クエスト開始の前の一騒動
いつもありがとうございます。
何事にも「予想外」という言葉があるが、「カエルム」が関わると予想外の出来事が起きたとしても、「カエルム」だからという言葉で済ませられてしまう。
それで済ませて欲しくないとディッチは思うが、何故かそれで終わってしまう。
今回の出来事もそうだ。
「マゼンタ」のメンバーが簡易倉庫に敵襲をかけてきたらしい。クィーンは当然のごとくスキルを発動させ、屈服させていた。
それを見越して第二段が攻めてきたようだが、それを押さえ込んだのは……なぜか竜神だった。
「……何が起きたんですか?」
『お主らが分からぬものを、我が分かると思っておるのか?』
電話してきたクィーンが呆れながら言う。
「竜神に代わっていただけませんかね」
これから戦いだというのに、何故ここまで疲れなくてはいけないのか。どこぞの誰かにみっちりと問いただしたい気分だ。
『なに、死に戻りが少ないほうがよかろう。それに朕はカナリア殿にセバスチャン特製ミートパイ十個で依頼されたぞ』
カナリア君! またお前か!! そしてセバス製とはいえ、ミートパイ十個で釣れていいのか!? 竜神様! 突っ込みは声に出ることはなく、事情を察したジャスティスに肩をポンと叩かれた。人竜族になれるジャスティスのことだ、知っていたに違いない。
ログアウトしたらユーリを心ゆくまで愛でてストレス発散してやる! 倉庫の危険は軽減したんだ! そう思うことでディッチは何とか吹っ切ることが出来た。
ちなみに、その原因の一端を担っているカナリアは、早速素材採取に勤しんでいた。
「……カナリア君」
「先生、どうしました?」
「『どうしました?』じゃないの。とりあえず竜神様に依頼したんだったら教えてくれると嬉しかったな。それに今からそんなに素材採取してたら倉庫が一杯になるのは時間の問題だよ?」
「いえ、これはママンさんや薬師の方に依頼されたんです。すぐに調合できるようにって。で、こっちがスカーレットさんからで……」
どうやら最後の悪あがきでアイテム精製をしているらしい。そして、素材はLUK値の高いカナリアに頼んでいるというのが状況らしいが……。
「カナリア君、これは要らんでしょう!? ラディディッシュだよ? 食材にしか使わな……」
このゲーム内どこでも採取できるラディディッシュ。栄養価も高く、安価な食材として知られている。それは薬などの精製に全く関係ないはずだ。
「ご飯用です」
当たり前のように言うカナリアに、ディッチは脱力した。
カナリア「だって、『腹が減っては戦は出来ぬ』って諺が」
ディッチ「あ~の~ね~? おそらく作ってる余裕はないよ? だからセバス君にかなりの料理を先に作ってもらったわけだし」
カナリア「え? ラディディッシュって生でも食べれま……」
ディス「……カナリア、セバス特製の飯でどれ位能力値が上がるか分かってるか?」
カナリア「あがるんですか?」
ディス「そっから!? あがるよ。かなり。それを食べた後危険な時に能力値の上がらない飯じゃ意味がない」
カナリア「そんなもんなんですか?」
ディッチ「そんなものなの! だから採取しなくて……」
カナリア「セバスチャン、これを調理に使って今食べましょう」
セバス「ミ・レディ。かしこまりました」
二人「了承しちゃうの!?」
お粗末さまでしたww




