175.自己紹介タイム
八ヵ月ぶりの更新となります。
えー、なんというか、その……思った以上に再開が遅くなり申し訳ありません<(_ _)>
作者同様、本章前話までの話を忘れてる方もいらっしゃると思いますのでまずは軽く前話までのあらすじを以下に。
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ある日、ルシエラ妹がモグラ屋さんを訪問。
なんかルシエラの実家のほうがゴタゴタしてるらしい。
ルシエラからの頼みを聞き、いざ遥か西の地――魔術都市ホマイゴスへ。
観光する気満々のエミカだったが、まさかの入場制限を食らい門前払い。
「うわっ……私の魔力、低すぎ……?」
それでも結果にもめげず〝自力〟でホマイゴス入場を果たすエミカ。
一人都市を観光中、偶然迷子の女の子と出会う。
女の子が捜していた人物を捜すもそれは人ではなくなんか怪獣だった。
お礼をしてくれるという怪獣に半ば強引に連れて行かれるエミカ。
その先でルシエラ妹と行動を共にしていた冒険者二人と再会。
なんかみんな同じパーティーに所属してる仲間らしい。
女の子を保護したことで歓迎されるエミカ。←今ここ
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です。
では、本編をどうぞ。
年季を感じる木製の二階建て。
それでも普段からパーティー全員が寝泊まりしてるだけあって部屋数は多そう。
場所が場所だけに少し不安だったけど、案内されたパーティーハウスはしっかり掃除も行き届いてて思いのほかちゃんとした場所だった。
「粗茶で悪りぃがよー」
「あ、いえいえ、どうかお構いなく」
居間には大きなテーブルもあって私が客席するとすぐに例の怖い怪獣――もといコツメが深緑色しためずらしいお茶を出してくれた。
「何かの縁だし、今回はちゃんと自己紹介でもしておこうか」
一服後、盗賊職の男の子(or女の子)がそんな提案をしてくれた。
そういえばまだお互いちゃんと名前も把握してなかったね。秘密の多い女であることは自覚してるけど特に断る理由もないし快く承諾。ピシッと起立後、まずはゲストである私が率先して名乗った。
「ええっと、私はエミカ・キングモール。アリスバレーでは普通に冒険者をやってるよ」
「普通ねぇ」
「リーナ、そこは詮索しないって約束だ」
「でも……」
「んっ?」
あれれ、私なんかおかしなこと言った?
対面する腑に落ちない二人の複雑な表情。ひょっとして、すでに最低ランクの底辺冒険者だって見抜かれてたり?
だとしたら、たしかに『普通』というのはちょっと盛りすぎか。肩身狭く冒険者をやらせてもらっています、とでも正直に言っておけばよかったかも。
だけど、人は見栄を張って生きる愚かな生き物だ。少々のかさ増しはご勘弁を。
「それじゃ、次は私たちの番ね。私はリーナ――リーナ・リルシュアーノよ」
金髪の女の子が手をあげると、私に続いてフルネームを名乗った。
この魂の家のリーダーである彼女は私と同い年の十五歳。名家の出らしいけどいろいろあって実家から出奔。その後、冒険者ギルドでたまたま出会った現メンバーたちとパーティーを結成。紆余曲折ありながらも今に至るそうな。
「物怖じしないリーダーで僕らはいつも頼りにしているよ」
「はんっ、こいつはただ気が強いだけだろぉ~」
「あんたは黙ってなさいよ。このナマモノ」
「あ”ぁ~ん? やんのかてめぇ~?」
「いつだって受けて立ってやるわよ。覚悟があるなら表出なさい」
「コツメもリーナもケンカしちゃめー! おねえさん、チサはチサだよー!」
うん、知ってるよ。
でも自分の名前ちゃんと言えて偉いね。
「で、僕はキャスパー。チサとは血は繋がってないけど、ま……兄みたいなものかな」
席を立って駆け寄ってきたチサのおかっぱ頭をなでなでしてると、盗賊職の男の子(or女の子)が自己紹介。てか、兄ってことはこれで性別確定だね。現状一番気になってた不確定要素が解けてスッキリ。
でも、こんなきれいな顔なのに女の子じゃないんだ。なんかもったいない気がするよ。あとどうでもいいけど、どこぞの口の悪い某元学友と名前が似てるね。ほんとどうでもいいけど。
「最後に俺がコツメ様だぜ。えっと、エミリよー」
「エミカです……」
「あ、悪りぃ悪りぃ。人の名前覚えるの苦手でよー。ま、旅は道連れ世は情けってな。こんなボロ屋だが心ゆくまで寛いでいってくれや」
「なんであんたが仕切ってんのよ……。エミカ、このケダモノの言うことは一切気にしなくていいから。正直仲間というかただの居候というかウチに勝手に棲みついてるだけだから」
「リーナ、てめぇ! また俺様を野良犬扱いしやがってー!」
「何よ、ヤル気? ならさっさと表出なさいよね」
「二人とも、お客さんの前だよ」
「キャスくんのいうとおり~、ケンカはめー!」
うん。
自己紹介というか、このメンバーのやり取りで大体の関係性はわかったね。衝突することはあってもいい感じにまとまった冒険者パーティーって印象だ。とにかくみんな悪い子たちじゃなさそうでよかったよかった。ま、一匹怪獣が交じってはいるけど。
「あ、そういえば、ルシエラとその妹ちゃんはどこに?」
ほっと一安心したところだった。そこで当初あった疑問が再燃。
訊くと、リーナと一緒に顔を見合わせたあとでキャスパーがその居所を教えてくれた。
「その……ちょっと、ゴタゴタがあってね。彼女たちの父上が重傷だって話で急遽別行動になった。だから、今二人は実家のルルシュアーノ家にいるよ」
「あー? おいおい、お前ら冷てぇじゃねーか。あとは全部トリエラにブン投げてきたのか?」
「受けた依頼はトリエラのお姉さんを連れ戻すことよ。どちらにしろ私たちの仕事は終わりで、その先はルル家の問題。それに、あとはトリエラのお姉さんがなんとかするでしょ。百年に一人の神童とも呼ばれていた人なんだから」
「……」
細かい事情はわからないけど、やっぱルシエラの実家のほうでなんか問題が起こってるみたいだね。
うーん。暴力沙汰にもなってるみたいだし、気になるっちゃ気になるけど、当人がいない場所であれこれ探るのもね。どうせまた明日にでも会えるだろうし、そのときにでも直接事情を訊けばいいかな。
「トリエラのお姉さんのことはともかくとしてエミカ、あなたはこれからどうするの? 今はとてもルル家のほうで厄介になれる状況じゃないと思うけど」
「えっとぉ……あの~、大変申し上げ難いのですが、当初の予定どおりこちらでお世話になることは……?」
「私は構わないけど」
「僕も異論はないかな」
「チサもー!」
「エリカにはチサの件の礼もあるしなぁ~。泊りたきゃ好きなだけ泊っていきゃあいいぜぇー」
「わーい、みんなありがと~!」
結局、ルシエラが家のゴタゴタを解決するまではこの魂の家のパーティーハウスでご厄介になることが決まった。
一時はどうなることかと思ったけど、これで万事解決。ゆっくり観光するって目的もどうやら果たせそうで願ったり叶ったりだ。
「そうと決まれば今日のディナーは豪勢にいくわよ」
「依頼も予定より早く完遂できたしね」
「よっしゃー、なら俺が腕によりをかけた魚料理をだなぁ~」
「却下。せっかくだし今日はお肉にするわ」
「おい、魚も肉だろぉ! 魚肉って言葉を知らねーのか!」
「あんたがウチの料理当番になってから毎日毎日魚魚魚さかなさかな……正直もううんざりなのよ! 材料は私たちで確保してきてあげるからあんたは下準備だけ進めておきなさい、いいわね!?」
「ぐぬぬっ!」
「今からってなると〝ポウポウドリ〟辺りがいいかな?」
「そうね、トリエラもいないしそこらが無難かしら。地下五階層なら私たち二人でもそんな時間はかからないだろうし。うん、決まりね」
え? 今、地下って言った?
それってもしや……!
「食材って、もしかしてモンスター!?」
「ああ、そういえば他の地域だとあんま食べられていないって話よね。東の出身のエミカにはめずらしいかもだけど、ホマイゴス周辺――西の地域一帯にはモンスター食文化があるのよ」
世代を重ねた害獣ではない正真正銘のモンスターのお肉を美味しく調理するには、特殊な製法が必要であること。それを探究し、文化として成り立たせた地域があること。それらはモグラーネ村で畜産をはじめる際に聞いたことがあった。
なので私が興味を示したのはもっと根本的な部分。
それは、これから二人が食料調達に向かおうとしてる場所そのものだった。
「狩り! ってことはダンジョンに!?」
「も、もちろんそうだけど……」
「やったー! なら私も行くぅ~!!」
目を輝かせると同時、私は無邪気にはしゃぐ子供のようにリーナに同行を懇願した。
いくつかご報告です。
①PNを変更します(しました)。
②二ヵ月ほど前になりますが、アリスバレー編のエピを追加&再編集しました。
以下は追加エピソード。
・幕間 ~漆黒ノ刻~
・幕間 ~受付嬢、憂う~
・プロローグのエピローグ
・番外編:マザーズ・エンドロール(※この番外編に関しては今後削除するかもです)
③今後の更新について
しばらくまだ不安定な日々が続くかもしれませんが、勘を取り戻しつつがんばります。
④一部のキャラの名前変更について
変えるかもしれないですが、もうしばらくはこのまま、かな……。
以上です。
未だ大変な時期が続いておりますが、どうか皆様も体調にはお気をつけください。











