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勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~【最終章執筆中】  作者: 冒人間
第6章

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第22話 僕とスリーチェと………現れた『それ』

 

「スリーチェ!大丈夫!?

 怪我は!?」


 魔物の群れを撃退した僕はこの広大な空間の隅に座り込んでいるスリーチェに駆け寄った。


「け、怪我はありません……

 ただ……『マジックポーション』の連続使用の副作用で……

 少し頭痛が……うっ……!」


 スリーチェは頭を抑えながら立ち上がろうとするも、ふらつき、へたり込んでしまう。

 今まで、ずっと1人で耐えてたのか……!


 僕は間に合ってよかった……という安堵と、もっと早く駆けつけていれば……という自責の気持ちをそれぞれ半々に抱いた……


「無理をしないで、スリーチェ。

 ほら」

「え………あ………」


 1人では立てそうもないスリーチェに僕は手を差し伸べる。

 スリーチェは僕の手を見つめ、黙ってしまう。


 どうしたんだろう……?

 もしかして同年代の男性の手に触れることに抵抗があるのかな……?

 スリーチェはそういうこと気にしなさそうに見えるけど……なんて言ったら失礼か。

 でも今はそんなことを気にしているような状況じゃないし、我慢してもらうしかないよね……


 しばらく待っていると、スリーチェはおずおずと僕の手に自分の手を乗せた。

 僕はその手を握り、ゆっくりと彼女を立ち上がらせると、ふらつく彼女を支える為に腰に手を回す。

 するとスリーチェは「あっ……」と声を出し、顔を背けてしまった。


 うーん……普段は活発そうな彼女も、やっぱりこういうところは普通の年頃の女の子ということなのだろうか……


「スリーチェ、ごめんね。

 状況が状況だし、今だけは少し我慢して―――スリーチェ?」


「ああ、いけません、いけませんわスリーチェ……

 フィルさんはお姉さまの想い人……

 こんなこと、こんな想い……いけませんわ……

 このままでは姉妹で1人の殿方を巡って、骨肉の争いに………

 ………………ああ、いけません、いけませんわ、スリーチェ……

 ちょっとアリかも……なんてそんなこと、いけませんわスリーチェ……」


「あの、スリーチェ?

 どしたの?」

「はっ!!!

 なんでもありませんわ!!

 気にしないでくださいまし!!」


 ぶつぶつと何事か呟いていたスリーチェが慌てて返事をした。


 声が小さくてよく聞こえなかったけど……

 なんだろう、何となくだけど、『ロック・リザード』討伐の時のアリーチェさんとスリーチェの美しい姉妹愛の感動が色々と台無しになったような気がする……


 と、どことなく弛緩した雰囲気の中、僕も思わず気を抜くと――


 ―――ドクン……!


「―――くぁっ!」

「フィルさん……!?」


 突如―――猛烈に胸の内が痛み出し、倒れかけてしまった。

 僕は片手で胸を抑えながら両脚を踏ん張り、何とかスリーチェを支え続けた。


「ど、どうしたのですか……?

 まさか、貴方も『ポーション』の副作用が……!?」

「いや……スリーチェ。

『これ』は……違うんだ。

 もう、痛みは引いたから……大丈夫」


 不安げな表情を浮かべるスリーチェに、僕は笑って気にしないように呼び掛ける。

 彼女はそれでもまだ気掛かりな雰囲気だけど……それ以上詮索しないでくれた。


 …………『2倍』でめまい、『3倍』で頭痛、『4倍』で胸の痛み、か………


 ………僕は今考えていたことをとりあえず脇に置いた。


「あの、ところでフィルさん……

 どうして貴方はここに?

 プランティはどうしたのですか?

 洞窟の入口で魔物の相手をしているはずですけれど……」

「ああ、そうだ!

 スリーチェ、君とプランティさんの前に現れたスクトさんだけど、多分その人は偽物だったんだよ!

 それに、さっきまで君と一緒にいたプランティさんも!」

「えっ……!」


 僕はスリーチェにここまでのいきさつを話した。


 スリーチェが会ったスクトさんの姿をした誰かにプランティさんがおかしな話を吹き込まれ、スリーチェと離されたこと。

 その後にスリーチェの前に現れたプランティさんは別人……おそらくスリーチェが会ったスクトさんの姿をした誰かと同一人物であること。

 偶然本物のプランティさんと会った僕はスリーチェを追いかけて森まで来たこと。

 そして……この洞窟の入口でプランティさんの偽物……ローブ姿の謎の人物に会い、プランティさんは今もその人と戦っていること……!


「そ……そんな………!

 わたくしは……騙されて……!?

 それでは……あのローブも………!?」

「ローブ?」


 スリーチェがある方向へと目を向ける。

 僕もまたそちらを見ると、確かに小さな岩場の裏にローブが見えた。


 そのローブにはどこか見覚えがあった……

 それは……そう、あのプランティさんの偽物が纏っていたローブだ……!


「わたくしは、お姉さまの魔力を感知してここまで来ましたの……

 けど……あったのは、あのローブだけ……」

「ローブからアリーチェさんの魔力が……?

 あ……そういえば、魔力で誰かが判別できるなら……

 スリーチェの傍にいた偽物のプランティさんからは……!?」

「プランティの魔力、そのものでしたわ……!

 だからこそ、あのプランティが偽物だったなんて、今でもにわかには信じ難いですわ……!

 ですけれど…………!」


 あのローブは……姿を変えるだけでなく、魔力まで似せることが出来るマジックアイテムなのか……!?

 そんなものが……!?


 僕の脳裏に浮かぶのは、かつてのアリーチェさん暗殺未遂事件の時に使われたマジックアイテムの数々だった。

 オリハルコンの鎧に音や魔力を通さない結界を作り出す石……

 マジックアイテムに詳しくない僕でも、このローブもまたそれらに匹敵するほどの製作難度である事が想像できる……!


 一体誰が、何の為にここまで……?


「………とにかく今はここから出よう……!

 色々考えるのはその後だ……!

 それに、プランティさんの方も気になる……!」

「そう、ですわね……!

 でもプランティのことなら心配いりませんわ!

 彼女、とっても強いんですから!

 それに幼い頃からとっても努力家で――――」


 嬉しそうにプランティさんのことを話そうとしていたスリーチェの声が……突然途切れた。


「スリーチェ?どうしたの?」


「ねぇ……フィルさん…………

 どうやって………ここから、出ますの…………?」


「え……?

 いや、どうやってって………

 そりゃここに来るときに通った通路――――」


 その言葉の途中、僕もまた声を失った。




 ない。




 ここに来るまでに通って来たはずの通路への出入り口が――――ない。


「え………な、なんで………!?

 あの通路は……!?

 ど、どこにも…………ない…………!?」



『ロック・リザード』と『ヘルハウンド』の死骸が転がる、この広大な空間に………



 僕らは、閉じ込められた………?













 ―――ズゥン……!














「きゃっ!!」

「っ!!!!

 な、なんだ!!??」


 突然聞こえた巨大な足音……そしてこの空間全てに伝播する揺れに、僕達は思わず声を上げた……








 そして――――『それ』は現れた。







 ―――ズゥン……!ズゥン……!



「なっ………!?」

「どういう………ことですの………!?

 こんなの………一体……どこから………!?」




 僕達の目の前に現れた、10メートルもの巨体を持つそれは――――




「あれって………もしかして…………

『ゴーレム』………!?」


「おそらくは……!

 でも……わたくしは知りません……!

 あんな………水晶のような身体を持つモノなど…………!」






 その時の僕達には知る由もなかった―――


 その『ゴーレム』が―――


 あの勇者様が『奥の手』を使わなければ倒せなかった相手だということに―――


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