第59章「シルファとの約束」
(ケイ)「よし!今日の実技実習の授業はここまでだ!!みんな動きが格段によくなったな!」
(生徒達)「はい!ありがとうございました!」
ケイが学校に来てから早くも1週間経つ。初日にヴァイスを完膚なきまでに叩きのめして以降、1年2組の生徒は大きく変わった。同じ歳だがケイを教員として尊敬するようになったのだ。そして6限の授業が終わり、ケイは実技実習場内でコウ達に囲まれていた。
(コウ)「先生!!今日教えてくれた高速移動術!!俺感動しました!」
(ラナ)「私も!そんなエネルギアの使い方があったなんて知りませんでした!!」
(ガイ)「先生!!俺はどうやったら先生みたいに強くなれるでしょうか?!」
(ケイ)「おまえらはこのクラスの中でも特にセンスがいい。教えたことをすぐできるようになったしな。ガイの質問に答えるとすると、より強くなるためにはもっと自分のエネルギアの性質をよく知ることだな。接近戦が得意な奴、遠距離戦が得意な奴、色々いるだろう?自分は戦場で何ができるのか、そこを考えて訓練したほうがいい。短所をカバーしようとするな。長所をひたすら磨け!」
(コウ)「長所……!俺とラナは遠距離戦を磨けということか!」
(ガイ)「なるほど!俺は逆に接近戦だな!」
(ラナ)「つまりオールラウンダーじゃなく、個性を伸ばした尖った騎士を目指せというのですね!」
(ケイ)「ああ!騎士は基本的にチームで動く!だからお互いの短所はカバーし合えるからな。得意なことを極めたほうがいい。おまえらならできるさ!頑張れよ!!」
(コウ、ラナ、ガイ)「はい!!」
そうアドバイスをして、ケイは3人の元を去っていく。そんな後ろ姿を見ながら、コウは呟く。
(コウ)「……ミカヅキ先生って本当に無名の騎士なのか?1週間で感じたけど凄すぎはしないか?」
(ガイ)「ああ!あのヴァイスの時、一回だけ見せたあの拳のエネルギア!見ただけであのエネルギアコントロールは他の人間とは次元が違ったのがわかったもんな!」
(ラナ)「本当に何者なのかしら?!16歳であの強さ!尋常じゃない……」
3人はそんなことを思いながら、ケイの背中を実技実習場からでるまでいつまでも見つめ続けたのだった。
ケイが学校にいる一方トラモント場内、玉座の間では王とシルファ、サンセットホープズの4人が集まっていた。そして王は片膝をつき指示を待つサンセットホープズにあることを伝える。
(王様)「よく集まった。4人を集めたのは緊急事態が発生したからだ。そしてそれは非常に悪い知らせだ。最西部の海域は知ってるな?」
(ロイ)「ええ。たしかアーベント学園が近くにあるはずです!今ケイはそこで教員をやってると伺いました!」
(王様)「左様。そのアーベント学園のすぐ近くの海域にリヴァイアサンが出現したという知らせが届いた。」
(アクア)「まさか……!リヴァイアサンですって?!あの伝説の?!」
リヴァイアサンと言う言葉にアクアは特に恐怖の表情に変わる。その反応を見て王は言う。
(王様)「さすが水のエネルギアを操るアクアはその恐ろしさを知っているようだな。リヴァイアサンは人間でないにも関わらず水を自在に操るエネルギアを使うことができる。暴れ出したらトラモント王国が滅ぶであろう。」
(アイリス)「リヴァイアサン……そんなに強いのね……。」
(ジョーカー)「シャレになんないぜ……。」
(王様)「リヴァイアサンが暴れ出すタイミングには大きな地震が発生する。地震がおこったらすぐに全騎士を召集し、現場に向かってほしい。無論学生とその地域に住む住人の避難を優先するように。頼んだぞ!!」
(4人)「はっ!!」
その日の夜21時。夜空が月や星の輝きに照らされる時間帯にシルファはトラモント城の自室から窓を開けベランダに出て、ケイに電話をする。
(シルファ)「も、もしもし!ケイ?!」
(ケイ)「おう!どうした?急に!」
(シルファ)「い、今大丈夫ですか?」
(ケイ)「ああ!歩きながら寮に戻ってるところだ。」
(シルファ)「実はお話があるのです……ケイ!今アーベント学園で教員をしていますよね?」
(ケイ)「そうだな!それがどうかしたか?」
(シルファ)「あの……」
そしてシルファは説明する。アーベント学園から見える海にリヴァイアサンがいることを。
(ケイ)「なるほど……大きな地震が起きたらね……」
(シルファ)「ケイ!気をつけて下さい!」
(ケイ)「ありがとう!シルファ!明日の朝、校長に伝えておくよ!」
(シルファ)「お願いします……!地震が起きたらすぐに全騎士が向かいます!」
シルファの心配そうな声を聞き、ケイは絶対に死なないと心に誓う。それからケイは目を一瞬つぶり、少しの沈黙の後、シルファにあるお願いをする。それはシルファにとって思いがけない不意打ちだった。
(ケイ)「それから……シルファ。この戦いが終わって無事生き残れたら話があるんだ。……前にクリスマスの時、最後まで言えなかったことなんだが。……聞いてくれるか?」
(シルファ)「……へっ?」
シルファはその言葉に顔を真っ赤にする。心臓の鼓動が一気に高鳴り、足が震える。
……え??まさか?!まさか?!ケイが……!
シルファはそんな気持ちのあまり嬉しさでもう立つことができなかった。そしてシルファは嬉し涙を流し、涙声でケイに伝える。
(シルファ)「は、はい……いつまでも……いつまでもあなたを待っています……」
その後電話が終わり、シルファは自室のベッドに横になり布団を顔までかぶる。
……ウソ、ウソ、ウソーー!!……ケイ!!
嬉しさのあまり涙が止まらず、その日の夜一晩中ケイの顔を想い浮かべるのだった……




