ディスカスの魔法講義
いつもありがとうございます。
気が付いたらお気に入り件数が2600件超えていました。
本当にありがとうございます!!
ディスカスにその話がもたらされたとき、でかいため息が出てしまったのは仕方ないと思う。
「……圧力鍋?」
「はいっ! 喫茶店でも煮込み料理が多いので、あると便利かなって」
作る手順はほとんどがセバスチャンとカナリアだ。セバスチャンはカナリアログイン前から仕込みをしているのは、ギルドメンバーなら誰しも知っていることである。
「時間短縮魔法とか、使うつもりないわけ?」
「……何ですかそれ」
「そっから!?」
……毎度のこと、と無理やり思い直し、ディスカスはタブレットの「魔法画面」を見せた。
「魔法属性はいくつある?」
「魔法、属性ですか?」
あ、やばい。いやな予感しかしない。
「火、とかですか?」
よし! それは分かっていたか。カナリアの言葉に頷いてそのまま話を続けた。
「基本属性と言われるのが、火、水、土、風、光、闇。だな。水は火に強く、土は水に強い。そういうものがあるのは知ってるだろ?」
「はい」
一つ目クリア!
「それの他に水属性の派生である氷。光属性の派生である雷。こういったものは?」
こてん、カナリアが首を傾げた。
「そういった派生魔法というものがある。それと別次元になるのが回復魔法。それから時空魔法など」
アクセサリー作成に関してはベテランの域にいて、魔法を使った攻撃スタイルのはずなのに知らないということに、驚くしかない。
「……魔法関係のチュートリアルは終わらせた?」
「基本属性と回復魔法しかなかったです」
……素人に甘くないという、設定を忘れていたディスカスである。
「……うん。とりあえず、魔法は組み合わせで色々作れるのは?」
「それは覚えてます」
「はっきり言ってしまえば、派生魔法は基本魔法の組み合わせで生まれる。それを多用していくんだ」
ディスカスは己のタブレットの「魔法画面」から「時空魔法」と「時間魔法」をタップする。
「ここを見て分かるように、時空魔法というのは時間と空間を操る。空間魔法は鞄の容量アップに使われているし、倉庫には『現状維持』もしくは『鮮度維持』といった時空魔法を使っているんだ……」
初耳、と言わんばかりの顔をされたディッチはどう説明していいか分からなくなった。
「と、とりあえずこの辺りはまた今度。
次に時間魔法についてだが、有名どころだと『ストップ』や『ヘイスト』『スロウ』がある。これは?」
「使ったことはないですけど、存在だけは」
「うん。じゃあ次。
この『ヘイスト』魔法をうまく使うとさっき言った『時間短縮魔法』になる。『ヘイスト』は時間を早める魔法だ。これをアイテム作成中にうまく使って作成時間を短縮する。きちんと使えればエンチャントもつく。これが出来るようになるとかなり楽になる」
カナリアの顔を見るに、使ったことはないとみた。
「それを使えば煮炊きは時間がかからなくなる」
「でも、圧力鍋って中を真空にして圧力をかけることでお肉が柔らかくなったり……」
リアルの調理方法をゲームに持ってくるな! そう突っ込みを入れたくなるのをディスカスは我慢した。
「圧力をかけるなら『重力魔法』だな。でも、そこまで必要ないと思うぞ?」
チャーシューだって時間をかけて煮ることで柔らかく美味しくなっている。それで十分だと思ってしまうのだが。
「ジャッジさんにも、『圧力かけるなら重力魔法』って言われて使ったんです。……そうしたらいいお鍋がぺしゃんこに」
しょんぼりとするカナリアを見て、何とも言えない気持ちになる。
誰だ。カナリアに圧力鍋というものを見せたのは。そしてそれをゲームに持ち込ませようとしたのは。
その瞬間、背筋に悪寒が走った。
どこからともなくかけられた圧力に、ディスカスは作ると約束した。
カナリアと他のメンバーのずれを書くのは楽しいです。
ゲームで圧力鍋……難しそう(他人事)
そしてリアルにて
美玖「このお肉! すっごく柔らかいです!!(牛筋を煮込んだシチューを食べながら)」
昌代「気に入ってもらえたか? 圧力鍋で煮込むとさほど時間もかからぬしの。たまにはこういった料理もよかろう」
美玖「やっぱり圧力鍋って凄いですね! そっか! これをゲームに持ち込めばたくさん作って皆さんと楽しめます!」
昌代「……ふむ。よき考えじゃな。我も使いたいものじゃ」
美玖「はいっ! どこでも美味しい料理は食べたいです」
……という、突っ込み不在のまま会話を続け、ゲームに持ち込みました。
それを後日聞いた保と隆二はその発想に呆れたそうな。




