ルナもどうやら経験しているようだ。そしてウルは二人に言う。恐るべき事実を。


「ケイの数値なんだが……測定不能だったみたいなんだ……」


その一言にアランは目を見開き、驚きの声をあげる。そんなこと初めて聞いたと言った表情だ。


「そ、測定不能だとっ?!なんだそれは!!」

「あまりにも膨大過ぎて、何度やっても機械が壊れてしまったらしい。それで危険だと判断されて実技試験には参加させてもらえなかったそうだよ!さすがうちのエースは別格だ……」

「た、たしかに私も初めて戦った時、あの力には恐怖を感じたがそれほどとは……」

「もしかしたらケイは何か特別な運命に導かれているのかもしれないね……おっと!忘れてた!ハクもそうだが午後の新人戦の組み合わせを決めなきゃだね!俺たちの仕事だ!2人ともこのあと時間とれるかい?」


ウルはルナとアランに尋ねる。組み合わせを決めるのは実はナンバーズである。名簿リストを見に来たのはそのためだった。


「ああ!!AからDブロックにわけるんだったな!俺はこのあとは特に何もないからな!」

「私もだ!もちろん手伝うぞ!!」


二人はうなずいてそう答える。これは面白い戦いになりそうだ、そんなことを思いながら決めていくのだった。



一方タイガとフィオナ、クルミも朝から大忙しだった。三人の今日の役割は午前にアマネセル学園でペーパー試験を受ける新人騎士の教室への誘導と試験監督だった。ぞろぞろと集まりつつあり、三人は対応に必死だった。


「クルミー!!そっちの教室あと何人入りそう?!」

「フィオナー!!こちらはあと13人入ります!」

「りょーかーい!!タイガ!!13人をクルミがいる教室に連れていって!!」

「おうよ!!俺に任せとけ!!」


その誘導作業が終わり、時刻は9時20分。10時開始の試験に40分前には無事全新人騎士が自分の席に着くことができたのだった。フィオナはやりきったと言った表情で2人に言う。


「二人ともお疲れ様ー!!なんとか一番の山場は乗り切ったわね!!」

「ああ!超忙しかったな!あとで俺はケイにジュースでも奢ってもらう!!」

「ふふ!タイガさんらしいです!あとは試験監督だけですね!!」

「あっ!!タイガ!クルミ!ケイ達が来たわよ!!」


ケイ、グレン、ボルグはゆっくりと歩いていき、フィオナ、タイガ、クルミと廊下で合流する。ケイはフィオナ達の顔を見て感謝の言葉を伝える。


「3人とも!!誘導ありがとう!!助かった!!」

「へへっ!ケイ!気にすんな!まぁ!あとでジュース一本奢れよな!」

「全く!朝から大変よ……!私にも奢りなさいよね!」

「じ、じゃ私も……!」

「お、おまえらな……!それよりもグレンとボルグがテストを作って人数分コピーして来たぞ!机に置くのを手伝ってくれ!あの空き教室に問題冊子が置いてあるぞ!」

『了解!!』


もう一仕事頑張ろう、そう思いながら6人は作業に取り組んでいくのだった。

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