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第30話 「侵掠(しんりゃく)すること火のごとく」

 見つめあう莉奈と大輝を交互に見つめる。

 ……なんかすごい事になっちゃったなあ。これからどうしよう、って高校生だしやることは一つしかないか。


「とりあえず学校に向かって歩きませんか? 遅刻しちゃいますし」

「そっか大変だ、急がないと。行こうか」


 大輝が応じて歩き始める。それに倣って2人も歩き出した。


「それで聞いてくださいよ。私実はストーカーに狙われている気がして」

「え」

「えってなに、詩織には散々相談してるのに」


 ……何って梨奈こそいきなり攻めすぎだよ。

 そんな詩織の戸惑いなどお構いなしに梨奈は大輝の反応を伺う。彼はそんなことは気付いてないとばかりに顎に手を当てた。


「うーん、ストーカーか」


 ……いや、貴方のことですよ?

 白々しく悩んでる素振りを見せる大輝に内心ツッコミを入れる。


「酷くないですか? 梨奈すごく悩んでいて……夜もなかなか寝付けないって」

「そっか……」


 ……あれ、意外と傷付いてる?


「そういうわけなんでワタシとしてもストーカーをやめさせたいんですけど何か考えはありませんか? 」

「いっそストーカーにストーカーをやめてって言うのなんてどうですか? 」


 ……それ今梨奈がやっていることだね。本当梨奈は勇気があって凄いよ。

 詩織が感心しながら大輝を見ると彼もそれを感じたのが笑みを浮かべていた。


「いや、それはやめた方が良い」

「どうしてですか? 」

「それで止めるならストーカーなんてしないから」


 ……流石本物が言うと説得力があるな〜

 キッパリと答える大輝に呆れながら詩織は口を開く。


「じゃあどうすれば辞めさせられるんですか? 」

「辞めさせるのは……無理かな。飽きるまで待ってもらわないと」

「それじゃやられたい放題じゃないですか」

「そうならないために常に複数で行動していた方が良いと思う……つまり梨奈さんがどうなるかは桜木さんにかかっているんだ」


 突然大輝は立ち止まると詩織を見つめ神妙な面持ちでそんなことを言った。


 ~~

 会話をしながら歩く事十数分、3人は学校に到着する。


「じゃあ、これで」

「はい、また今度」

「ありがとうございました」


 愛想笑いを浮かべながら2人は大輝を見送る。そして教室目掛けて歩いているのを確認して目を見合わせた。


「どう思う? 」

「どうってあそこが先輩の家で間違いなさそうなのと……まあ罪悪感はあるんだな〜って。それより梨奈大丈夫? あんなに攻めて」

「そうかな? 」

「そうだよ」

「そっかあ……良いチャンスだと思ったからね」


 梨奈は笑いながらキッパリと口にした。

 ……やっぱり梨奈は頼もしいな〜ってワタシも頑張らないと!

 梨奈の頼もしさに刺激された詩織の頭にアイデアが浮かぶ。


「そうだ、自宅が分かったんだから今度はこっちから押しかけようよ! 」

「え」


 詩織の提案に今度は梨奈が驚きの声を上げた。



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