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幕間 ~終焉の解放者9~


 冷たい風が吹き荒む、王都北方の荒野。

 ぽつんと切り立った巨大な岩を目印に翼竜を降下させたラッダ一行は、昨夜からこの合流地点でサポート役の双子がやってくるのを待ち続けていた。


「チッ、あのちびガキ共、この俺様をいつまでこんなとこで待たせるつもりだ……」

「ゴルディーも早くくまさんを治してあげたいの……」

「ちょっとラッダ、美少年のアレクちゃんから何か進捗はないわけ?」

「先ほどの定時連絡もこのまま待機とのことだ。今は待つしかあるまい」


 そして、一晩。

 東の空が明らむ頃、巨大な岸壁の前に描かれていた黒い魔法陣が光を放ったかと思えば、中心から小さなドワーフの双子が忽然と姿を現した。


「もぉ~、二人とも遅いわよ~!」


 ロコとモコがやってくるなりマカチェリーは小言を口にし、彼女たちに詰め寄った。


「こんな荒野のド真ん中で野宿させるなんて酷いわ! アタシの自慢のプルプルツヤツヤお肌がこんなに荒れちゃったじゃない!!」

「ああ、ごめん……。その、そのなんていうか、こっちも大変だったっていうか色々あったっていうか……」


 弟のモコを人質に取られていたとは言え、クランの情報を吐いたのはかなりまずい。パープルはともかく、もしジーアに知られたら大変なことになるだろう。後ろめたい心情の中、ロコは報告を躊躇い言葉を濁した。


「……あ、でも、ちゃんと新入りのスカウトには成功したから!」

「新入りってダリアが推薦してた子?」

「うん、パメラ・ファンダインね。紆余曲折あったけど、私の巧みな話術で説得したら一転仲間にさせてくださいって頭を下げてきたわ。今アジトにいるからこれから皆にも紹介してあげる」

「あら、新人ちゃんを一人あんなところに放置してきたわけ? それならさっさと皆を連れて早く戻ってあげなさい」

「ん? マカチェリーは帰らないの?」

「もちろん帰るわよ。でも、アタシはまーちゃんと一緒に空からね」


 大切な相棒を一匹にはできない。そう言ってマカチェリーは竜の背中に乗ると、そのまま小国(シュネー)の方角へと飛び去っていった。


「拙僧らも帰還するとしよう。モコ、転送を頼む」

「んっ……」


 氷壁ダンジョン、地下333階層――氷の神殿。

 襲撃組の三人を回収すると、ロコとモコは終焉の解放者(リベレーターズ)の根城へと再び戻った。


「――あれ?」


 すぐにラッダたちに新入りを紹介しようとするも、黒い魔法陣の傍にその姿はない。周囲を見回すと、オレンジ色の髪の少女はかなり距離を置いた場所でロコたち一行を睨みつけていた。その手には天賦技能(ギフト)で作り出された大剣が握られている。

 終焉の解放者(リベレーターズ)のメンバーが状況を呑み込めず事態を静観する中、やがてパメラはおもむろに口を開いた。


「で、どいつがパープルって奴なんだ?」

「へ? ちょっ、あんたどういうつもりよ……?」


 臨戦態勢を崩すどころかこちらに大剣の切っ先を向けてくるパメラに困惑し、ロコは言葉を失う。


「どうやら聞いていた話とはだいぶ違うようだな」

「へへっ、血の気の多そうな新入りで何よりじゃねぇーか」

「ゴルディーはそんなことより、くまさんを……」


 襲撃組がそれぞれの感想を呟く中、パメラは動揺しているロコに向けてさらに言い放つ。


「オレが仲間になるわけねぇだろ。オレはお前らを潰すためにここにきたんだからな」

「私を騙して泳がせてたってわけ!? 何それ、許せない!!」

「まー、待てよ。ちびガキ姉」


 憤慨して地団駄を踏むロコの肩をそこでつかんだのはレオリドスだった。小さな双子の片割れを力尽くで背後へと下がらせると、彼は入れ替わるようにして前に出た。


「面白ぇじゃねぇーか、わざわざ単身で乗り込んできやがるとは大した根性だ。気に入ったぜ。かかってきな、俺様が相手してやる」

「ちょっ、何勝手に話進めてるのよ! これは私とモコの仕事でしょ!?」

「うるせー、邪魔すんな。俺様は昨日でけー魚を取り逃して血が滾ってんだ。発散させろ」

「こいつは私たちが連れてきたのよ! どい――」

『――ロコちゃん聞こえてる?』


 不意にそこで頭の中でアレクベルの声が響き、ロコは動きを止めた。その隙にレオリドスはパメラのほうにズカズカと歩いていく。無視するわけにもいかず、彼女はしかたなくこめかみに指を当てて応じた。


「聞こえてるけど、何? 今ちょっと取り込み中なんだけど」

『ジーアさんから伝言。ラッダさんたちの回収が終わったら、次はダリアさんのサポートをよろしくって』

「げっ、あの女の? 私、気が進まない……」

『そんなこと言わず、ものすごい重要な任務だからさ』

「……」


 顔を上げると、すでに氷の神殿のほうではレオリドスがパメラと対峙していた。お互い言葉を交わし、今にも一騎打ちがはじまりそうな緊張感が漂っている。手柄を横取りされた気分だがこうなっては手遅れだろう。もう襲撃組にこの場の処理を任せるしかなかった。


「しかたないわね……」


 特に親しいアレクベルからの頼みということもあり、ロコは片割れを連れて再度アジトを離れることになった。

 向かう先は、王国辺境北方地区。

 これからそこに潜伏しているいけ好かない新参のダリアと合流しなければならない。


「モコ、行くわよ!」


 双子が転送する間際、氷の神殿の前では獣化したレオリドスに対しパメラが間合いを詰めて接近。

 直後、轟音と共に戦端の幕が切って落とされた。


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