第109章「伝説の闇の巨人」
「本当によくやった……民を守ってくれたこと心より感謝する!」
「ありがたきお言葉です。陛下。引き続き我々以外の他の騎士には東西南北で不審な動きがないかしばらくの間監視してもらうつもりです。なお捕らえたシャドウナイトですが、明日にはアカツキ島の監獄へ送還されるかと。」
「そうか……これでどうやら一件落着ということだな。もうしばらく異常がなければ中央部に留まらせておいた民を解放しよう。」
時半は22時。トラモント城の玉座の間でロイは国王に現状を報告していた。なお今玉座の間にいるのは国王とサンセットホープズの5人である。結界が破壊された後、サンセットホープズのメンバーは他の騎士に東西南北の監視を任せ、一足早くトラモント城へ帰還していたのだ。
「それはそうとゼファーが亡くなったというのはまことか?」
「はい。どうやらジョーカーに負けて意識を失った後、毒のエネルギアが発動したようです。おそらくリーダーのドラグナの仕業かと。」
国王の質問に対して答えたのはアクアだった。大犯罪者とは言え、元仲間の死に思うところがあったらしい。少しだけ悲しそうな表情をしていた。相変わらず優しいアクアだった。それから今後の展開等を話し合った後、解散となる。
ケイは1人になった後、急いで中庭に向かう。それはシルファから会いたいというメールが来ていたからだった。中庭に到着するとすぐにシルファはケイが来たことに気付く。そして瞳に涙を浮かべ勢いよくケイに向かって走り出し、抱きつくのだった。シルファは溜まった想いを吐露する
「……ケ、ケイ……ほ、本当に……本当によかったです……あなたが無事で……」
「シルファ……心配かけたな。俺達サンセットホープズ以外の他のみんなも無事だ。フィオナ達は東西南北で不審な動きがないか見まわりに行ってる。もうしばらく異常がなければ戻ってくるみたいだぞ?」
「そうですか……安心しました……本当に皆さんが平和を取り戻してくれたことに感謝してもしきれない想いです。私はずっと安全な城内にいた上、何もお役に立てず……皆さんに謝りたいです……」
「い、いやいや……ひ、姫様のシルファに戦わせるわけにはいかないだろ?それは俺達騎士の仕事だ。それに俺は知ってるから。シルファも国民を守ろうと色々頑張ってたこと。俺も戦場にいる時、お前の情報のおかげで色々状況把握できたよ。ありがとな。」
「ふぇっ?!……は、はい……」
ケイの優しさと儚げな笑みにシルファは顔を真っ赤にしドキドキしている中、自身の背後から聞き覚えのある声がする。わざとらしく咳払いするのはアクアだった。その横には大層不機嫌なアイリスもいた。どうやらヤキモチを焼いてしまったようだ。
「あー……こほんっこほん!シルファ?そろそろ離れてもらってもいい?」
「あのさ……シルファ?それはズルいんじゃないかしら?」
「げっ!アクアっ!アイリス!い、いつから!!」
「……」
アイリスとアクアの指摘に、ケイが焦る。だがしかしシルファは気付きながらも無言でケイに抱きついたままだった。そんなシルファを見てアクアとアイリスはケイから引き離しにかかる。
「シ、シルファちゃーん?気づいてるわよねー?ケ、ケイも困ってるわ!」
「いや、アクア?別に俺は……」
「ほら!ケイが困ってるって!ちょっ?!シ、シルファ!ケイから離れなさいよ!!」
「いや、だからアイリス、別に俺は大丈……」
『ケイは黙っててっ!!!!』
「は、はいっ!!」
ケイがアクアとアイリスから怒られた後、シルファは引き離される。そしてシルファはというと急にアクアとアイリス二人に向かって勢いよく抱きつき呟くのだった。
「……おかえりなさい……」
アクアとアイリスは予想外のことに目を見開くが、自分達のことをこんなにも心配してくれていたんだなと理解し、暖かい表情で優しい声で答えるのだった。
「ただいま……シルファ。色々サポートありがとね。助かったわ。」
「アイリス……」
「本当よ。シルファがいてよかったわ。ふふっ!ただいま!」
「アクア……は、はい!!二人も本当に無事でよかった……」
この3人の会話を聞いて、なんだかんだ3人は固い絆で結ばれているのだなとケイは思うのだった。そんな和やかな雰囲気の中、ケイの携帯に電話がなる。それは西部に見まわりに行っていたフィオナからだった。シルファ、アイリス、アクアはケイの方に注目する。
「もしもしフィオナか?西部で何かあったのか?」
「も、もしもしっ?!?!ケイっ?!」
「ああ!どうした?そんなに慌てて!」
「ケイっ!!聞いてっ!!西部のカーラ橋付近でとんでもない化け物が現れて暴れてるの!!このままじゃ……!!」
「な、なんだって!?ば、化け物だとっ?!それはどういうことだ!?フィオナ!!」
「せ、説明する時間はないわ!!とりあえず戦える全騎士をカーラ橋に向かわせて!!私達だけじゃ手に終えない!!急いで……きゃああああ!!」
「フィオナ?どうした?!フィオナぁぁぁぁ!」
悲鳴と共に電話が急にきれる。シルファ、アイリス、アクアも戸惑いを隠せず、言葉を失っていた。だが何か異常な事が起こったのは明らかだった。ケイは最悪の事態を思い浮かべる。
(ま、まさかっ……まさかっ!)
このケイの最悪の予想は当たることになる。ついに伝説の闇の巨人が現れたのだ……




