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第107章「ドラグナの策略」

ここは東部。時刻はドラグナを拘束した頃には20時半を過ぎていた。


「ぎゃあああああーー!痛い痛いっ!やめてぇー!!もっと優しくしてぇ……」


そんな中コミカルな悲鳴を上げているのはタイガである。月と星が美しい夜空の下でヒーラーの治療により意識を取り戻したタイガは激痛のあまり周辺をのたうちまわっていた。一方皆安堵のタメ息を吐いた後、先ほどの戦いについて振り返る。一番最初に反応したのはラキだった。


「先ほどの戦い、感動しました!ルナさんっ!タイガさんのあの力は……」

「光系統……太陽のエネルギア。光系統はかなり珍しいんだ。私が知る限り、えーと……タイガを入れて5人か。他だとケイ、アイリス様、ハク、あとはアスカもそうだろう。」

「光系統……初めて聞きました。ですが本当に神秘的な力ですね……」


ラキがルナの説明に感心している中、ケイが会話に交ざる。


「光系統は想いが力になるんだ!そしてさっきのタイガは俺が今までみた中で、最も輝きを放っていた!きっと何か大切な想いが爆発したんだと思う……」

「想いが力にですか……凄い……!さすがケイ様が150人隊長に選んだだけありますね!」


その後アランは少し悔しそうな表情でケイに向かってこう言う。


「にしてもあの野郎、活躍しすぎだ!……敵のリーダーを1人で倒すとは!……今回だけは認めてやるっ!だがケイっ!次は俺がタイガ以上の強さを見せてやるよ!!」

「アラン……ああっ!ナンバーズとしてこれからもよろしく頼むよ!!」


それからフィオナもやって来る。フィオナはケイと目が合った途端、顔を真っ赤にしながら、なぜかわからないが目を反らす。


「……何?俺なんかしたか?さっきから変だぞ?」

「な、な、なんでもないわよっ!!」


フィオナは南部での戦いが終わり、東部への援護に向かっている途中、たまたま同じく西部から援護に来ていたケイと遭遇していた。その時からずっと気まずい空気だったのだ。それもそのはず……


(い、言えない……メイメイの技を受けた時、ケイとラブラブなあんなハレンチな夢をみてたなんてっ!!)


「ふーん……まぁ怒ってるわけじゃなさそうだし聞かないでおくよ。」


恥ずかしい気持ちになってるフィオナに対して、幸いなことにケイは深入りしてこなかった。なんだかんだケイは空気を読んでくれるのだなとフィオナは感心するのだった。


その後アランが何か気づいたのかこの場にいる皆に呼び掛ける。


「おいっ!ドラグナの野郎、目を覚ましたぞっ?!」


タイガを除いた皆がエネルギアを封じる拘束具で捕らえられたドラグナの元へ急いで駆け寄る。そして皆その様子を見て驚く。負けたはずなのになぜか不気味な笑い声を上げていたからだ。


「くっくっく……!なんだ?負けた俺を笑いに来たのか?悪い趣味だ!」

「にしては敗者の顔には見えないが?」


ルナは険しい表情でそう尋ねる。ドラグナはその表情を見てさらに笑いがこみ上げるのだった。


「くっくっく……あっはっはっは……!!そう。俺は負けた。だがシャドウナイトはまだ負けていない!作戦はまだ終わっていないのだ!!」

『?!?!』


ケイ以外この場にいた誰もが一瞬言葉を失う。西部と南部の状況はケイとフィオナがもうすでに勝利した事を皆に直接伝えている。また北部も勝利したという噂が東部にいた他の騎士の間で広まっていた。おそらく誰かが聞いたのだろう。だからこそ最後の砦であったドラグナを倒したことで本来であれば終わりだと思うのは至極当然のことだろう。ドラグナは続けて話す。


「お前らは罠にハマったんだよ!俺の目的は中央部にこの国の民を全て集めること!そして中央部には俺の最も信頼する部下がいる。その名は……」

「ゼファーか。」


名前を言ったのはケイだった。ケイは他の皆と違い落ち着いていた。まるで最初から想定していたかのように。


「そうだ。よくわかったな。どこで知った?」

「国王からゼファーが脱獄したと聞いていたんだ。だがまさか中央部に現れるとは思ってみなかったがな。」

「なるほど。まぁいい!それよりゼファーはある技を発動している。くっくっく……」

「何がおかしい?ゼファーの力などたかが知れている。俺は前に完封なきまでに叩きのめしてるぞ。」

「……あっはっはっはっ!!強さなど関係ない!!ゼファーは『デス・トマト』と言う技を発動しているのだ!」

「デス……トマト?」

「そうだ。あの技は最高だ。これはある範囲をバリアの結界内に閉じ込める技だ。そして中央部全体にその技を放ったのだ。それだけではない。このバリアの結界は内側へ徐々に圧縮していく。四方八方のバリアが同時に内側へ圧縮していったらどうなると思う?」

『!?!?』


技の恐ろしさを知り、皆目を見開く。フィオナは歯をカチカチと鳴らしながら怯えた様子で叫ぶ。


「今避難した国民の全員が中央部に集まっているわ!そ、そんなことしたら……」

「全ての人間が圧死……というわけか!!きっ様ぁぁぁぁ!!」


アランはドラグナの胸ぐらを掴み、怒りを露にする。一方ケイとフィオナは携帯の着信履歴をすぐに確認する。ケイはシルファから、フィオナはエミリアから何度も着信がきていた。二人とも必死に急いで東部に向かっていた時に来ていたため気がつかなかったのだ。おそらく内容は同じであろう。


「ケイ!!」

「フィオナ!俺からシルファに電話する!多分同じ内容だろう!!」


急いでケイはシルファに電話をかける。無事でいてくれ……そんな切実な想いが通じたのか、すぐにシルファが電話に出る。ケイは携帯をスピーカーモードにする。


「も、もしもしっ!シルファ!?わ、悪い!!遅れた!!無事か?!」

「は、はい!やっと連絡とれました!!ケイ!!大変です!!中央部にゼファーが現れました!!」

「ああ!!今さっきタイガが敵の大将を倒して、その情報をきいたところだ!デス・トマトのことも聞いている!!今そっちの状況は?」

「そうですか!ドラグナも倒したのですね!こちらは今のところ結界外にいたジョーカー様がゼファーと戦っています!!」

「ジョーカーが!?それは窮地に一生だな!」

「は、はい!本当に幸運でした!ジョーカー様のおかげで何とかデス・トマトの進行を抑えている状況です!あ、それから先ほど北部、西部、南部でまだ戦える者に増援を呼び掛けました!おそらくアイリスやアクア達も中央部に向かってるかと!東部で戦える者がいましたらジョーカー様を助けていただけませんか?!」

「わかった!!タイガを除いた俺達主力メンバーだけで大丈夫か?東部は戦いが今終わったばかりだからヒーラーの他の騎士の治療がまだ終わってないんだ!」

「はい!十分です!!ありがとうございます!!」


シルファとの電話が終わり、ケイ、フィオナ、ルナ、アラン、ラキは目を合わせ頷く。すぐに6人は中央部へと向かうのだった。そして誰もいなくなった後、ドラグナはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ呟く。


「……バカなやつらだ。たとえゼファーが負けようと関係ないというのに。俺の最終兵器が覚醒するまでにあと1人の生け贄があればいいのだからな!……ゼファーが勝てば国民全員がデス・トマトにより死に、逆に負ければ首に仕込んだ毒のエネルギアによりゼファーが死ぬ。どちらにしろあの伝説の巨人……ダークネス・ジャイアントが目覚めることとなる!!つまり我らシャドウナイトの勝ちゲームなんだよ!この戦いはなっ!フフフっ……フハハハハっ!!」


こうして意味深なことを言い残し、ドラグナはいつまでも不気味な笑い声をあげ続けるのであった……

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