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勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~【最終章執筆中】  作者: 冒人間
第2章

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第13話 キュルルの予感とアリスリーチェの狼狽

 

「ボクの『力』が……フィルによるもの……?」


 キュルルはリブラより告げられた言葉が全く理解できなかった。


「あの、お母さん。

 私もよく分からないんだけど……」

「ああ、アリりんにはコーちゃん達を呼びに行ってもらってたし、まだ話してなかったな。

 ついでに一緒に聞いてくれ」


 そうして、リブラは説明を始めた。


「まず、フィーたんが昔、魔物の群れに故郷を襲われたという話。

 初めて耳にした時から違和感があったが、詳細を聞いて確信した。

 明らかにおかしいと」

「きゅる?何が?」


 フィルの村が魔物に襲われたという話はキュルルも井戸の中で聞いたが、特におかしいと思われるところなど無かったはずだ。


「多すぎる。

 魔物の数も、種類もな。

 明らかに過剰戦力だ」

「きゅ?カジョーセンリョク?」


 リブラは足を組みなおし、説明を続けた。


「そもそも、人類が『魔王』の軍勢に対して敗北寸前まで追い詰められた一番の要因は魔物による『人類に匹敵するほどの戦術の駆使』というものだ。

 組織だった行動、地形利用、陽動……それらには当然『無駄のない戦力配置』という要素も入ってくる。

 その観点から見ると……フィーたんの村にあれだけの魔物の群れが襲来するのはとても不自然だ」

「きゅる……?」


 フィルの住む村は彼自身小さな村だと言っていた。

 ドラゴン一匹でさえ過剰戦力と言ってもいいぐらいだ。


「同じような疑問は彼が10才の時、野営地に忍び込み、そこで魔物の群れとの戦闘に遭遇した話の時も思った。

 それに関してはダクトんの方が詳しいだろう」

「ダクトん……まあ他よりゃマシか……」


 ダクトがリブラの横に立ち、説明を引き継いだ。


「あの坊主が来た時に起きた戦闘はいつもとはかなり違っていた。

 『ヴァール大戦』が始まってからというもの、対魔物戦の常識はそれ以前とガラッと変わっちまった。

 まるで人間でも相手にしているかのような、相手の戦術を読み取り、裏をかく心理戦……知恵比べのようなものにな。

 だが、あの時の戦闘は、まさしく『大戦』以前の対魔物戦闘そのものだった。

 魔物共は戦術もへったくれもねぇ野生に身を任せた力押し……

 そして、数は普段より明らかに多かった……」

「うきゅる……?そうだったんだ……」


 キュルルもその戦場に赴いたはずなのだが、普段の戦場との違いなどについては全く気付いてなどいなかった。

 その戦場がキュルルの初陣だったのだから無理もないが。


 そうして、再びリブラが説明を始める。


「更にもう一つ疑問に思ったのは、フィーたんが村を襲われた日から、10才に野営地に忍び込むまでの間、フィーたんは一度も魔物に遭遇しなかったという話だ。

 いくら勇者一行が魔物を一掃したとはいえ、未だ人類と魔物の大戦真っ最中という時期に、『全く魔物と出会わなかった』というのは、どうにも奇妙だ。

 そこら辺は……コーちゃん?」


 リブラに促され、今度はコーディスに説明が引き継がれる。


「あの時、フィル君の村の魔物を片付けた私達は村から引き上げる直前、仲間の一人から声をかけられたんだ。

 その仲間は魔法を使わずとも『見る』だけで他人の『魔力値』が分かる『エクシードスキル』を持っていたんだが……

 こんな事を言ってきたんだ」


『あの村に物凄い量の『魔力値』を持つ人がいるよ。

 誰なのかはちょっとわかんない。

 皆知っての通り、私は他人の『魔力値』を炎のようなモヤとして感じることが出来るけど……

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……』


「それを聞いて、あの大量の魔物の理由が分かった。

 魔物達は、その人間が目的だったんだ」

「きゅ……?」


 キュルルは話が見えなかった。

 魔物の目的が大量の『魔力値』を持つ人間……?


「これはあまり知られていないことだが………

 魔物が人間を襲い、捕食するのはね、

 肉ではなく、魔力を取り込むのが理由なんだ」

「きゅる!?」


 キュルルは驚愕の声を上げた。


「魔力によって動く生き物……故に『魔物』。

 そしてこの世で最も魔力を持つ生き物が、人間。

 捕食対象になるのは至極当然ということだね」


 コーディスはこともなげにそんなことを話した。


「話をフィル君の村のことに戻すと……

 魔物達が『大戦』で戦術的な動きが出来るようになったのは『魔王』の『力』によるものなのだが……

 あまりにも膨大な量の魔力を嗅ぎ付けた魔物はその『力』を打ち破る程の『飢え』を刺激されてしまう、ということらしい。

 それがフィル君の村が過剰戦力とも言える魔物の群れに襲われた理由だ。

 私達はその仲間の言葉から、フィル君の村から周辺は特に念入りに魔物を掃討することにしたんだ。

 少なくとも、魔物が魔力を感知出来ないだろうと思えるぐらいの範囲内をね」

「ねえ……

 その、物凄い量の魔力を持つ人間って……」


 キュルルが、まさか……という面持ちで疑問の声をあげた。


「フィル君、だろうね

 私もあの日に彼を見ていたはずなのだが、なにせ十年近くも前のことだからね。

 それにその時の『物凄い量の魔力を持つ人間』と今の彼はあまりにもかけ離れている。

 おかげで何か引っかかる部分はあったんだが中々記憶と繋がらなかったよ」


 コーディスはダクトの方をちらりと見た。


「野営地に現れたという『大戦』以前のような魔物の群れも、フィル君の魔力に反応した魔物、ということなんだろうね。

 これを彼が知ったら、きっと大層気に病んでしまうことだろうね……」

「いやまあ、実のところこっちも力押しで対応すればよかっただけだから、どっちかっていうと普段より楽だったし、むしろ犠牲は少ないぐらいだったんだけどな」


 ダクトは、だからフィルが気に病むことなど無いと言いたげな言葉を返した。


 そして、その会話を引き継ぐように、リブラが話を続けた。


「そう、本来の彼はとてつもなく大量の魔力を持つ者だったのだ。

 それが、今のフィーたんは『魔力値』100……

 さて、一体何故か……」



「………………………………………」



 キュルルは、急に静かになった。

 何か………

 よく分からないけど、何か嫌な感じがする。



 何か、自分がとんでもないことをしてしまったのではないかという、嫌な予感が………



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 アリスリーチェとレディシュ。

 森の中で2人の人間が対峙する。


 オリハルコン製のフルプレートアーマー……

 今のわたくしでアレをどうにかすることは不可能……

 ならば……!


 アリスリーチェは唯一露出している頭部へと狙いを定める。

 そこだけが、唯一の彼女の勝機であった。

 だが―――


「悪ぃけどなぁ……」


 そう言いながらレディシュは左手をアリスリーチェへと向けた。


 この男……何か魔法でも……!?


 アリスリーチェは警戒しつつも大した脅威とは感じなかった。

 肉弾戦ならまだしも、魔法という分野でなら明らかに自分の方に分がある―――


「お前、既に詰んでんだよ」


 その言葉と共に、レディシュは掌を握りしめる。

 そして―――


「《アブソーブ・フォース》」


『魔法名』を唱えた。


 ―――ズォォオオオ……!


「――ッッッ!!!!

 くっ、ああああああッッ!!!」


 その瞬間、自身の身体から体力、そして魔力が一気に消失する感覚がアリスリーチェを襲った。


「そ……の、魔法………は………!!」


 アリスリーチェは息絶え絶えになりながら車椅子の肘掛けに倒れ込むように寄りかかった。


「そうさ、相手から体力と魔力を奪い取る魔法だ。

 最も、奪い取れる量はたかが知れてて、本来は自身の魔力体力をほんの少しでもいいから確保しよう、

 なんつー緊急事態でもないと使われないようなしょぼい魔法だよ。

 だぁけどぉ……」


 レディシュはニヤ……と薄ら笑いを浮かべた。


「お前さんには十分堪えるよなぁ……?

 ええ?『魔力値』500の雑魚貴族さんよ?」


 そう言いながら、レディシュはゆっくりとアリスリーチェへと近づいていく。


「馬鹿…な……!

 その魔法……は……!

 相手に……直接……触れ、ないと……!

 発動………出来ない……………!!」


 アリスリーチェはガクガク震えながら何とかレディシュへと目を向けた。


「俺は少し特殊な体質を持っていてなぁ。

 俺が触れた生き物には、俺の魔力が残留するんだよ。

 そして、その間は俺が直接触れている時と同等の効果が発揮される。

 ま、半日ぐらいしか持たねぇんだけどな」


「貴方が……触れた……?

 ――――っ!!!」


 そう、それは今日の模擬戦の最中……

 この男が話しかけ、挨拶をしてきた時………


 レディシュはアリスリーチェの手に、触れていた……


「それが俺の『エクシードスキル』……

 【レジデュアル・コンタクト】だ」


「『エクシードスキル』……!!

 わたくしは……まんまと貴方の策に……!

 嵌ってしまっていた………!」


 あの時にそんな謀略が行われていたなど想像もしていなかった。

 というよりその時は他の事……ある少年の反応の方が気になっててレディシュの事など全く気にもかけていなかったのだが。


「んじゃ、納得していただけた所で……」


 レディシュは一気にアリスリーチェへと走り出した。


「とっとと死ねよ!!貴族様ぁあ!!!」


「―――っ!!!」


 再びその凶刃が彼女へ向けられる。

 今度は彼女に避ける余裕はない。

 もはやマジックハーブを取りだす動作すら起こせない。


 アリスリーチェは、思わずぎゅっ!と目を瞑った。



「うあああああああ!!!」



 その時、1人の少年の声が聞こえた。

 そして―――


 ―――バッッッ!!!



 ―――ザシュッッ!!

「ああっ!?」


 レディシュの剣は、またも椅子の背もたれを貫くだけに留まった。


 彼の剣がアリスリーチェを貫く直前―――

 誰かが彼女に飛びつき、椅子から引きはがしたのだ。


 ――― 一体誰が!!


 レディシュは、即座にアリスリーチェの方へ顔を向ける。


 そこにいたのは………


「はぁ……!はぁ……!」

「フィール………さん………?」


 フィル=フィール。

『魔力値』100……この学園最低の『魔力値』の持ち主であった。


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