エピローグ
※めずらしく連続投稿です。
前話の読み飛ばしにご注意ください。
ラルシュアーノ家領内で起きた大火災も収束して半日。
側近から報告を受けたルースエルド・ウ・ルルシュアーノは、街道から離れたその荒野でサドクレゲ・ウ・ラルシュアーノの遺体を確認していた。
「本人で間違いないようだな」
「はい。念のためラルシュアーノ家の者にも尋問しましたが、影武者の線も可能性として排除して構わないかと」
「容疑者死亡で解決、というわけか……」
いや、違う。これで真相は闇の中といったほうが正しいのだろう。
生き残ったラルシュアーノ家の複数の従者たちからすでにいくつか信憑性のある証言は取れてはいるものの、実行犯であるサドクレゲがこうして何者かに殺害されたという事実はさらなる黒幕の存在すら考慮しなければならなかった。
「まさか、この男が自殺するはずもあるまい」
苦しみに歪んだ顔。その形相からは死を受け入れた者の諦めや安息は窺えない。さらに遺体からは強い酒の臭いも漂っていた。
共犯者に毒でも盛られたか。殺害現場の状況を考えるに、その可能性が一番高いように思えた。
「一つ気になる証言として、ラルシュアーノ氏は去年から謎の組織とコンタクトを取っていたようです」
「ふむ、外部からも力を借りようとしていたわけか」
すべてはホマイゴスを我が物にするため、年末の女王陛下の招集令が下る以前より計画されていたことなのだろう。
今思えば王都へ向かう道中、度重なるトラブルで自分を含めた代表団の到着が大幅に遅れたこともサドクレゲ側の工作であったことは明らかである。そして稼いだ時間を利用し、他五紋章家を決闘で負かした上、最後に仕上げとして残ったルルシュアーノ家を屈服させにかかった。
しかし、あまりに想定外の存在に計画を阻まれた結果、自暴自棄になったサドクレゲはホマイゴスそのものを滅亡させんと火の魔人を召喚し、その力を暴走させた。
細部に不明点はあったとしても、今回の騒動はそんな経緯によるものだろう。そこに疑問を挟む余地はない。手に入らないのであればいっそのこと破壊するという行動原理は、サドクレゲの性格を考えれば大いに合点がいくものである。
市民に公にするのであれば火の魔人の存在は濁す必要はあるが、事の真相として発表することにそれで問題はない。
「だが、問題があるとするならば……」
サドクレゲの死によって、すべてが解決したと断じて良いのか定かではないということ。
それどころか、これは王国辺境北方地区で起こった争乱と同じく、王国を揺るがし兼ねない異変の一端だったのではないか。
事後の調査を進め徐々に事実が明らかになるに連れて、ルースエルドの胸中はなぜか言い知れぬ不安と予感に満たされつつあった。
「トリエラを、いや……魂の家を邸宅に呼び出してくれ。彼らにまた頼みたいことができた」
「はっ、直ちに」
長女のルシエラがあの爪の少女と共に、すでにホマイゴスを出たという報告は受けている。水の乙女の件も含めて事情を訊く予定ではあったが、騒動のどさくさに紛れて逃亡を許してしまった形だ。
しかし、あれほどの力を秘めた少女である。友を案じて娘が警戒する気持ちも理解できた。
ルースエルド自身、決して気の進む行為として娘の親友に白羽の矢を立てるわけではない。それでも、世界に異変の兆しが見え隠れする今、彼が為すべき第一はこのホマイゴスという都市をこれまでどおり変わらずに維持していくことだった。
なぜならそうすることで魔術師たちの華やかな繁栄と共に、魔術研究の急進的発展は約束されるのだから。
(何よりもまずは、代表者として正式に友好関係を結ばなければ)
世界が夕闇に包まれていく予兆の中、突如現れた光に縋る。しかもその相手が子供となれば、大人として恥ずべき行為と糾弾されても致し方ない。
だが、深い闇を祓うにはそれ以上に強い光が必要だった。
エミカ・キングモール――
その名は今、王国の大陸西側にも確実に広まりつつあった。
【ご連絡】
今話でホマイゴス編は終了。次からは主要登場人物などの設定資料投稿を挟んでまたのんびり編を開始する予定です(再開は年内を目標に)。
また、物語の一区切りとしてまだの方は↓にて★~★★★★★の評価ポイントを入れていただけると作者として恐悦至極にございます<(_ _)>
【書籍情報】
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ちなみに2周年記念のキャンペーンは抽選ではなく全プレなのでかなりすばらしい企画となっております。自分も応募券あるし欲しいのですが、送っていいものなのかどうか悩み中……。
では、また本編の再開をお待ちください。











