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第55章「女子会2」

(アスカ)「ア、アクアさん!飲み過ぎですー!」

(アクア)「大丈夫大丈夫!だって今日の試合で新しいサンセットホープズが決まったのよー?めでたいじゃない?!飲まずにはいられないわ!!」


酒やつまみのゴミがあちこち散らばるここはアクアの家。元々1人で住んでいたがアスカがクリスマスイブの騒動以来一緒に住んでいた。そして今現在茶の間で晩酌中だった。そんな中コンコンと玄関のドアのノックの音がする。


(アスカ)「アクアさん!誰か来たみたいですよ?」

(アクア)「珍しいわねー!誰かしら!?」


アクアは玄関のドアを開ける。そこにいたのはシルファとフィオナである。彼らの表情はまるで誰かに助けを求めるような今にも泣きそうな印象だった。


(シルファ)「……」

(フィオナ)「……」

(アクア)「シ、シルファ!?フィオナ!?ど、どうしたのその顔!?」


アクアは一気に酔いが覚める。フィオナは下を向きながら涙を静かに流す一方、シルファがアクアに抱きつき子供みたいに泣き叫ぶのだった。


(シルファ)「……うぅ…うわぁぁん!!アクア!アクアーー!!」

(フィオナ)「……」

(アクア)「と、とりあえず2人とも中に入りなさい!!」


そうしてシルファとフィオナは茶の間に行く。アスカも普通ではない二人を見て困惑していた。


(アスカ)「ひ、姫様!?フィオナさん?!」

(アクア)「ちょ、ちょっとただことじゃないわね!詳しく聞かせて!何があったか!」

(フィオナ)「……」

(シルファ)「……うぅ……」

(アスカ)「と、とてもじゃないですが話せなさそうです……」

(アクア)「しょ、しょうがないわね!アスカ!少し前の過去の記憶読みとれる?」

(アスカ)「は、はい!」


そうしてアスカはフィオナの頭に手を置き、少し前の過去の記憶を読みとる。


(アスカ)「……ケイさん?……アイリスさん?……ま、まさか!そんな……」


アスカは真実を知り目を見開く。そんな驚きの表情をしているアスカにアクアは尋ねる。


(アクア)「ア、アスカ?!いったい何があったの?!」

(アスカ)「……アイリスさんが……アイリスさんが強引にケイさんに二人の前でキスしたんです。そしてケイさんを誰にも渡さない……そう宣言して何度も何度もキスを無理やり……」

(アクア)「……アイリス……とうとう自分に正直になったのね……あっ!」


アクアは口を滑らす。それに二人は反応する。


(フィオナ)「……どういうこと?」

(シルファ)「……ア、アクアは前から知ってたんですか?」

(アクア)「い、いやー前にちょっと色々あったことくらいしか!き、気にしないで!」

(フィオナ)「教えなさいよ。」

(シルファ)「教えて下さい。」

(アクア)「あ、あんたら目が恐いって!ま、前にね!水族館で会ったのよ!!二人が一緒にいるのを!」

(フィオナ、シルファ)「!!」

(アクア)「ア、アイリスに後で聞いたら、オフの日に本当にたまたま美術館で会ってお互い暇だったから遊ぶことなったらしいの!そして水族館に二人がきたのよ!私がボランティアでいたことに知らずにね!その時じゃない?アイリスがケイを好きになったの。でも多分ケイはアイリスを恋愛対象として見てなさそうだったけどね……」


恋愛対象としてみていない、その一言で2人は少し明るさを取り戻すのだった。


(シルファ)「……そ、そうですか。それならよかったです……キスは許せませんが……。」

(フィオナ)「ケ、ケイがアイリスを恋愛対象としてみてないなら今回だけは許してあげる……キス以外は。」

(アスカ)「け、結局許してないです……!恐いです……!」

(アクア)「……まぁでも今のところアイリスがダントツで有利よねー。」

(フィオナ)「ど、どうしてよ?!」

(シルファ)「い、意味がわかんないです!」

(アクア)「考えてみなさいよ。今日の試合。あれテレビで全国生放送だったのよ?そしてあの試合の中での告白。あんな感動的でロマンチックな試合みたら国民全員アイリスを応援したくなるわよ。」

(シルファ、フィオナ)「!!」

(アスカ)「……た、たしかに私も観客席で観てましたが、あれは反則でしたね。」

(シルファ)「で、ですが視聴率が低いに決まってます!たった1試合ですよ?」

(フィオナ)「そ、そうよ!みんなすぐ忘れるにちがいないわ!」

(アスカ)「……びっくりしないで下さいね。」

(シルファ)「な、なんでしょうか?」

(アクア)「……さっき携帯で興味本位で調べたの。そしたら視聴率96.4%みたいよ。ほぼ国民全員ね……」

(シルファ、フィオナ)「!!」

(アスカ)「う、噂によると映画化するみたいですよ。あの試合のこと。まさに伝説の試合ですね……」

(アクア)「これであんた達がケイと付き合ったら、国民すべてを敵にまわしちゃうかもね。」

(フィオナ)「そ、そんな……!」


そんな絶望的な状況を知りシルファは色々なケイと過ごした日々を思い出す。そして想いが溢れる。その表情は必死だった。


(シルファ)「……やだ、やだ。絶対に嫌!ケイは私のだから!特にアイリスだけは絶対認めないです!」

(シルファ)「あ、あんたのものでないわよ!!」

(アスカ)「ちょ、ちょっとここでケンカは……」

(アクア)「もう諦めて次の恋を探すのも手よ……。ほ、ほら!男なんてそこら辺に一杯いるじゃない!」

(シルファ、フィオナ)「絶対嫌!!」

(アクア)「そ、そう……!そ、そもそもケイがモテすぎるのが悪いと思わない?!」

(シルファ、フィオナ)「!!」


そして矛先は変わる。ここからはケイの悪口が始まったのだ。


(フィオナ)「そうよ!!あいつがあの綺麗な顔で誰にでも優しいのがいけないのよ!!汚いじゃない!そんなの!!」

(シルファ)「そうです!!ケイは私を一番に守るといいながら結局全員平等に守ってます!!ずるいです!」

(アクア)「き、騎士だから全員守るわよ……」

(アスカ)「な、なんか意気投合した……?」

(フィオナ)「で、でも……優しいだけじゃなくて、ちゃんと周りをみれて頼りになるし、あの少し切なげというかたまに寂しい表情をしている姿がカッコいいのよね……」

(シルファ)「わ、わかります!あのたまに影がある感じですよね!!あの目で微笑まれたらもう……!!」

(アクア)「テ、テンション下がったりあがったり……情緒不安定すぎよ!あなた達……。」

(アスカ)「そ、そういえばケイさんってどんな人がタイプなんでしょうか?」

(アクア)「たしかに!!」

(フィオナ)「あー……それなら前にタイガが聞いてたわね!たしかに明るい陰キャって言ってたわ。意味がわからなかったけど……」

(シルファ)「な、なんでしょうか?それは……!」


アクアはフィオナのその言葉でふとその人物の顔が浮かんだ。それは……


(アクア)「……それってシルファじゃないの?」

(シルファ)「……えっ?!」


シルファは顔を一気に赤面する。どうして?その気持ちで一杯だった。


(フィオナ)「なっ!?ど、どうしてシルファなのよ?!」

(アスカ)「……凄くわかります!イメージですけど……」

(アクア)「フィオナ!あんたは『朝日』のイメージね。周りを常に明るくさせるムードメーカー。まさに陽キャよ。対してアイリスのイメージは『月』ね。普通にしてるけど少し影があるというか根は陰キャなのよ。あの子。」

(シルファ)「わ、私は……?」

(アクア)「シルファはその中間ね!まさに『夕陽』のイメージよ。控えめで優しい陰キャっぽさもあるけどポジティブで明るい陽キャ要素も少しある。だからあんたが明るい陰キャってわけ。案外両想いかもね。」


シルファはアクアの家にきてから一番嬉しそうな表情を見せた。喜びのあまり先ほどの出来事はすっかり忘れていた。


(アスカ)「ひ、姫様、にやけてる……凄く嬉しそう。」

(シルファ)「や、やっぱり私達、両想い……あの時

……」


そんなシルファのリアクションにフィオナは面白くなかった。そしてシルファに宣言する。


(フィオナ)「そ、そんなの気のせいよ!!大体一番付き合いが長いのは私なんだからね!それに私だってこの前告白したんだから!!」

(シルファ)「えっ?!い、いつなんですか?!それは!!詳しく聞かせて下さい!!」

(アクア)「……もうカオスだわ……モテるのも罪ね。本当に……」

(アスカ)「そ、そうですね……。」


そんな会話が永遠に続く。この日の夜シルファとフィオナは完全になんでも言い合える関係、親友になったのだった。


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