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第68章「愛し合う二人」

「酒よ酒、酒ぇぇー!!あーあ!シルファばっかりなんらからぁ……」

「ア、アイリスさん?飲み過ぎですよ?!」


アイリスは先ほどのケイとシルファのイチャイチャシーンにふてくされた表情で酒を大量に飲んでいた。その姿にアスカは心配するのだった。そしてフィオナは不気味な笑顔で逆にケイに大量に酒を飲ませていた。


「フィ、フィオナこれ以上は俺飲めないぞ?!」

「ダメよ。ケイ。まだ13杯じゃない?死ぬまで飲ませるから。」


ケイがストップをかける中フィオナは酒をグラスに注いでいる。


「……お、おい!な、何してる!そんなアルコール度数高い酒、俺が飲めるわけないだろ?」

「は?それがどうかしたの?」


そんなやりとりをみたアクアはアイリスとフィオナに言う。


「アイリス、フィオナ!これはゲームだから!!」


そんな一言に二人は目が覚める。勝負はこれからといった表情に変わる。そしてシルファはアクアに尋ねる。


「ア、アクア?まだこのゲームをするのでしょうか?もう皆さん十分楽しんだのではないでしょうか?」


シルファはここでゲームを終わらせたかった。というのも最後にケイとイチャイチャできて幸せな気持ちでいたかったからだ。それから今のアイリスとフィオナがもし王様になったらどんな命令をするのか考えただけでも恐ろしかったからだ。そんなことを思う中アクアはカードをシャッフルし容赦なくゲームを再開させる。その表情は楽しそうだった。


「ダメよ!もう一回だけやるわよ!!いくわよ!みんな!カードをひきなさい!!王様だーれだ!」


6人は再びカードを一枚ひく。それから自分の手札を確認するのだった。


「……えっ?私が王様?!」


王様はアイリスだった。すぐに嬉しそうな表情にかわる。そのアイリスの表情を見てシルファとフィオナは顔を青ざめながらアイリスに忠告する。


「ア、ア、アイリス?!わかっていると思いますがアクアのような変な命令はダメですからね?!」

「シ、シルファの言う通りよ!!やめてよね!!」


そんなことを言う二人の声などアイリスには届かなかった。アイリスは確認する。


「1番は誰?」

「わ、私です……な、なんですか?」

「そう……シルファなのね。最高の番号ね。じゃあ命令するわ!1番の人はここにいる男子にフラれなさい!!別にいいわよね?ただの演技なんだから!……あら?男子はケイしかいないようね!!」

「……えっ?」


シルファは頭が真っ白になる。ケイにフラれる?演技でも絶対嫌だった。ケイとシルファが両想いなことを知っていたアクアは、そのあまりにも残酷な命令を止めようとする。


「ア、アイリス?そ、それはシルファがかわいそうじゃないかしら?別の命令にしてあげなさいよ!」

「お、俺もさすがにそれは……」


アクアのその言葉にいち早く反応したのはフィオナだった。


「ダメよ!これはゲームなんだから!アイリスの命令は絶対よ!ケイやりなさい!」


フィオナはアイリスの味方だった。当たり前である。先ほどのイチャイチャシーンを見せつけられて嫉妬しないはずがなかった。演技とは言えケイにフラれることが確定したシルファの瞳から涙が溢れる。手も震えていた。


「…………い、や……そ、それだけは……それだけはやめて……」

「ひ、姫様……」


アスカが心配そうにシルファを見つめる中、アイリスはケイに促す。ケイは目を一瞬つぶる。それからシルファの方をみて、言葉を口にする。


「……シルファ」

「いやです!!その先は聞きたくないです!!やめて……下さい!!」


シルファはケイと目を合わせようとしない。少しの沈黙の後ケイはシルファに言う。


「俺は騎士だ。」

「……それ以上言わないで下さい……」

「いいから聞いてくれ!……騎士である以上、俺はいつ戦場で死んでもおかしくない。だからシルファとはいつかお別れの日がくるかもしれない……。」


そんな現実にあり得る言葉をシルファは想像し、ケイの方をやっと見て、気持ちを伝える。


「……や、やだ!……いやです!ケイがいない世界なんて……もう私が生きている意味ないです!!私とずっと一緒にいて下さい!!」

「……もちろん生きる努力はするさ。だがもし俺が負けて死んでしまったらごめんな……。そのときはお別れかもな。」

「ダメです!そんなこと……そんなこと言わないで下さい!」


シルファは儚げに微笑んだ表情でそんな言葉を言うケイを見て涙が止まらなかった。それから少しの間の後ケイはシルファにあるお願いをする。


「なぁ……シルファ。お願いがあるんだが。」

「……いやです……」


シルファが耳を手でふさごうとする中、ケイはシルファの手を優しく握る。そして真剣な表情で気持ちを伝える。


「たとえ俺が死んでその時別れることになっても、生まれ変わったらまたシルファと会えるか?俺は何度死んだって生まれ変わっておまえをずっと守るつもりだから。」

「……えっ?!い、今なんて!?」

「……に、二度は言わない!恥ずかしいからな!」


シルファは目を見開き、それからケイに抱きつく。そして顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら泣き叫ぶのだった。


「好きーー!!ケイが好き!!大好き!!私も……私も!たとえこの命が尽きようと、生まれ変わってまたケイに会いにいきます!!」

「シルファ……ああ!約束だ!!またおまえの騎士になるからな!」


ケイもシルファを抱き締める。そんな二人を見て、アクアとアスカ、アイリス、フィオナは目を見開きながら感動していた。


「……ア、アクアさん?な、泣いてるんですか?」

「……ち、ちがうわよ!!わ、私はドライアイなの!そ、そういうアスカの方こそ泣いてるじゃない!」

「……こんなの女の子だったら泣いちゃいますよ!!」


フィオナとアイリスは演技とは言えシルファが羨ましい、そんなふうに思いながら、一筋の涙を流し顔を少し赤くしながら呟く。


「……ふったあとにそんなのずるいじゃない……かっこよすぎよ……ばか。」

「……なにこの圧倒的な敗北感。あんな命令した自分が恥ずかしい……あれ?涙が……」


少し時間がたった頃アクアは涙をぬぐい、口を開く。


「そ、それじゃ感動的なものみれたし、王様ゲームは終わりにしましょ?!」

「アクアさんに私は賛成です!フィオナさんとアイリスさんもいいですよね?」

「きょ、今日だけはシルファに勝ちを譲ってあげる!今日だけなんだからね!」

「シ、シルファ!!さ、さっきのケイは演技なんだからね!勘違いしちゃダメだから!!」


それからはたわいもない日常の話をしながら時間が過ぎていく。23時半になった頃にはケイとシルファ、アスカ以外は酔いつぶれてケイの部屋の床で爆睡していた。


「どうやらお開きみたいだな!シルファ!お城に送るよ!アスカはそこに転がっている3人の面倒を頼んでいいか?」

「わかりました!ケイさん!姫様をよろしくお願いします!」

「ケ、ケイ!ありがとうございます!」


それからケイとシルファは寮を一緒に出て、夜空の月明かりが二人を照らすなか、城へ向かって歩いていた。


「ケイ!今日は忙しい1日でしたね!」

「そうだな!2次会まであったもんな。ちなみにもしシルファが王様になってたら何をお願いしてたんだ?」

「ふふ!それはですね、今度バイオリンを教えて下さいって頼むつもりでした!」

「バイオリン?!」

「アマネセル学園でのケイのステージパフォーマンスに感動して最近私も始めたんです!毎日頑張ってはいるのですが難しくて……」

「はは!今度教えるさ!シルファはたしかハーモニカができるんだよな?音感とか良さそうだし、コツつかめば上達すると思うぞ?」

「あ、ありがとうございます!楽しみにしてますね!絶対ですよ?!」


そんな会話をしながら城の門につく。門番は疲れていたのか立ちながら眠ってしまっていた。そのため門を素通りし、庭に入っていく。


「……おいおい、これじゃ門番の意味ないぞ?」

「ふふ!大丈夫ですよ!今日は城内は誰もいないんです。お父様もロイも仕事でどこか行ってるみたいで……」

「そうなのか。まぁ二人とも忙しい立場にいるもんな。」


それから少し歩き城内への入り口に着く。ケイはシルファに尋ねる。


「ここまで見送ればあとは大丈夫そうか?シルファ?」

「…………」

「ん?どうした?」

「お、お酒を少し飲んだので1人で部屋までたどり着けるか……」

「あ、ああ!たしかシルファはお酒に弱かったもんな。部屋の前まで送るよ!」


シルファは嘘をついた。全く今酔ってなどいなかった。ケイと一緒にいたい、その気持ちで一杯だった。ケイはどうやら本当に酔っていると思っているのか心配そうにシルファをたまにみつめる。そして二人は城内を歩きシルファの部屋のドアの目の前につくのだった。


「……」

「相変わらず広いな!この城!でも無事部屋についてよかった!シルファ!今日はゆっくり休めよ!おやすみ!」


ケイは部屋のドアの前でシルファにおやすみと言い背中を向ける。その時だった。シルファが後ろからケイに抱きつくのだった。


「……へっ?シ、シルファ?」

「……今日の二次会の王様ゲームでの言葉は演技じゃないですよね?」


ケイはシルファの方を向く。シルファは恥ずかしさで、顔を真っ赤にしながらケイの目をまっすぐ見つめていた。


「……あたりまえだろ。演技じゃなく本心だ。」


それからケイもシルファを優しく抱きしめる。その言葉を聞き、シルファは勇気出し、とうとう伝える。自分が本当に望むものを……


「……今日泊まって下さい。」


その言葉にケイは目を見開く。少しの沈黙の後シルファの顔を見て、恥ずかしさで照れながらも優しい表情で返事をする。


「……わかった。」


それから二人はシルファの部屋に入る。電気はつけなかった。お互いに考えることは同じだった。部屋に入ってすぐ立ったまま抱き合い唇を求め合う。


「ん……ケイ好き……」

「シルファ……好きだ。」


しばらくの長いキスの後、お互い顔を離す。そしてケイはシルファに言う。


「……シルファ。俺はおまえが欲しい。」

「はい……今日は一杯一杯愛してくださいね……」


それからケイとシルファはベッドに向かう。お互い心臓の鼓動がドキドキと高鳴る。それからベッドにつきケイはシルファを優しく押し倒す。


「……俺もう止まらないから。シルファ……」

「……私も……私ももう我慢できないです。めちゃくちゃにして下さい……ケイの体も心も全部全部欲しいです……一緒に裸になって朝まで愛しあいたい……」


月の光が窓から差し込む中、ケイとシルファは本能に従って、その夜激しくいつまでもお互い求め合うのだった。


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