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第122章「ドキドキ温泉パニック(後編)」

ケイとシルファの二人はプライベート露天風呂の扉を開けた。

夜空が広がり、満天の星々が湯面にちらちらと映る。

澄んだ空気と温かな湯気が、二人だけの世界を作り上げていた。


「わぁ……すごいです……」

「ああ……そうだな……」


シルファは声を落とし、肩まで湯に浸かる。

ケイもそっと体を湯に沈め、彼女の隣に座った。

肌が近づき、湯の熱が二人の距離をいっそう縮める。さらにシルファは少しだけケイの肩に体を寄せる。濡れた髪がケイの腕にかかり、やわらかな感触が伝わってきた。


「……シルファ……好きだよ」

「……私も……ケイが好き……」


互いに想いを伝え合い、胸が高鳴る。

湯気と夜の静寂に包まれ、視線は自然と絡み合う。


そして、シルファの小さな手がそっとケイの手を探し当て、重なった掌はぬくもりを伝える。

ただ、互いの心臓の音と手の温もりだけが、二人の距離の近さを物語っていた。


星空を映す湯面に、二人の影が寄り添う――。

その瞬間、世界は二人だけの静かな時間で満たされていた。


----------------------------


同じく自室のプライベート露天風呂の岩に腰を下ろし、エミリアは大きく伸びをした。


「ん〜! やっぱり戦いのあとの温泉は格別ねぇ。生き返る〜!」


隣で真っ赤になった顔を隠すように湯に沈んでいるのは、真面目一徹なルナだった。


「は、はしたないですよ。エミリア……。もう少し静かに……そして隠して下さい」


そんなやりとりをしていると、仕切りの向こうから微かに声が聞こえてきた。


「……本当に可愛いな……お前は……俺どうにかなりそうだ……」

「ふぇっ……?!……でしたら……その……襲っても……いいですよ……私も……ずっと我慢してましたから……」


――ピタッ。


二人同時に耳をそばだてる。

エミリアはにやりと笑い、ルナは湯をばしゃっと跳ねて顔を覆った。


「ま、まさか……この声……!」

「間違いないわねぇ。ケイと姫様、いちゃついてるじゃないの〜」

「い、い、いちゃついてるって……! そ、そんな……っ!混浴で……つ、つまり裸!!」


二人が耳をそばだてていることにも気がつかず、ケイとシルファはどうやらそういうスイッチが入ってしまったようだ。


「ケイ♡好き……ちゅ♡もっと……私を……愛して」

「シルファ……大好き……お前は俺のものだ……誰にも渡さないから……」

「……ケイ……ケイ……好き、大好き」

「っ?!……シ、シルファ……それ以上は……ここじゃ隣に聞こえる……部屋で……」

「は、はい……ふとんの中で……めちゃくちゃにしてください……♡」


ルナの頬は真っ赤に染まり、湯気と混ざってどんどん鼻血が噴き出していく。エミリアは少しだけ顔を赤らめルナに尋ねる。


「ま、まさか本当にえっちなことをしてるなんて……ル、ルナ、大丈夫?」

「わ、わ、私はそういうことには興味ないですから……」

「とか言いつつ鼻血でてるわよ……」

「こ、これはただのぼせただけで……」

「ふ、ふぅん……まぁいいわ……あなたのエネルギアは金属を操る力よね?……そ、その……鍵を作ってくれないかしら?」

「……っ!ま、まさか!だ、駄目です! そ、そんなはしたないこと……!」

「で、でも気にならない……?」

「っ……ごくり」


結局、ルナはエミリアのいけない誘惑に負けるのであった。


----------------------------

部屋の灯りは落とされ、障子越しの月明かりだけが畳の上をやわらかく照らしていた。


敷かれた布団の中で裸で並んで横たわるケイとシルファ。

湯上がりの熱がまだ残る頬は赤く、鼓動が互いに伝わるほど近い。


「ここなら……俺達以外誰もいない……今日は俺止まらないかも……」

「はい……私も一緒に朝まで愛し合いたいです……ケイ!!!」

「シルファ!!!!」


生まれたままの姿で布団の中で愛し合う……お互いまるで獣のように欲望をむき出しする……理性などなかった。あの戦場を生き残り、我慢しろという方が無理だった。もう止まらない……お互い身体の中で一番大切な場所を夢中で求め合うのだった……


「幸せぇぇ……♡幸せです♡私……きっとケイと愛し合うために生まれてきたんです……!!ケイ!ケイ!ケイぃぃーー!」

「シルファ!シルファ!俺……もうっ!!!」

「来てぇぇーー!!ケイぃぃーー!!ああっ♡」


お互い同時に本能に従って愛が溢れて頭が真っ白になる。そして力が抜け、息を切らすのだった。


「はぁ……はぁ……シルファ……ずっと愛してる」

「大好き……ケイ……はぁ……はぁ……幸せ……です♡」


ケイとシルファは布団の中で見つめ合い、優しいキスをする。

そし二人の手が絡み合ったまま、しばし幸福の余韻に浸っていた――が。


――ギィ。


部屋のドアが明らかに不審な軋む音。

ケイとシルファが同時に顔を向けると……そこには。


「……っ!?」

「……あ、あら〜バレちゃった?これってかなりまずいわよね?」


気まずそうにドアを開けて立っていたのは、エミリアとルナだった。

エミリアは顔を真っ赤にしながらも犯罪がバレた大人のように気まずい表情をしており、一方ルナは興奮のあまり鼻血を押さえている。


「え、ええと……ち、違うんです! わ、わたくしは止めたんですぅぅぅ!」

「な、ずるい!止めるどころかルナが一番ガン見してたじゃないの!」

「し、してませんっ! ……で、でも……すごかった……」

「き、聞こえてるから!!」


ケイが真っ赤になって叫ぶ。

シルファも布団を頭までかぶって、枕をぎゅっと抱きしめる。


「~~~っ! ど、どうしてこんなときに……っ!」


エミリアは湯上がりの頬を押さえながら、恥ずかしそうに言う。


「でも……いやぁ〜青春してるわねぇ。いいもの見せてもらったわ♡」


一方のルナは畳に突っ伏し、両足をばたばたさせながら


「ち、ちがいますぅぅ! 騎士の掟に反しますぅ! 」


そんなエミリアとルナに対して、ケイとシルファは顔を真っ赤にし同時に叫ぶ。


『いいからでていけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』


こうしてケイとシルファはこれ以上ないくらい恥ずかしい思いをするのだった。

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