翼竜を守るキングゴーレム

　レイド「翼竜を守るキングゴーレム」。

　ライトレイドの中でも高難易度を誇り、クリアすることが高LVプレイヤー、もしくはそれに準ずるレイドチームの登竜門とまで言われているレイドである。

　ライトレイドでできる最大編成を利用しても、クリア出来ないチームもいるくらいだ。それに反してレイドに挑むプレイヤーが多いのは報酬の高さだけではない。解体し得られるアイテム、採取・採掘する場所の多さと質の高いアイテム。全てがプレイヤー、特に職人を魅了する。

　それゆえ、こう呼ばれている「職人殺しのレイド」と。

　翼竜のLVは変動性だが、五百から千を行き来する。そしてゴーレムキング七体はその翼竜のLVから五割から四割ほど引いたLVになる。

　しかも、どのLVになるかは受注し、対峙してみないと分からないのだ。

　ゴーレムキングを一体倒すごとに翼竜の防御率十％ずつがあがる代わりに、レアな採取・採掘場所が二つないし五つ増え、解体すればヒヒロヒカイネ、アダマンタイト、オリハルコンが手に入る可能性がある。そして、十体のゴーレムキングを倒せば、それだけで金塊とプラチナ塊、銀塊が百キロずつ報酬としてもらえる。

　ゴーレムキングの弱点はそれぞれが違い、倒すごとにそれによる耐性が翼竜につくというおまけつきだ。

「……倒せる気がしないんですけど……」

　説明を聞いたイッセンが引きつった笑いで言う。

「これを倒せれば、かなり素材が倉庫にストックされる。こちらとしても色々実験したいところだ」

「……素材」

　ディッチの言葉に、軽くレイド戦の恐ろしさにトリップしていたカナリアが変に反応していた。

「兄貴は何実験する予定？」

「航空工学に関するものかな？　中々上手く進まない」

「……実験」

　素材と実験のみをぶつぶつうわごとのように呟くカナリアは、はっきり言って不気味である。

「美玖ちゃん」

　リリアーヌがカナリアを呼んだ瞬間、イッセンがカナリアの頭をぺちっと叩いた。

「とりあえず素材から離れようか」

「ふぇ？」

「美玖ちゃん。いい？　回復役が回復しないと全滅の危機だからね。前回は他の人がやってくれたけど、今回は駄目」

　リリアーヌの厳しい言葉に、既に涙目だ。

「そ……そんな目で見ても駄目！　ギリギリどころかパーティとしてはかなり足りないの！　誰か抜けた時点でジ・エンド！　そしたら採取した素材も無駄になるの！」

「……うん。頑張る」

　心なしか、カナリアが落ち込んでいる。

「間違いなく落ち込んでるだろ」

　ジャスティスが呆れて言った。