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第69章「アクアの女の勘」

ここはトラモント城のシルファの部屋。朝陽の光が窓から差し込む中、シルファは目を覚ます。


「……んーもう朝ですか……」


とろんと眠気の残った声を出す。いつも1人で朝を迎えるが今日は違った。隣で仰向けで布団を被ってまだすやすやと眠っている彼を見る。綺麗な整った顔に寝癖まみれの黒髪。激しく求め合った夜を思い出し、シルファは一気な目を覚ます。顔を赤面させ、ボソッと呟く。


「……夢じゃなかったんですね。」


その一言でケイも目が覚める。いつも低血圧で朝に弱い彼だが、なぜか今日に限って調子がよかった。仰向けから横になり、シルファと目が合う。


「……おはよう。シルファ……」

「お、おはようございます……」


シルファはドキドキしながらケイの次の言葉を待っていた。彼は優しい表情でシルファに小さな声で言う。


「シルファ……大好きだぞ。」

「わ、私もケイが大好きです……」


シルファは幸せ過ぎて、布団から出たくなかった。そういうわけで大好きな彼におねだりしてみる。


「もう少しだけ……もう少しだけこのままお話しませんか……?」

「ああ……」

「私達……昨日の夜……」

「……可愛かったよ。あんなシルファ、誰にも見せたくないと思えるくらい……」

「……は、恥ずかしいです……」

「でも意外だったよ。」

「な、何がでしょうか……?」

「……シルファって結構えっちなんだな……」


ケイの冗談交じりの一言にシルファはトマトのように顔を赤面させる。そしてケイに上目遣いでお願いする。


「……はい……だ、誰にも言っちゃダメですよ……」


そんなシルファを見て、ケイはドキドキする。


「……か、可愛い。シルファ?」

「な、何ですか?」

「……襲っていいか?」

「えっ……?」


ケイがこんなに自分を求めてくることに嬉しさを感じながらシルファは少し恥ずかしそうに照れた表情で答える。


「……いいですよ……」

「……シルファ……」


そうしてお互い朝から二人は何もかも忘れて愛し合うのだった……




一方ケイの寮では朝からパニックだった。フィオナ、アイリス、アクアはアスカに尋ねる。先に聞いたのはフィオナだった。


「ア、アスカ?!ケイとシルファは?!」

「ケイさんなら姫様をお城に送りに行きましたけど……」


そのアスカの言葉にアイリスは皆が一番聞きたいことを尋ねる。


「で、でもケイは戻ってきてないじゃない?!」

「たしかにそうですね……携帯に連絡きてないですか?」


それからアクアは携帯を確認する。一通のメールが来ていた。ケイからだった。


「ケイからね!読み上げるわ!」


『シルファを送ったあと俺は24時間オープンのファミレスで時間をつぶすよ。女子しかいない部屋では寝れないしな。シルファは城へ無事送ったから安心してくれ。帰るとき忘れ物ないようにな。  ケイより』


そのメールの内容を知り、フィオナ、アイリスはほっとする。


「そ、そういうことだったのね!シルファも無事ついてよかったわ!」

「水族館に行った時も思ったけどケイって意外と紳士なのよね!」


一方アクアはフィオナやアイリスとは違う、顔を赤面させ、何か焦った表情をしていた。心臓の鼓動が爆発するのではないかと思えるくらい高鳴る。それもそのはず。2人は両想いである。愛し合う二人。普通なら城にただ送るだけで終わるはずがない。


(えっ……まさかそんなはずないわよね?ケイがシルファと……えっ?えっ?)


そんなことを思いながらも気をまぎらわすかのようにアクアはみんなに言う。


「さ、さて!みんな帰るわよ!忘れ物ないようにね!」


そして解散し、フィオナは自分の部屋に、アイリスは自分の家に帰っていく。彼女らが帰って行ったことを確認した後アクアはアスカに言う。


「アスカ!先に帰っててもらえる?これ家の鍵よ!」

「え?あ、はい!わかりました!アクアさんは?」

「わ、私は用を済ませたら戻るわ!」

「わかりました!先に帰りますね!」


アスカとも別れた後、アクアは緊張した様子で早歩きで城へ向かう。本当にシルファが1人なのか確認したかった。


それから城の門の前まで到着する。すると正面から二人の男女がやってきた。ケイとシルファだった。

二人はアクアに気づく。二人は目を見開き、驚愕した表情をし立ち止まった。アクアは二人のもとへ歩いていく。


「ケ、ケイ?シルファ?!」

「えっ?な、何でアクアがここにいるんだ?!」

「そ、そうです!まっすぐ帰らなかったのですか?」


二人は信じられないと言った表情でアクアを見る。そんな二人をみてアクアはトマトのように赤面させて尋ねる。


「……ケ、ケ、ケイ!あ、あなたまさか……まさかシルファの部屋に泊まったの?!ファミレスじゃなかったの?!」

「そ、そんな大声で言わないでくれ!頼むから!」

「シ、シルファーー!?ヤバい!!え?!ヤバー!!」

「ア、アクアのばか!!わ、わざわざ確認するために来たんですね!!」


シルファは焦った表情でアクアに答える。そんなシルファをみてアクアは緊張した表情で尋ねる。


「ね、ねぇ……?シ、シルファ?!シルファ?!」

「な、何ですか?」

「……ケイとえっちしたの?」

「ふぇ……?!」


シルファの顔はこれ以上ないくらい赤面する。まさかここまでストレートに聞いてくるとは思わず後ろに一歩下がり、アクアから目を反らす。そして少しの沈黙のあと、コクンとうなずきながら答える。


「……は、はい。一杯えっちなことしました……」

「きゃあああああ!!シルファーー!!可愛いすぎぃぃーー!おめでとぉぉーー!!」

「だ、だから声がデカイからやめてくれ!頼むから!!」


そんなケイの声などアクアには届かなかった。アクアは興奮した様子でシルファに抱きついている。それから決心したかのように伝える。


「決めたわ!私はもうフィオナやアイリスじゃなくてシルファだけを応援する!あんたらやっぱりお似合いだもの!!」

「アクア……!」

「あ、ありがとうございます!」


こうしてアクアはシルファとケイの恋をまっすぐ応援することになったのだった。

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