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初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
様々な思惑

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クエストに向けて訓練開始!

いつもありがとうございます。


 いやいやいや、無理ですし! ってかあんた未だLV一桁でしょう? あんたに任せるくらいなら、他のメンバーの方がSTR値も高いから確実ですし! 

 その突っ込みは、古参メンバー全員が心の中で一斉に入れた。

「……あのですねぇ」

 どう説明していいものかと、ディッチが口を開いた。

「誰もやらぬなら、我がやってもよかろう。何か問題でも?」

「あなたの能力値が全く足りてないんですよ」

「ふむ。では能力値だけの問題とは聞こえなかったがの」

「能力値ありきですよ」

 そうクィーンに突っ込みを入れたのはアントニーである。

「左様か」

 つまらなそうにクィーンが言う。


 カナリアのことですっかり忘れていたが、クィーン(この方)もゲームに関しては常識がなかったんだということを思い出したディッチだった。

「なればどのように対処するつもりじゃ?」

「それを話し合ってるんです! このあとまた参加ギルドの代表者で話し合いがあります」

「ふむ。では我も参加するとするかの。セバスチャン」

「はい」

「話し合いに我も行くゆえ、茶と菓子の用意を」

「かしこまりました」

 他者のAI(セバスチャン)をあごで使うあたり、さすがクィーンというべきか。

 そして、それを一切気にしないセバスチャンが凄いと思ってしまう。こういうときは一度主に伺いを立てるのが他のAIだ。


「……つか、一緒に来るのは止めてください」

 ジャスティスが止めに入った。

「何故じゃ?」

「まとまる話もまとまらなくなるからだろ。少しは自分の影響力を考えろ、陰険策士様」

 誰も言わないことをあっさりとジャッジが言う。

 さすがジャッジ。ディッチは心の中だけで拍手した。


 結局エリが「大砲をぶっ放してみたい」と言い、承認されることになった。



 そして、訓練の日々が始まる。


 ディッチの倉庫にはだいぶ昔に作った「訓練用大砲」があり、それを出してきた。

 ただSTR値が低めのプレイヤーでも使える仕様になっており、嬉々としてカナリアとクィーンが混ざっていた。

「ジャッジさんっ! 凄いです!!」

 ジャッジ用の大砲は照準合わせが鬼仕様となっており、誰も使えない。それをあっさりと使うジャッジを見て、カナリアがはしゃいでいた。

「……リア充爆発しろ」

 ぼそりとユウが呟く。

 ユウやフェンフェン、カーティスなども念のため練習に加わっている。

「あそこは気にするな。んで、俺が動くから俺に向かって発砲。ペイント弾だし気にしないでやってくれ」

「りょーかい」

 こういった大きいクエストの際、恒例行事となっている訓練だ。

 ジャスティスも、大砲を避けるためおのずと能力値が上がり、ありがたいかぎりでもある。

「……普通、こんなことしませんよね」

「成功率上げるための苦肉の策。ビッグオーガから町ひとつ守る時に考えた」

「あの伝説のクエストですか」

 ラウの苦言はもっともで、ジャスティスたちの考えが異端なのだ。


 伝説と言われている理由はその後どのギルドも、レイドチームもクリアしていないことに由来する。

 あのクエストがジャッジの命中率の高さを物語った一戦でもあった。


 そして、そのクエストを受注するまでジャスティスたちはこの訓練を嫌になるほどやったのだ。

 だからこそ、ジャスティスがタンクとしてトップクラスになってしまったというオチがつくが。

「……まぁ、今回はこんなもんだな。あとはアイテム採取と装備つくりだな」

「あんたらだけでマキシムレイドクリア出来るんじゃないですか?」

 チムが嫌味をこめて言って来た。

「いや、さすがに無理。一回フルレイドを、カナリアたちが参加する前やったんだが、全滅だった」

「あんたら何やってんですか!!」

 マキシムをやってみろといった人間の言葉には聞こえない。

「暇つぶし。上手くいけば素材が手に入る。以上」

「……『以上』で済まされるレベルじゃない」

「そのあと、そういう無謀なことは止めた」

「そうなる前に気づけよ」

 そんなもっともなことを言うチムに袈裟(わいろ)を手渡した。


常識人に見えるジャスティスたちですが、実は非常識なこともやっていたという……。


袈裟をもらったチムは嬉しそうにゲーム内瞑想の時に着るようになります。

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