表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/128

第110章「約束」

時刻は10分ほど遡り、21時50分。ここ西部のカーラ橋付近には不審な動きがないか見まわりのためフィオナをはじめ多くの騎士が派遣されていた。月と星の光がカーラ橋から見える海を美しく照らす絶景を見てフィオナは呟く。


「西部異常なし……私達勝ったのね……ほんと今度は夢じゃないわよね……」

「ふふっ!夢じゃないですよ!!フィオナ!本当にお疲れ様です!」


フィオナの横に立ち、会話に混ざるのはクルミだった。


「ク、クルミっ!?あなたも西部に来てたのね!」

「はい!ルナさんとボルグさんも一緒ですよ!」

「へぇ……なんだか懐かしいわね。元チームプレシャス全員勢揃いじゃない!」

「たしかに言われてみればそうですね!!」


フィオナとクルミの元にルナとボルグがやってくる。その表情はリラックスした様子だった。


「よぉ、フィオナ!お疲れ様!エミリアから聞いたぜ!南部での戦い、大活躍だったらしいじゃねーか?」

「ボルグ!こっちこそありがと!あなた達チームジーニアスが上手く部隊編成してくれたおかげでとても戦いやすかったわ!グレン達にもお礼いわなきゃね!」

「ははっ!気にすんな!あっ!そういえばなんかエミリアの奴、お前の話をしてる時爆笑してたが……なんか南部であったのか?」

「っ!!なぁっ……!?!?な、なんにもなかったわよ!!」

「そ、そうか……!それならよかった!」


フィオナが不自然に動揺する中、ルナが別の件でクルミになにやら少し顔を赤らめ恥ずかしそうに尋ねる。


「クルミ?」

「は、はい!なんでしょうか?!」

「こ、今回クルミとリンが見つけてくれた占い師を今度紹介してくれないか?」

「えっと……どうかしたんですか?」

「い、いや一度恋占いをしてもらいたくてな。なかなかその……運命の相手というものがわからなくてだな!」

「ふふっ……いいですよ!!あの占い、本当によく当たるんですよ!私もついでに占ってもらいます!」


そんな西部の見まわりが終わりに差し掛かり、和やかな雰囲気に包まれている時だった。



その時がやってきた。凄まじい震度の地震が発生したのだ。集まった300人近くの騎士達は突然の異変にパニックになる。真っ先に反応したのはフィオナだった。


「な、何?地震なの?!」

「それだけじゃない!!みんな!!見てくれ!なんだか様子がおかしい!!月と星が……!!」


ルナがそう言い、指差す方向を皆は見上げる。先ほど綺麗に光輝いていた月と星が消えていたのだ。そう。まるで深い闇に覆われているかのように……


「どうなっていやがる!?!?俺達チームジーニアスの作戦プランにもこんなことは想定していなかったぞ?!これは一体?!」

「な、なんだか空気まで震えているような……それにこのプレッシャーは……」


ボルグとクルミがそう答えた直後、上空で今まで聞いたことのない不気味な鐘の音色と共に禍々しく血のように真っ赤なオーラを纏った巨大球体が顕現する。その球体は地上にゆっくりと降下して形を変えていくのだった……


その変形が完了した姿は神々しいものだった。全身は鎧のように硬化した黒曜石の皮膚で覆われ、亀裂の間からは血のように赤黒い光が滲み出ている。また動くたびに石が擦れるような不快な轟音が響き渡る。顔は人の形を留めているが、目は深淵の穴のように虚ろで、時折、紅い稲妻が内部を走っていた。口は裂けすぎたかのように広がり、覗く牙は鉄をも噛み砕く黒金属であろう。笑えば、世界そのものを嘲笑うかのよう。体長は城壁をはるかに越えるほどで、筋肉は縄のように浮き出し、触れただけで人を潰すであろう腕を持っている。そして指先は鉤爪となり、触れるものすべてを腐敗させるのではないかと思えるほどの黒い瘴気をまとっている。その巨体は「闇の大地から生えた呪われた巨木」のようで、動くたびに大気が震え、空が濁る。この場にいた騎士の誰もが直感で理解する。この怪物に勝てる存在などいないと。それほど圧倒的なプレッシャーをはなっていた。騎士達はその姿を直視するだけで心を蝕まれ、膝を折って絶望するのだった。


黒き巨人は地を踏みこちらにゆっくり歩いてくる。その影響で大地はひび割れ、草木は瞬時に枯れ果てる。そしてふるう。その禍々しく闇の塊である拳を……


時刻は22時すぎ。たった一発。その一発でこの場にいた誰もが言葉を失う。騎士の内、200人近くの命が消えたのだった。


「……えっ………………?」


フィオナはこの光景を見て、ゆっくり何が起こったのか理解する。歯をカチカチ鳴らし、恐怖のあまり震えて一歩も動けなかった。そんなフィオナにルナが声をかける。


「フィオナ?!何をボーッとしてる?!しっかりするんだ!!」

「はっ……!!ありがとう!ルナ!!とりあえずケイ達にすぐに連絡するわ!!緊急事態よ!みんなもお願い!!」

『了解っ!!!!』


フィオナはケイに電話をかける。瞳に涙を浮かべながら祈るように……


(お、お願いっ!!出て!ケイ!)


「もしもしフィオナか?西部で何かあったのか?」

「も、もしもしっ?!?!ケイっ?!」

「ああ!どうした?そんなに慌てて!」

「ケイっ!!聞いてっ!!西部のカーラ橋付近でとんでもない化け物が現れて暴れてるの!!このままじゃ……!!」

「な、なんだって!?ば、化け物だとっ?!それはどういうことだ!?フィオナ!!」

「せ、説明する時間はないわ!!とりあえず戦える全騎士をカーラ橋に向かわせて!!私達だけじゃ手に終えない!!急いで……きゃああああ!!」


電話をしている最中、フィオナのいる方向へ拳がふるわれ、吹き飛ばされる。携帯も壊れ、もう連絡はとれない。フィオナは地面にひれ伏しながら、意識がなくなりかける中、ケイと戦いの前日に約束したあの言葉を思い出す。


(「バカはお前だ!今回の敵はわけが違う!命懸けなんだ!!大切な仲間を守るためなら俺はなんだってする!!だからいざとなったら叫べ!俺の名を!俺はお前を必ず守るから!!」)


そして最後の力を振り絞り、フィオナは顔を赤らめながら涙を流し、想いを爆発させるのだった。


「助けてぇぇーー!!ケイぃぃぃーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ